評価が1でもついたら続けます。
なので評価を!評価をください!
何回見ても、よく分からんなぁ……と、思う。
目の前で笑っている少女を見ながら、俺は心の中で彼女と出会ってから100回を超えるであろう感想を抱いた。
「ねぇシルくん」
青い髪がふわりと揺れて、赤い、あまりにも禍々しい空を背景に、自然と彼女はそこに立っている。
【魔入りました!入間くん】というアニメ化までされた漫画の主人公にして、俺の予想では魔王の座につくと思われる
そう、
しかし目の前で楽しそうに、はしゃぐ彼女を見ていると、
少年とは言えないのが事実だ。
軽く自己紹介をしよう。
僕の名前は「ラウム・シルバ」
一応転生者でこの世界が魔入間の世界だと気づいたのが大体3歳。身内に原作キャラクターがいたため気づけたが、家での扱いがちょっと雑な14歳の少年である。
前世ではオタク高校生を満喫しており、そんな中で魔入りました!入間くんを愛読していた一人の読者だ。
ひょんなことからあっさり死んでしまい、この世界に転生、しかも主人公たちと同級生になってしまった。
ラッキーだと思う反面、主人公が女になってしまいずっと悩んでいるのが、彼女と出会ってからの僕のルーティンだ。
「ちょっとシルくんってば、上の空だよ?」
「……ごめん。ちょっとスカートが」
「へあっ?!」
原作と違うのだ。
それも物語的なものではなく設定、それも根幹の設定が。
僕の知っている鈴木入間は男だった。
間違いなく。絶対に。
単行本40巻近くを読み返していた僕が言うんだから間違いない。
ただ今、目の前でスカートの裾を押さえて真っ赤になっている彼女は、どう見ても彼女だ。
「シルくんのばか……!」
「…いや注意しただけなんだけど」
「急なの!」
「気をつけなかったのは入間だろ」
そう言いながら、というか最初から視線はそらしている。紳士だからな、悪魔だけど。
青い髪が揺れる
制服のスカートがひらりと踊る。
見慣れた。もう何度も見た。
それでも。
――――――何回見ても分からんなぁ。
なぜ女なんだろう。
物語は原作通りにだいたい進んでいる。サリバンは溺愛しているし、アスモデウスらジャーマンスープレックスを掛けられて忠誠を誓ったし、クララは相変わらず自由だ。
カルエゴは怖い。
それは安心した。
なのに主人公だけ性別が違う。
原作通り進んでいるから良いものの、入間は「お願い」を断れない性格をしているのだ。そのせいであんなことにもなったし。
「シルくん何考えてるの?」
落ち着きを取り戻したのだろうか、彼女はそう問いかけてきた。
「いや?何にもないよ」
君のことを考えていた―――あながち間違いじゃないけど言ったら問題になりそうだから自重した。
お宅のお爺さんと執事?さんが怖いんだよ。前遊びに行った時にすごい根掘り葉掘り聞かれたし。
「ほんと?それ」
「ホントホント」
流石に鋭い。主人公の威厳である。
「まぁいいよ。それよりさ今日の授業全然分かんなくて」
女子になったからか、原作よりもちゃんと勉強しているようである。
そういう細かなところも違ったりする。
「んーどこ?」
「えっとね」
当たり前みたいに隣に座ってくる。
距離が近い。
僕が転生者じゃなきゃ危なかった。
まぁこんな感じなんだ。
僕の記憶は前世の、しかも漫画の記憶だ。
全部が全部合っているとは思ってない。
でもやっぱり、少し違和感が残る。
「シルくん?」
「聞いてる聞いてる」
「聞いてない顔してる」
「|
「だって分かりやすいんだもん」
くすっと笑う。
その笑い方は原作と一緒だ。
優しくて穏やかで、少し困ったみたいで、でも芯がある。
中身は変わらない。
それがまた分からないを増やすのだ。
「シルくんってさ」
「なに?」
「たまに私のこと不思議そうに見るよね」
ぎくり。
「気のせいだよ?」
「ほんと?」
「本当」
全然ほんとじゃない。
めちゃくちゃ不思議だ。
だって男だったもん。
僕の前世では。
「でもさ」
「?」
「シルくんが隣にいると、なんだか安心する」
さらっと爆弾を投げてくるな。ちょっと緊張しちゃうだろ、前世じゃオタク高校生だぞ。
「それはオルトロスがいるからだろ」
「それもあるけど、」
"それも"。
入間は少しだけ首を傾げてはに噛んで
「シルくんはちゃんと私をみてくれてる感じがするから」
悪魔タラシは伊達じゃない。
ほんとそういうところだと思う。
僕は家計能力で魔力の流れを見る。悪魔だったり魔獣だったり、魔術の起こりなんかを。
危険を避けるために、戦いをさける最善手を探す。
たけど彼女は、僕が見ていることをそのまま受け取る。
観察じゃない、気遣いとして。
「……気のせいだよ」
「またそれ」
不満そうにほおを膨らませる。
可愛いとか思ったらだめだ、
僕の推しカプは入間×アメリだ。
そこを揺らげたらおしまいだ。
原作至上主義。
僕は脇役。
主人公たちの活躍を傍から見ている、そんな存在で良かった。
そういうポジションでいるつもりだった。
なのに僕は入間のそばにいる。なんなら席も隣。
何回見ても分かんない。
物語の主人公で、本当は男で、なのに今は女で。
それでも変わらず、周囲を巻き込んで、笑って前に進む。
「シルくん」
「…なに?」
「これからもよろしくね」
その言い方はずるいだろう。
積み重ねを前提にしたその発言。
きっとこれからも僕が隣にいると信じている。
そんな彼女が眩しくて、思わず目を細めて。
「…もちろん」
短く返した。
これで十分だろう。
入間は満足そうに笑った。
スカートがひらりとゆれる。
僕は思う。
――――――何回見ても分かんない。
でも。
分からないままでいいと思う。
物語は動いていて、僕はそのなかにいる。
そして彼女がその中心だ。
今日も今日とて赤い空。バビルスは平和だ。
だがまぁ、取り敢えず。
「スカートだけは気をつけなね?入間」
元気に動いて、転びそうな彼女にそう伝えるのだった。