イナズマイレブン アレスの天秤 IF「もしも円堂が故障して、雷門に残っていたら」   作:レイメイミナ

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第三話「ペンギン・イナズマ・トルネード!」②

 ようやく掴んだチャンスを逃すまいと、のりかが天高くボールを蹴り上げた。

 

「行くぞみんな! 絶対に逆転するんだ!」

『はい!!』

 

 伊那国雷門の面々が結束を固める中、星章学園には徐々に影が落ちていた。

 

「あいつら、調子付きやがって……!」

「ここからは気を抜けないな。みんな! 個人のパラメータは低い! 実力で上からねじ伏せるんだ!」

 

 日和が受け取ったボールが鬼道により容易く奪取される。

 

 各選手が分散し、再びタクティクス『クライシスゾーン』を発動。伊那国雷門は高速ゾーンディフェンスに翻弄され、自由に動くことができない。

 

「クソ、どうすれば……!」

 

 奥入は相手の動きを余すことなく観察する。ポジション、ボールの軌道、目線に至るまで、その全てに目を配った。

 

「……ッ、こうなったら賭けだ! ディフェンス陣、前に!」

「え?」

「何言ってんだ!」

「通じるかわかりませんが、この際やるしかありません! 明日人君は中央に行ってください!」

「わかった!」

 

 DF四人が一斉に駆け上がる。ゾーンディフェンスを抜き去るにはエリア外を突っ切るしかないが、星章学園ほどの実力ならそんなことは許してくれないだろう。故に奥入は、敢えてエリア内に正面から踏み込む選択を取った。

 

「無駄だ! 『クライシスゾーン』からは抜け出せない!」

「そんなの、やってみなきゃわからないだろ!」

 

 これでキーパーののりかと前に出ている剛陣、小僧丸を除く八名が全員『クライシスゾーン』の範囲に入ったことになる。

 

「綱渡りですが、エリア内でボールが動くということなら!」

「そのパスコースに割り込む、ってことでゴスね!」

 

 奥入はそのつもりだった。しかし、星章学園に限って通じるはずがないことも承知済みだ。奥入の狙いは最初から全て…………稲森明日人のディフェンスに全ベットすることである。

 

(超がつくほどのサッカーバカ、あんたならどんなところにあっても、どれだけ高速に動いてても、取ってみせるだろ!)

 

「うおおおおッ!!」

「邪魔だ!」

「グッ……!」

 

 明日人はしつこく食い下がるが、容易く弾かれてしまう。それを見て加勢した万作、岩戸もまた星章学園の猛攻の前に倒れた。

 

「ゴーレム、万作先輩!」

「構うな! やれ、明日人!」

「絶対に勝つでゴス!」

「っ……あぁ!」

 

 明日人はひたすらに走り、ボールを追いかける。

 

「無駄だっつってんだろ!! この馬鹿が!」

「馬鹿でいい! 俺達は、サッカーがしたいんだッ!!」

「このッ……! 後悔しやがれェ!!」

 

 灰崎がボールを高く蹴り上げ、口笛を吹く体勢に入る。ディフェンスを前にあげたせいで、次に『オーバーヘッドペンギン』の軌道を逸らせるプレイヤーはいない。のりかはもうスタミナ切れで、先程のように『ゴッドハンド』を放つほどの余裕はないだろう。

 

 明日人は、それらを考える間もなく、ただ数刻ボールを見つめてはっとした。

 

「……今だ」

 

 そうつぶやくと、明日人の走りは突如稲妻を帯びるほど高速になり、さらにはその勢いでジャンプ。そのまま空中のボールを脚でキャッチして、『クライシスゾーン』のエリアをイナズママークを描きながら離脱した。

 

「え──」

「はっ……?」

 

 その場にいる誰もが困惑の表情を浮かべた。それは実際にボールを奪い取った明日人も、実況を務めていた角馬もまた同じだった。

 

「……ハッ! こ、これは……雷門中、稲森明日人が! 星章学園の『クライシスゾーン』を、突破したァァァ!!」

「馬鹿な……。いや、なるほど、そうか……!」

 

