イナズマイレブン アレスの天秤 IF「もしも円堂が故障して、雷門に残っていたら」   作:レイメイミナ

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ユリカが書きたすぎて大変なことになってる


第三話「ペンギン・イナズマ・トルネード!」①

「3-0……」

「クソッ!」

 

 絶望的な状況が依然として続く伊那国雷門。自分達のプレーはまるで通じず、星章学園の完璧な統率の前に弄ばれるばかり。明日人はこの状況を打開する策を、サッカー馬鹿なりに考えていた。

 

「灰崎とのワンツーマンなら俺が勝った……あのときは夢中だったけど、けれど……きっと穴はある。完璧じゃない!」

 

 何かを捉えたわけではないが、捉えられるものであると認識を改めた明日人は、ポジションを奥入と入れ替えた。

 

「代わってあげたんですから、僕の言った通り頼みますよ」

「わかってるって。ちゃんと見てろよ!」

 

 普段よりも前に出た位置。指を鉄砲に見立て、相手ゴールまでのルートに狙いを定めた明日人は、キックオフの瞬間、走り出した。

 

「さぁ、再びキックオフです! 雷門は絶体絶命のピンチ。ここから逆転はあるのでしょうか!」

「散開しろ! 奴らのコースを潰せ!」

「間を見ろ! 相手の死角を探すんだ!」

 

 指示を出す鬼道と円堂。各チーム、その通りに動いていく中、三人だけ全く異なる動きをしていた。

 

「また俺か!」

「またお前だ!」

 

 灰崎が小僧丸を徹底的にマークする。これにより小僧丸はシュートはおろか、パスすらも出すことはできない。そして小僧丸には明日人ほどのドリブル能力はなかった。

 

「ボールはもらっ──」

 

 ボールを奪い取るため灰崎が伸ばした足元に、そのボールは無かった。

 

 既に明日人が奪い取っていたからだ。

 

「こいつ、仲間のボールを……」

「負けず嫌いだろ、お前!」

「テメェッ!!」

 

 挑発に乗り、マーク対象をすぐに明日人へと切り替えた灰崎。しかし明日人は既にボールを次のプレイヤーへと託していた。

 

「ばっちゃんの教え、辛いときこそ遠くを見ろ! このボールを必ず繋いでみせる!」

 

 パスを受けた氷浦は勢いを乗せるため、ダイレクトパスで空中にボールを飛ばした。氷浦の強みはばっちゃんの教えから来る多角的な視点、視野の広さだ。

 

「ドンピシャだぜ氷浦!」

「天野、止めろ!」

「当然っ!」

 

 政道は知らなかった、彼の力を。何故なら彼は雷門でも伊那国でもない…………木戸川清修の二軍ストライカーだったのだから。

 

「──『ファイアトルネード』!」

「何っ!?」

「ファイアトルネードだと!?」

 

 炎の渦を描き、情熱を炎に変えて放つ必殺技、ファイアトルネード。小僧丸が放つ渾身の必殺技は天野に必殺技を出す余裕すら与えず、ゴールネット毎叩き付けた。

 

「ゴォォォールッッ!! なんと、なんと雷門! あのファイアトルネードでついに! シュートを決めたァァッ!!」

「馬鹿な、あれは豪炎寺の……」

「……チッ、やっぱ只者じゃなかったみたいだな」

 

 ついに星章学園のゴールを破った伊那国雷門。

 

「すげぇよ小僧丸! ついに一点取っちまうなんて!」

「まぁな。明日人、お前が俺からボールを奪った。お前らしくないプレーだがよくやった」

「奥入の作戦だよ。タイミングがわからなかったけど、円堂さんの指示聞いてビビッと来たんだ!」

「彼、プライドの塊のような人間ですから。小僧丸君に夢中になってるうちに奪い取れば狙いは明日人君に変わる。そうなれば小僧丸君はフリーになる……どうですか? 僕を天才軍師と崇めても構いませんよ」

「助かったが二度は通じねぇぞ。灰崎だって馬鹿じゃねぇ」

「わかってますよ。次の策は既に練っています」

「いや、既にあってくれよ……」

 

 奥入の言葉に万作が苦言を零した。しかし苦し紛れの一点であることは確かだ。二度も同じ手で取れるはずがない。

 

「さぁ、星章学園、この試合初めてのキックオフです! 依然リードしている中、どんなプレーをするのか!」

「稲森明日人……侮れないな。プレーのレベルを上げるぞ」

 

 鬼道がそう不敵な笑みを浮かべると、灰崎に対してパスを送った。今度の灰崎は他者のマークに付くことはせず、慎ましくボールキープしている。

 

「僕の言った通りですね。悪い意味で」

「……あいつら、なんか動き変じゃない?」

 

 星章学園は前後に二名、中央に三名の特殊なフォーメーションで前進する。そしてまるで星座を描くようにパスを回してボールをキープし続けていく。

 

「必殺タクティクス『クライシスゾーン』!」

 

 伊那国雷門はこの高速ゾーンディフェンスを続ける星章学園の前に為す術がない。何が恐ろしいかと言えば、ゾーンディフェンスを続けながら前進しているところだ。それはつまり……。

 

「逃げ場が無いよ!」

「ついでに打開策も無い、か」

「突っ込むしかねぇ……明日人、時間を稼ぐぞ! 奥入はその隙にコレをどうにかしろ!」

「了解です、万作先輩!」

「無茶言わないでくださいよ!」

 

 明日人と奥入は真逆の反応を示した。しかしそれ以外に打開する術など無く、奥入は必死にその思考を巡らせた。

 

「無駄だ!」

「──『オーバーヘッドペンギン』!」

 

 再び灰崎の必殺技が放たれる。先程はあの『ゴッドハンド』でも止めることができなかったこの強力なシュートを見た円堂は、何かを閃いた。

 

「……はっ、そうか! 小僧丸、触るだけでいい! ボールに突っ込め!」

「わかった!」

 

 小僧丸は円堂の指示の意味がわからなかったが、雷門を無名から一気に優勝校へと押し上げたあの円堂守が言うならと、ボールに脚を伸ばした。

 

「思い出すぜ、DF時代のことを!」

 

 小僧丸の脚は決して『オーバーヘッドペンギン』を止めることはできなかったが、触れることはできた。普通なら弾き飛ばされるのがオチのはずだが、なんとボールは僅かに軌道を上に逸らした。

 

「何っ!?」

「気付いたか……」

 

 ボールはゴールの真上のフレームに大きな音を立てて激突し、その勢いが完全に殺される。のりかはその様子を見てから、はっとしてボールをキャッチした。

 

「止ま、った……?」

「え、円堂さん! どういうことですか!?」

 

 奥入の質問に円堂が頷き、奥入ではなく鬼道の方に顔が向かった。

 

「鬼道! あの必殺技、未完成なんだろ! 完璧なコースからじゃないと絶対に決まらないブレの大きい技だ!」

「フッ、流石だな。その通りだ円堂……あれは、完璧に決まるコースに打ち込む技術とフィジカルが無ければ成立しない、現状灰崎にしか打てない技だ。それを二度見ただけで見破るとは」

「俺は『デスゾーン』も『皇帝ペンギン2号』も止めたんだ! お前が考えた必殺技ならひょっとしてと思ったけど、それであの威力か!」

 

 再び円堂と鬼道が二人だけで会話を始める。二人のレジェンドが会話している光景に目を輝かせる明日人と、『ここはお前らの同窓会じゃねぇんだよ』と言いたげに睨み付ける灰崎。

 

 残り時間は22分。伊那国雷門の反撃が、始まる。

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