篝火「アノール・ロンドの酒場」   作:上代わちき

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二品目「羊飼いの緑花草サラダ」

 

 いらっしゃいませ。

 不死のお客様。

 

 牧場の大狼を狩ったのですね。

 おめでとうございます。

 これで彼女も、安らかに眠れるとよいのですが……。

 

 

 

 感傷的になっても仕方ありませんね。

 ここからは現実的なお話をしましょう。

 

 かの大狼が駆除されたことで、市街地は比較的安全になりました。

 今後は東の「庭園」へと行きやすくなる筈です。

 

 

 

 あの庭園は、かつて一般に公開されていた公園です。

 市民にとっては、自然の景色を楽しめる憩いの場でした。

 

 とりわけ「緑花草」が採れることで評判でして、そのための環境を保全する場所でもありました。

 緑花草の栽培所へは、手続きこそ必要でしたが誰でも入れたのです。

 

 

 

 緑花草は、独特の苦みと刺激を持つ植物です。

 そのため料理として楽しむのには不向きな食材なのですが、一方でスタミナを高める薬効が確認されています。

 

 そこで、この度緑花草を用いた美味しいサラダを作ってみました。

 カタリナの酒と同様、美味しく頂けるよう「工夫」を凝らしています。

 

 

 一度、試してみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

 以前にも申し上げた通り、私はロードランの外を旅しておりました。

 

 記憶にある思い出は、もう殆どカタリナの国のものばかりです。

 しかし、当時の旅の思い出を記した手帳があります。

 

 

 思い出の殆どを落としてしまった今となっては、この手帳が私の魂の場所だったりするのです。

 

 

 ここたまーっ!

 ……おっと失礼、呪いとは厄介なものですね。

 

 

 

 この手帳に曰く、私はカタリナと同じぐらいに入れ込んでいた国があったようです。

 

 その国では、羊が育てられていました。

 羊を育てることで食料を確保する戦略のようで、国中で羊を放牧していたのだとか。

 場所によっては牧場を使わず育てていたとのことで、時には犬を使って羊を外敵から守る文化もあったそうです。

 

 犬だけではありません。

 羊を放牧し、育てるからには人も相応に苦労していました。

 

 

 

 そんな羊飼いを労うための料理が、この手帳には記されていました。

 現地で採れるいくつかの野菜を、サイコロ状に切って盛り付けるシンプルなサラダです。

 

 

 これをもとに、緑花草の薬効があるサラダを作ってみたのです。

 酒場の裏で育てたいくつかの野菜をサイコロ状に切って、専用の「工夫」を凝らしたみじん切りの緑花草で味付けしました。

 

 

 

 「羊飼いの緑花草サラダ」です。

 どうぞ、酒と一緒に楽しんでください。

 

 

 

 

 この市街地を東に進めば、「庭園」があります。

 かつては緑花草の栽培所であり、その環境を保全するための公園でした。

 

 しかし神々が去り、アノール・ロンドそのものが棄てられた都となった今、あの場所は緑が生い茂る森と化しています。

 長い年月を経たことで、公園そのものが緑化されてしまっているのです。

 

 

 ですが、公園の奥に進めばかつてアノール・ロンドの市民に愛された緑花草の栽培所跡があります。

 私もあの大狼が現れる前に何度も訪れているのですが、まだまだ自生しています。

 

 ロードランの旅は過酷なもの。

 緑花草の薬効が旅の助けになるかもしれません。

 一度訪れて、必要な分を採取するのもいいでしょう。

 

 

 

 ですが、緑化した公園内部ではどういう事情か結晶化した亡者が蔓延っているようです。

 もともと上層部には「シースの書庫」があり、その内部ではシースが様々な実験を行っていると言いますが、その産物が庭園に流れ着いたようです。

 

 ともすれば、亡者蔓延るこの市街地よりも危険な場所となっています。

 だからこそまだ見ぬ宝や魔術の知識なども眠っているかもしれませんが、探索する際はお気をつけて。

 

 

 

 

 庭園に奥に進めば、大きな湖があります。

 そこが緑花草の栽培所です。

 

 緑花草とは、本来水辺に自生する一年草なのです。

 

 

 

 しかし、庭園はシースの実験の産物がうろつく危険地帯となっています。

 クリスタルゴレムや月光蝶……あるいは、六つ目といった脅威への対処が必要となるでしょう。

 

 ですがそれよりもやっかいなのが、「湖獣」と呼ばれる独特の怪物です。

 

 

 

 湖獣は、複数の頭と長い首を持つ怪物です。

 遠くの獲物を殺すためのブレスを放ち、近づく者には巨躯を活かした重い一撃を繰り出してきます。

 

 はじめて殴られたときゃぁ、もうどうすりゃいいのかわっかんなくてわっかんなくて。

 ……おっと失礼、呪いとは厄介なものですね。

 

 

 以前の個体は故あって私の手で駆除しておきましたが、そろそろ新しい個体が現れてもおかしくない頃合。

 重ね重ね、庭園の探索の際は準備を怠らないようお願い申し上げます。

 

 

 

 亡者となったお客様を見るのは、私としても心苦しい。

 どうか、またのご来店をお待ちしております。

 

 

 





・羊飼いの緑花草サラダ

 アノール・ロンドの酒場を経営する、名もなき神族によるサラダ。
 いくつかの野菜をサイコロ状に切り、みじん切りにした緑花草で味付けした、持ち帰り用の品。

 一時的に、スタミナの回復速度を上げる。

 独特の苦味から敬遠される緑花草だが、酒場の店主が特別な「工夫」を凝らしたことで、薬効を維持しつつ酒にも合う一品となった。
 それは酒と薬の神、マクロイフ親父にも通ずる力だ。



・湖獣のソウル

 棄てられたアノール・ロンドの庭園に潜む、湖獣のソウル。
 庭園の緑花草を食べて育った、特別な個体。

 複数の頭を持つ湖獣は、シースの実験により生まれた怪物であるとされ、かの竜との関連性を指摘されている。
 ロードランではよくある、真偽不明の噂話だ。
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