 鬼道は自身のタクティクスが敗れた事実を受け止め、改めて伊那国雷門が秘める潜在能力の高さを思い知った。

 

「明日人ォーっ! よくやった! そのまま突っ走れ!」

「……、はい!」

 

 明日人が走る。それは今までの泥臭く食い下がる重苦しいものではなく、まるで空を駆けるイナズマのように軽やかで、熱く、誰も追い付けないほどの速さだった。

 

「シュートは撃たせない!」

 

 残っていたDF、水神矢が剛陣をブロック。同様に小僧丸にもマークが付くが、小僧丸は自力で抜き去って明日人のパスを受けた。

 

「行け、小僧丸!」

「やるぜ、『ファイアトルネード』!!」

 

 炎の螺旋を描いた一撃が、情熱と共に放たれる。星章キーパー・天野は先程と違い、一切の油断をしていなかった。

 

「今度は止める、『フルパワーシールド』!」

 

 打ち付けた地面から超強力なエネルギー波が発生し、バリアとなってファイアトルネードを阻む。

 

「これは、またもや帝国学園の必殺技だ! ファイアトルネードは敗れてしまうのか!?」

「残念だったな! 奮闘したがこの試合、俺達が勝たせてもらう!」

「させるかぁぁッ!!」

「何っ!?」

 

 ボールとバリアの拮抗の間、なんと剛陣がそこに飛び込んできた。

 

「俺だって、ストライカーだァーッ!!」

 

 剛陣が拮抗しているボールにさらにシュートを加え、押し込むようにバリアを破壊する。

 

 2-3。ついに伊那国雷門が、星章学園の防御を突破した瞬間である。

 

「よっしゃぁぁぁっ!!」

「まだ勝ってませんよ! 喜ぶのはまだ早いです!」

「でも……あと一点で同点だ。俺達の力は、通用する!」

 

 こうなった彼らはもう、止まらない。

 

 星章学園のキックオフ。しかし、明日人のイナズマのような走りを警戒してか攻め入ることができない。

 

「鬼道さん、このまま進んでも取られますよ。どうしますか」

「だが、このままボールをキープしても奴は突っ込んでくるだろう。ならば……"アレ"をやる」

「……了解です」

 

 星章学園もここまで来て成す術がないわけがない。灰崎を含めた『デスゾーン』を構成するメンバーが前に上がり、ディフェンス陣がタクティクス『クライシスゾーン』により伊那国雷門の攻撃を完璧に封殺した。

 

「残り時間は五分! 星章学園、このまま一点差を死守するつもりだ! 雷門中は攻めることができるか⁉」

「無駄だ! 皇帝ペンギン──!」

 

 鬼道が口笛でペンギンを召喚し、二人でブーストをかける必殺技『皇帝ペンギン2号』が迫りくる。しかし、それはゴール前ではなく……。

 

「自陣から⁉」

「……まさか!」

 

 円堂が見たのは、ブーストをかける要員である佐曽塚、早乙女の二人に、本来なら真っ先に駆け出しているはずの灰崎が加わっていることだった。四人による皇帝ペンギン……その先にあるものに円堂は気付き、冷や汗を流した。

 

「気をつけろ! 鬼道の新技だ!」

 

 円堂の警告を聞き駆け出す伊那国雷門。星章学園はロングレンジからの新必殺技を以て再び点差を広げるつもりだったのだ。

 

「させないでゴス!」

 

 そこに割り込んできたのがチームの壁、岩戸である。岩戸が灰崎のルートを完全に潰したことで、四人による皇帝ペンギンは阻止された。

 

「テメッ──」

「ストライカーをフリーにするほど甘くないのでね! ナイスです岩戸君!」

 

 徹底マークの指示を出したのは奥入だった。本来は『オーバーヘッドペンギン』対策のルート潰しだったが、思わぬところで効いたようだ。

 

「灰崎が!?」

「仕方ないね! ──『皇帝ペンギン2号』!」

 

 先程と同様に、三人による『皇帝ペンギン2号』が炸裂。今の伊那国雷門にとっては十分厄介な必殺技だった。かつて円堂守の『ゴッドハンド』を打ち破り、雷門中を苦しめた必殺技。直線上ののりかにはハッキリ言って、止めることはできなかった。前半戦で明日人がやったような捨て身の顔面ブロックも二度は通用しないだろう。

