イナズマイレブン アレスの天秤 IF「もしも円堂が故障して、雷門に残っていたら」   作:レイメイミナ

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第四話「謎のスポンサー、趙金雲!」①

 伊那国雷門と星章学園の死闘、その一部始終をひとつのカメラが捉えていた。そして、その映像を見る人影が三人。

 

「星章学園相手にここまでとは……思ったより厄介な相手が現れたぞ、野坂」

「何の問題もありません。でしょう、野坂悠馬君? 君のスペックと『AR2000』があれば、あの程度造作もない」

 

 人影のうち二人がもうひとり……『野坂悠馬」に語り掛ける。ひとつは警告、もうひとつは杞憂であると、野坂は言葉そのままに、ただそう受け取った。

 

「……『オメガ』の完成を急ぎます。彼らにはあれを使わなくてはならない」

「そう考えますか。やはり稲森明日人が気がかりかな?」

「彼の妹は『アレスクラスタ』の中でも特に優秀でした。彼も相応の能力があると見るべきでしょう」

「……西蔭、御影専農の小間に雷門中の監視を依頼してくれ。今後、雷門のデータを継続的に取りたい」

「了解した。構いませんね、御堂院CEO」

「ええ、野坂君の好きにしてもらって構いません。それが『アレスの天秤』の実用性を証明してくれますから」

 

 手に汗握る戦いの中、暗躍はすでに、進んでいた。

 

 

*

 

 

 一方そのころ。

 

「みんな、おはよう!!!」

 

 円堂の元気な声が部室に響く。しかし、それに見合う返事は返ってこなかった。

 

「おはようございます、円堂さん……」

「ん、みんなどうした? もっと元気出せよ。あの星章学園と引き分けに持ち込めたんだからさ!」

「だからですよ……」

「あんなの初めてで、みんな燃え尽きているんです……」

 

 奥入と道成が簡潔に説明をしてくれた。昨日の練習試合で全てを出し尽くした伊那国雷門の面々は、疲労により授業すらもままならない状態となっていた。

 

「そうか、仕方ないな。……そういや、明日人は?」

「あいつは例外」

「明日人なら「あの技を完璧にマスターするんだ!」って叫んでグラウンドに行ったぜ」

「たくましいな」

「ね、円堂くんそっくり」

 

 昨日見せた明日人の技、イナズマを描く高速ダッシュのことだ。円堂はそれを聞いてあることを思い出した。

 

「あ、そうだ! 明日人のあの技なんだけど、このノートに載ってる必殺技そっくりだったんだよ!」

 

 そう言って取り出したのは、何年物かもわからないほどに朽ちてボロボロになったノート。

 

「なんですか、それ?」

「俺のじいちゃんのノートだ。すげぇ必殺技がいっぱい載ってて、その中に明日人の必殺技もあったんだよ! ほらここ!」

 

 円堂が指を指したところは、伊那国雷門の面々からしてみれば、頑張って目を細めて見れば文字に見えなくもない……ような、はっきり言うと模様にしか見えない何かだった。

 

「……なんて書いてあるんです?」

「えーっと、技名は『イナビカリダッシュ』。ものすごい速さでボールを操る!」

「確かに明日人のあの技に当てはまるな」

「それでコツが……こう、思いっきりガガガ―、シュバババッ、ドカーン! だ!」

『…………』

 

 予想だにしない内容にその場にいる全員が硬直した。

 

「……うん、『意味わかんない』ってハッキリ言っていいんだぞ?」

「円堂さんに気を遣われた!」

 

 日和が微かな悔しさとともにツッコんだ。

 

「まぁ、明日人くんならわかるんじゃないですか? 彼、直感で動くタイプですし」

「それなら伝えてくるよ。まだ練習してるんだろ?」

 

 円堂が「行ってくる!」と言って部室を出ると、部室前に一人の少女が立っていた。薄橙の髪を長く伸ばした彼女の姿は、かつてこの雷門中の生徒会長で、今は海外を飛び回っているあの少女を連想させる。

 

「……ん?」

「サッカー部の方ですね、生徒会からお話があります」

 

 

*

 

 

「ですから! 稲森くんのあのビリビリと来る走りを見た瞬間、私の中にも電流が走ったんです! これが、これこそが雷門中サッカー部復活の瞬間なんだと!」

「大げさだって……マネージャーになってくれるのは嬉しいですけど」

「いいえ、これもイナズマイレブンのファンとして当然のことです! 伊那国中のみなさんの活躍も含めた伝説を、私のこの手と口で、語り継いでいかなくては!」

 

 さらに一方そのころ、グラウンドを走り回ったり、陸上部に押しかけたりしていた明日人は、現在とある三年の女子生徒、『大谷つくし』に捕まっていた。どうやらマネージャーになりたいようだ。

