アノール・ロンドにて酒場を経営しておりました「店主」です。
このたび奇縁が重なり「もう一つのイザリス」にて営業再開する運びとなりました。
今回は新たに「五品」ご用意させていただきましたので、引き続きご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。
……あれ、時候の挨拶が星祭じゃなくて「星松」になってらぁ。呪いとは厄介なものですね。
一品目「スラーソー」
おや、不死ですか。
それに……どうやら奇縁が重なったようで。
おっと失礼、呪いとは厄介なものですね。
いらっしゃいませ。
イザリスの酒場へようこそ。
かつては穏やかな景色を見せたこの都市も、今となっては呪われました。
だからか、従来のイザリス以上に危険な場所となっています。
苔や草木が生える大通りには牛頭のデーモンが我が物顔で徘徊し、路地にも山羊頭のデーモンや亡者が潜んでいます。
油断していると、牙猪まで飛び出してくるしれません。
ここで行動するならば、警戒が必要となりましょう。
ですが、ちょうどこの酒場にも篝火があります。
東側の大部屋にございますので、よろしければご利用ください。
アノール・ロンドにて棄てられていた教会を改修し、ちょっと個人的な力で持ってきたものです。
暖炉も焚いておりますのでくつろぐこともできますよ。
それから。
ここは、個人的に経営しているお店です。
かつてはイザリスに住まう市民や、当時のアノール・ロンドからの旅人に愛されてきました。
おかげで、酒には自信があります。
お客様ならご存知でしょう。
私の酒は、本来お酒を楽しむことができない方々にも愛される特別なもの。
今回も「工夫」を凝らしたお酒をご用意させていただきました。
よろしければ、一杯いかがでしょうか。
◆
このイザリスでは、伝統のお酒がございます。
お米を使ったお酒です。
この地ではお客様のよく知る従来のイザリスとは異なり、お米の栽培が続いていました。
お米とは、稲の果実から外皮を取り去った食べ物です。
小麦粉から造られるパンと比べ、腹持ちが良いのが特徴です。
極東で造られていることでも有名ですが、意外と多くの地域で食されている食べ物なのですよ。
そのお米を窯で蒸すことで、酒が造られるのです。
そのお酒は白い酒……この地の言葉でスラーソーとも呼ばれ、市民達に愛されてきました。
お米の香りが漂い、香ばしい味を楽しめるのです。
とても強いお酒ですから、よく男性の方々が楽しまれていました。
仕事終わりの宴によし、音楽を用いた祭りによし。
そんな楽しいお酒を、この酒場でも提供しております。
「スラーソー」です。
強いお酒ですので、少しクセがあります。
ですが万一お口に合わなくても、当店には甘いヤシ酒や西から取り寄せた飲みやすいラガービールも取り揃えています。
なのでぜひ、一度はスラーソーをお試しあれ。
◆
この辺りについて、ですか?
ここはイザリス市街地です。
イザリスの魔女による火の暴走で都市としてのイザリスは拡散し、その多くは霧散していきました。
この地は、ロードランから霧散してしまったイザリスの一つなのです。
この地の特徴として、混沌の炎による影響が殆どないことが挙げられます。
ロードランから切り離されたことで、少なくとも景色としては炎に飲み込まれずに済みました。
それでもデーモンを筆頭に、その影響が見え隠れしてはいますが……ロードランに残る従来のイザリスに比べれば、まだ穏やかな風景でしょう。
密林の木々が生い茂り、小鳥が囀り、湖には幸がまだ眠っている。
確証こそありませんが……混沌が噴き出す以前の、本来のイザリスに近しいのはこちらの方かもしれませんね。
他方で。
魔女達が火を生み出そうと試みる以前までは、私もイザリスで店を経営していました。
先に申し上げた通りです。
あの災厄でイザリスが分かれた時、私は偶然にもアノール・ロンドの本店に戻っていた故に難を逃れましたが……代わりに、この酒場の土地に戻ることもままなりませんでした。
ですがつい先日、ロードランから切り離された筈のこの"もう一つのイザリス"は、再びロードランと繋がりました。
お客様が「混沌の苗床」を斃された故か、それともお客様が一度手にした「王の器」によるものか。
……いずれにしろ、そのおかげで私は営業再開できました。
御礼申し上げます。
◆
混沌により霧散していったイザリスは、その殆どが消失していきました。
その数少ない例外がこのイザリスであり、事実上ロードランとは別に存在する"もう一つのイザリス"となりました。
分かたれた後のもう一つのイザリスでは、しばらくの間は平穏が続いていたようです。
市民達はまだ生活を続け、文明を維持していたのです。
ですが、その日常はすぐ壊れたようです。
蝕みの老王。
そう呼ばれた存在が現れて、もう一つのイザリスを統治し始めたそうです。
驚くべきことに、彼はロードランからやってきたそうです。
私にも知らぬ渡航の術があったのか、それとも当時に何か抜け道があったのか……今となっては判然としません。
ですがそれよりも重要なのは、蝕みの老王は従来のイザリスの民を虐げたことです。
どうやら彼の老王は、人々を支配しておきながら、庇護するようなことはしなかったようです。
それどころか知識ある者を次々と捕らえ、イザリスの文明を破壊していったそうです。
それは失策の類ではなく、意図した政策です。
蝕みの老王は、神族の身でありながら神族に挑む反逆者だったのです。
故にこそ、イザリスの魔女に仕えた人間達を根絶せんと試みたようです。
その一環として、市街地にどこからか呼び寄せたデーモンを解き放った。
あるいは、どこからかやってくるデーモンをそのまま泳がせた。
今のイザリス市街地で最も恐ろしい怪物は、牛頭でも山羊頭でもない、さらに別のデーモン。
他の個体よりも優れた筋力を得るに至った、羊頭のデーモンです。
もしお客様がこの地で新たな宝を求めて探索されるというのならば、まずは羊頭のデーモンにご注意ください。
・スラーソー
イザリス市街地で酒場を経営する、名もなき神族による酒。
竹筒に満たされた、持ち帰り用の品。
HPを全回復する。
ロードランとは異なる次元に存在するもう一つの「イザリス」では、この酒が親しまれていた。
米を原料とした強い蒸留酒の味が、市民達の愛する伝統であった。
・羊頭のデーモンのソウル
棄てられたイザリス市街地を彷徨っていた、羊頭のデーモンのソウル。
本来のロードランでは絶滅してしまった羊頭のデーモンの、最後の一体だった。
混沌から生まれた羊頭のデーモンは、伝統的に大鉈を用いる。
牛頭のデーモンにも負けない筋力を活かすため、右手だけでなく左の持ち手を追加したのだ。
尤も、真に大鉈を使いこなす筋力を有したのは、ただの二体のみだった。