 

「気合いで、止める! ──『ゴッドハンド』!」

 

 さっきの感覚をモノにしたのりかは、再び紺碧の神の右手を召喚した。しかし受け止めるには幾分かパワー不足。

 

「く、ググッ……!」

 

 のりかは左手も前に出し、両手でシュートを止めようとする。それでも足りない、このままでは押し負けてしまう。そんなとき……、

 

「のりか!」

「お前にばっかいい格好させっかよ!」

「明日人、万作先輩!」

 

 明日人と万作が駆け寄り、のりかの背中を押さえる。のりかに加え、明日人、万作の力が合わさった『トリプルディフェンス』。

 

「うおおお──ッ!!」

 

 強力なチームワークが生み出した力が、ついに『皇帝ペンギン2号』を止めてみせた。

 

「と、止めたァァァッッ!! 雷門中、海原のりかがついに! 星章学園の必殺シュートを食い止めたァァァッ!」

「なにっ!?」

「すげぇ、最っ高だぜ! お前らー!」

 

「後は任せたよ、明日人! みんな!」

「あぁ、任せろ!」

 

 のりかが飛ばしたボールに明日人が食い付き、そのままシュートを放った二人を抜いて走り去る。そこに立ち塞がるのは、何度も食い止められ怒り有頂天と化していた灰崎だった。

 

「調子に乗るなよ、雑魚共が!」

「ッ──!」

 

 だが、再び明日人が"イナズマを描くダッシュ"で灰崎を突破した

 

「クソッ、見えねぇ……!」

「もっと楽しくやれよ! サッカーは、みんなで楽しむもんだろ?」

「ッ……! キャプテン! ゴーグルマント! 通したら承知しねぇぞ!!」

 

 灰崎が水神矢と鬼道にそう吐き捨てると、二人は明日人を止めるべく走り出す。

 

「止めてみせる、『ゾーンオブペンタグラム』!」

 

 水神矢の必殺技を眼前にして、明日人はボールを引っ込めて背中に回した。

 

「なっ、バックパス!?」

「頼んだぞ、氷浦!」

「ったく、人使いの荒いやつだよホント!」

 

 明日人がボールを送った先にいたのは氷浦、そして氷浦が流れるように送ったパスの先にいたのは……小僧丸だった。

 

「来い──いや、前の10番か……!?」

「余所見、すんなよ! 『ファイアトルネード』!」

「しまっ──」

 

 天野は先程のゴールからどうしても剛陣への意識が抜けることがなかった。そこに漬け込んだ小僧丸が放つ『ファイアトルネード』が、ゴールネットに炸裂。

 

「ゴォォォォールッッ!!! 雷門中、ついに3-3! 星章学園と並びましたァーッ!!」

 

 角馬のその実況の直後に、試合終了のホイッスルが鳴り響いた。3-3。それが計一時間もの間、星章学園と戦い続けた伊那国雷門の最終成績だった。

 

「しかしここで試合終了ーッ! 雷門中、あと一歩逆転に届きませんでした! ここは延長戦か、それともPK対決か!?」

「──引き分けだ」

「そうだな。うちはもうボロボロだ」

 

 鬼道と円堂の合意の元、この練習試合は引き分けとなった。

 

「ハァーっ、ハァーっ……!」

「……オイ」

 

 疲労と高揚感で激しく息を吐く明日人の前に、灰崎が現れた。

 

「お前、名前は?」

「……俺? 明日人、稲森明日人だ」

「そうか、俺は灰崎凌兵。フットボールフロンティアに来い。改めてぶっ潰してやる」

 

 灰崎はそれだけ言って後にした。明日人は、あれが彼なりの敬意の払い方なのだと理解した。強者と正面から戦い、打ち倒すと宣言することが。

 

 こうして、星章学園との激戦は終結を迎えた。

 




今日の格言!
「馬鹿でいい! 俺達は、サッカーがしたいんだ!」
以上!

格言考えるの大変すぎる
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