 

「それだったら、なんで去年マネージャーにならなかったんですか? 三人いたから?」

「それもあるんですけど、そのぉ……なんと言いますか、乙女のトップシークレットと言いますか……」

 

 はっきりしないな、と明日人は心の中で愚痴を漏らした。

 

「明日人ー!」

 

 とりあえず部室に案内しようと思ったところで、遠くからお呼びがかかった。

 

「あ、氷浦」

「生徒会が来てる! 全員招集だってよ!」

「生徒会⁉」

 

 昨日、練習試合で引き分けた件だろうかと明日人は真っ先に考えた。もしかしたら「一勝できなかったのでこの話はなかったことに」と言われるかもしれないと。

 

「ごめん、先輩! 急な用事あるから!」

「作戦会議ですか⁉ ぜひ私も一緒に――」

「ほんとに急いでるから! この話はまた今度ー!」

 

 強引につくしを振り切って、明日人は氷浦とともに部活に向かった。

 

 

 

 そうして部室にたどり着くと、円堂も含めサッカー部の面々が神妙な面持ちでひとりの少女を囲んでいた。

 

「ゴーレム、あの人だれ?」

「生徒会長の『御門杏奈』さんでゴス」

「へぇ、あの人が……」

「転校するとき会っただろ……」

 

 明日人、氷浦、岩戸の三人が小声で話していると、杏奈は「コホン」と咳き込んで「静かにしろ」と言葉にせずに伝えた。

 

「改めまして私が、生徒会長の御門杏奈と申します。今回は理事長に代わり昨日の練習試合の話をさせていただきます」

「その、やっぱり廃部──」

「今は私が話しています」

「あ、すみません……」

 

 明日人が言いかけたのを杏奈がバッサリと切り捨てる。高圧的な態度を前により一層の緊張が走った。

 

「まずは条件のおさらいから。伊那国中サッカー部の皆様を雷門中へ招き、練習試合にて一勝を治めること。そうすれば雷門中のスポンサーとしてサッカー協会側でスポンサーを斡旋する。よろしいでしょうか」

「は、はい」

 

 道成が頷く。

 

「それで結果ですが、星章学園との試合で3-3の引き分け。一勝することはかないませんでした。そのため、条件は不成立」

「……」

「伊那国のみんなは全力を尽くした。それに、負けたわけじゃない」

「円堂さん……」

 

 円堂が沈黙を破って口を開いた。元々は無関係であった自分達を庇ってくれることに明日人達の胸が熱くなる。

 

「そ、そうです! みんなこんなヘトヘトになるまで頑張りました!」

「俺達の苦労も知らないのに横暴だ!」

「どうか、もう一度私たちにチャンスを!」

 

 円堂の言葉を皮切りに勢い付く伊那国雷門のメンバー。杏奈はその様子に眉ひとつ動かさず、ほっとため息をついた。

 

「はぁ……、本当に話を聞かない人達ね」

『え?』

「一勝はできなかったものの、対戦相手となる星章学園の実績と試合内容から、敗北と同義と結論付けるのは不適切と判断されました。そのため、伊那国中サッカー部存続の条件を『フットボールフロンティア予選通過』とし、フットボールフロンティア参加資格としてのスポンサーを、前払いという形で紹介することになりました」

「つ、つまり?」

「……スポンサーを紹介するので、代わりにフットボールフロンティアで予選を勝ち抜いてください……ということです」

「っ……! じゃあ、俺達……!」

「あぁ、まだサッカーができるんだ!」

「よっしゃあっ!」

 

 まさかの結果に場が一斉に沸き立った。その様子を見て、杏奈は顔をしかめる。

 

「勘違いなさらないように。期限が先延ばしになっただけで、予選敗退という結果なら予定通り故郷に帰っていただきます」

「でもでも、勝てばサッカーをやれるだけじゃなく、本戦で戦えるってことだよな!? ……あ、ですよね!?」

「……その解釈でよろしいです」

 

 再び歓声が上がる。円堂も一緒になって「今日はお祝いだ!」と喜んでいる。

 

「最後にひとつだけ忠告を」

「おう、なんだ?」

「あなた方はあくまでも伊那国中サッカー部であり、特例として転入を認めただけで本校の生徒ではありません。私からしてみれば、雷門という虎の威を借る狐……その意識を忘れないように」

「…………」

「それでは、失礼します」

 

 立ち去る杏奈の顔は、明確な敵意に満ちていた。

 




御門杏奈ちゃんのキャラが思い出せなくて多分まったくの別物になると思います。1話でも言っておきましたがご了承ください
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