いらっしゃいませ。
不死のお客様。
……おや、そのソウルの波動はデーモンのもののようですね。
つまり、トカゲのデーモンを斃したのですね。
実に恐ろしい方です。
ですが、だからこそ王の器を手にすることができたのかもしれません。
おっと失礼、呪いとは厄介なものですね。
ともあれ、密林の畑は比較的安全となることでしょう。
亡者や虫の類、あるいは数の多い牛頭や山羊頭のデーモンが絶えることはないでしょうが、あのトカゲがいなくなるだけでも大きく変わる筈。
あそこの野菜や苔玉は、時の淀みを用いた「工夫」を凝らせばまだまだ新鮮でおいしいものです。
メニューの良い材料となるのですよ。
その代表的な料理が、以前にも提供しました「苔玉の素揚げ」です。
お持ち帰りの分はまだまだありますので、よろしければまたご注文ください。
さて。
今回は、苔玉の素揚げとはまた別の料理を用意しております。
お客様の探索の成功の祝いには、ぴったりのものです。
ぜひとも、召し上がっていってください。
◆
以前にも申し上げている通り、私はロードランの外を旅するのが趣味です。
とりわけカタリナの国と羊飼いの国がお気に入りであることは、もうご存知かもしれません。
ですが当時の手帳を漁っていると、まだまだかつての名残が出てくるものです。
今回掘り起こした手帳の中には、寺院の国について記したものがありました。
どのような繋がりがあったのか、このイザリスと文化的ルーツが似ている国でございます。
その国は、首都にて交わる大きな川が特徴です。
それだけに魚も食されています。
とりわけ当時の私にとって衝撃的だったのが、ナマズです。
ナマズはよい魚ですよ~。
何せ大型で可食部が多く、白身で脂が乗っている。
炭火焼にしてもよし、スープに使ってもよし。
一方、寺院の国は香辛料の生産でも知られています。
他地域では手に入りにくい香辛料を、ふんだんに使うことができるのです。
だからか、カレーと呼ばれるスパイス料理もよく食されていました。
それにココナッツミルクをくわえた伝統の煮込み料理が、アモックでございます。
甘くてまろやかで、辛口が嫌いな方にも好まれました。
このもう一つのイザリスの環境は、寺院の国と酷似しています。
もしかしたら、もともとイザリスとこの寺院の国は、同じ場所だったのかもしれません。
あの大沼もまた、イザリスに縁深い地であるように。
だからこそ、この地でもアモックは大衆食として愛されてきました。
アモックの特徴は、魚とも相性が良いこと。
そして偶然にも、イザリスでは寺院の国と同様ナマズが獲れます。
そこで、これらを合わせたメニューをこの地で考案しました。
「ナマズのアモック」です。
ライスもお付けしますので、アツアツのうちにご賞味あれ。
◆
おや、それは……泥の湖へ続く鍵ですね。
あの地もまた、密林の畑と同様に監獄と化しました。
その二つを行き来する看守のためのものでしょう。
泥の湖は、もう一つのイザリスに幸を齎した漁村でした。
この湖の特徴は、濁ったその色です。
この地の河川は、土砂を巻き込みながら流れるのが特徴です。
故に豊かな栄養を蓄えており、多くの魚を育てるのです。
湖の上に建つ木造の建物群は、その魚を捕る漁師達によるもの。
泥の湖は季節によって水量が大きく異なるため、乾季に高床式の家を建てて、雨季には水上で生活するのです。
尤も、今となってはその面影しか残っていないでしょうが……。
現在、泥の湖は蝕みの老王による支配で荒れ果てました。
湖そのものを人為的に汚染し、それどころか湖に独房を拵えて人々を閉じ込めました。
あえて低い地に独房を作り、雨季に水責めをするようなこともしたそうです。
明らかに合理的なものではなく、当時の時点で老王は狂気に蝕まれていたことが見て取れます。
この地を探索する際は、ロードランの病み村と同様に苔玉を持ち込むことをお勧めします。
汚染された湖から湧いてきた虫は、場合によっては毒を放つ筈。
ヒルだまりや、虫どもが伝統の像を動かす悪夢的な景色が飛び出してくることもありましょう。
如何にこの地で苔玉が重宝するかは、推して知るべしです。
◆
泥の湖は、人為的に汚染された不浄の地です。
苔玉の準備は勿論、「錆びた鉄輪」の持ち込みも有効であると存じます。
あれがあれば、ぬかるみに足を取られずに済みます。
……なんであれにそのような祝福が施されているのでしょうね?
もともと罪人を繋ぎとめるためのものの筈ですが、あるいは何らかの神に縁のある品なのでしょうか。
個人的にイザリスの魔女達や、それ以外ですと罪の女神ベルカも疑わしいのですが……証拠がない以上、ただの言いがかりですね。
話がそれました。
呪いとは厄介なものですね。
どのような経緯があるにしろ、錆びた鉄輪は病み村のような場所を探索するためのものです。
きっと泥の湖においても、役に立つ筈です。
他方で。
やはりというべきか、泥の湖にも羊頭やトカゲのデーモンにも匹敵する類稀な強者が潜んでいます。
大ナマズです。
大ナマズは、もともと泥の湖に住むナマズの一匹だったのでしょう。
しかし蝕みの老王による狂気により、人を食わされました。
腐った独房の中にいた囚人は、まず虫に集られ、水に沈められれば魚の餌にされたのです。
大ナマズは、まさしくその狂気に加担した魚でした。
ナマズが人を喰らう事例は従来の世界でも確認されていますが、今回の個体は異常成長した点が特異です。
その力は、並大抵のデーモンを超えるものとなります。
対処するなら、火や雷が有効となるでしょう。
ここで一度、属性の力を確かめるのも一興であると存じます。
・ナマズのアモック
イザリス市街地で酒場を経営する、名もなき神族による魚料理。
伝統のスパイスとココナッツミルクを用いた、ライス付きの持ち帰り用の品。
一定時間、防御力とスタミナの回復速度を高める。
イザリスと文化的ルーツを同じくする寺院の国でも食される大衆食であり、他地域ではなかなか見られない香辛料を用いた品でもある。
とりわけこれは、ナマズをカレースパイスで煮込んで蒸した由緒ある食べ物だ。
・大ナマズのソウル
泥の湖に生息していた、大ナマズのソウル。
人を食い、人間性を孕んだことで異常成長した個体だった。
泥の湖は、もともと漁業で栄える漁村だった。
だが蝕みの老王によって、偏執的な牢獄となった。
腐った木造の独房に人々を押し込め、虫に集らせ、大ナマズに食わせたのだ。