ハンター試験に応募して、乗り込んだ船は波で揺れており、俺を含めたほんの一部のハンター試験受験希望者だけしか平気そうにしている奴は居ない。
ほとんどが全滅状態であるが、寝ている金髪とエロ本読んでるグラサンに、船酔いしている連中に水を渡したり酔い止めの薬効がある草を渡している黒髪少年は元気そうだ。
俺は胃酸混じりの吐瀉物の臭いが好きじゃないんで、船酔いしている連中が居る船室から出ると、外の風を浴びておく。
塩気の多い生温い風を浴びながら、嵐の匂いが近付いてくることを感じ取っていた俺は「でかい嵐が来るな」と呟いたが、それが同じく船室から出ていた元気そうな黒髪少年には聞こえていたようで「お兄さんもそう思うんだね」と話しかけてきた。
「俺はメイト・カロ、メイトでいい。きみの名前は?」
「オレ、ゴン。よろしくメイト」
「ゴンもハンター試験を受けるのか」
「うん、ハンターをやってる親父を探すためにハンターになるんだ」
「俺は美食ハンター志望だが、プロのハンターにならないと採取できない食材とかが目当てだったりするな」
そんな会話をゴンとしていると「小僧共、嵐の規模と到来時間を予想出来るか?」と俺達に聞いてきた船の船長。
「波の高さはさっきの倍くらいかな。雨と、特に風も強くなると思うよ。誰か飛ばされないように気を付けた方がいいね」
嵐の規模を答えたゴン。
「今の船の速度なら3時間位で嵐に衝突すると思うぞ。船室でグロッキーになってる連中じゃ耐えられないだろうし、早めに伝えといた方がいいんじゃないか船長さん」
船が嵐に衝突する時間を答えるついでに提案もしてみる俺。
その後、さっきの倍は激しい嵐が来ると知って、船酔いしていた連中は救命ボートで逃げ去っていき、残ったのは俺とゴンを含めた4名だけとなった。
船長から名乗るように言われて名前が判明したが、寝ていた金髪はクラピカ、エロ本読んでたグラサンはレオリオという名前だったらしい。
ハンター資格試験の受験者をふるいにかけることが船長の役目であるようで、それぞれの志望動機を聞いていた船長だったが、志望動機を話していたクラピカとレオリオがいがみ合い始め、怒って船室を出ていったクラピカとレオリオは決闘しようとしているみたいだ。
野蛮人の聖地の天空闘技場の武闘家達よりも沸点が低いクラピカとレオリオは、カルシウムが足りていないような気がするな。
嵐の最中に決闘を始めようとしたクラピカとレオリオだったが、船のマストの一部が折れて落ち、暴風に飛ばされて、カッツォとワッカメという2名の船員に当たり、それぞれ反対の方向に飛ばされたカッツォとワッカメが海に落ちそうになっていた。
カッツォの方はゴンが向かったんで、とりあえずワッカメの方を俺が助けておくと、海に落ちかけたカッツォに飛び付いたゴンをクラピカとレオリオが助けている姿が見える。
誰かを助ける為に動けるクラピカとレオリオは悪人ではないし、無茶をしたゴンに説教をする程に心配してくれるクラピカとレオリオは、意外といい奴等かもしれない。
何だかんだで打ち解けていたゴンとクラピカにレオリオは、いいトリオになりそうだ。
そんな3人と俺を見ていた船長は上機嫌で「お前ら全員、審査会場最寄りの港まで連れていってやる」と笑いながら言っていた。
船旅を終えて到着したドーレ港で、山にある一本杉を目指すようにアドバイスしてくれた船長に、ゴンと一緒に感謝しておき、進んだ道中で老婆にドキドキ2択クイズというクイズを出されて、沈黙という答えを選び、正解の道に進んだ俺達。
老婆が言っていたが一本杉の下にある一軒家に住んでいる夫婦はナビゲーターをやっているそうで、お眼鏡にかなえば試験会場まで案内してくれるみたいだ。
到着した一軒家の中には魔獣が3体おり、まるで魔獣に襲われた夫婦のようなふりをしている魔獣達が芝居をしていたが、いくら人間に化けようと匂いだけは誤魔化せない。
襲われた夫役の魔獣が実際に血を出して怪我をしているあたりは、まさに迫真の芝居といったところだが、今それを明かしても評価されるのは俺だけでゴン達が不合格になるかもしれないと判断した俺。
今だけは沈黙を選び、妻らしき存在に化けた魔獣を連れ去った同種の魔獣はゴンとクラピカに任せ、怪我をしている魔獣をレオリオに任せておく。
それから森に隠れている魔獣を捕まえてみた俺が「あんたが本物の奥さんで、人の女性に化けてた魔獣を連れ去った方が旦那さんかな。偽装夫婦の魔獣は息子さんと娘さんだろうけど」と言うと笑い出した魔獣。
「全部バレてるじゃないか。何処で解ったんだい?」
「匂いだな。全員匂いが似てた。性別によって多少違いはあったが全員同種の匂いがしてたから、全員人間じゃないのは気付いてたよ。人間と魔獣は匂いが違う筈なんでね」
「あたしらよりも鼻がいい人間は初めてかもしれないねぇ」
なんて会話が魔獣のキリコとあったりもしたが、全員が合格を言い渡された俺達。
ナビゲートしてくれることになったキリコ一家が空を飛んで運んでくれるみたいだったが、俺が重すぎてキリコ一家では運べないということになり、俺だけ陸路を進むことになった。
筋肉の質と密度が並みじゃない俺は、見かけよりも数十倍は重いんで、通常の椅子に座る時は椅子にオーラを纏わせて強度を高めて座っている。
なんとか空を飛んでいるキリコ達とゴン達3人を目印にして陸路を進んだ俺。
到着したザバン市、ツバシ町に辿り着いた俺はキリコとゴン達と合流し、ハンター試験会場まで案内してもらうことができた。
定食屋に入り「ステーキ定食、弱火でじっくり」を頼んだキリコの言葉が合言葉だったようで、奥の部屋に案内された俺達に「あんたらなら、また来年も案内してやるよ」と言って去っていく魔獣キリコ。
エレベーターとなっていた一室が降りていく地下。
辿り着くまでは時間がありそうなんで、今は用意されていたステーキ定食を味わっておくとしよう。
切り分けたステーキをほうばると、塩コショウだけでも柔らかな肉から甘い脂と豊かな肉汁が溢れてきて美味だが、ソースと共に食べてみると、刻んだ生の玉ねぎの辛み、火を通して飴色に炒めた玉ねぎの甘みが、渾然一体となって肉の味を際立たせていた。
「美味いな、いい牛肉を使っているし、肉の味を際立たせているソースには玉ねぎが使われているぞ」
同じくステーキを食べているレオリオに、そう伝えておくと「確かにこいつは美味いが、ソースの材料までは気にしてなかったな。流石は美食ハンター志望ってところか」と感心していたレオリオ。
食事中にも会話しながら試験会場への到着を待つ俺達。
ハンター試験前に、美味いものが食えたのは中々悪くない。
一見細身に見える主人公のメイトの身体は凄まじく強靭だったりします