立冬の候、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
ロードランの各地で酒場を経営しております「店主」です。
この度奇縁が重なり「墓地街」に出店する運びとなりました。
今回は新商品を「四品」ご用意させていただきましたので、引き続きご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。
……あれ、立冬って十一月の挨拶だったよーな気がする。呪いとは厄介なものですね。
一品目「エストカクテル」
おや、不死ですか。
それも……ただいくつかの時代の私に縁があるだけに留まらない。
なるほど、貴方がニトの……。
おっと失礼、呪いとは厄介なものですね。
いらっしゃいませ。
墓地街の酒場へようこそ。
ここはお客様もよく知る「火継ぎの祭祀場」の下に位置する街です。
祭祀場から地下墓地へ行く道中で見下ろせば見えてくるあの街の、その一つです。
本来であれば、普通の不死が訪れるような場所ではない。
だからか、やはり他の地域よりも危険な場所となっております。
大通りに出れば虫に食われた亡者が蔓延り、路地には病を持つ犬やネズミが潜んでいます。
ここで行動するなら、警戒が必要となりましょう。
ですが、ちょうどこの酒場にも篝火がございます。
東側の大部屋にございますので、よろしければご利用ください。
アノール・ロンドにて棄てられていた教会を改修し、ちょっとした裏技でここに持ってきたものです。
暖炉も焚いておりますのでくつろぐこともできますよ。
それから。
ここは、個人的に経営しているお店です。
ちょっとした縁でニトと会い、彼奴との取引も兼ねて出店したもの。
ここは、ニトが誅すべき敵とそれに縁ある病が淀み腐る地。
その清算を、ほんのちょっとだけお手伝いするための施設です。
私の酒は「工夫」を凝らした特別なもの。
知ってか知らずか、ニトの加護と使命を帯びたお客様にはぴったりなものと存じます。
よろしければ、一杯いかがでしょうか。
◆
ウォッカと呼ばれるお酒をご存知でしょうか。
ウォッカは麦やジャガイモを発酵させたもの。
無色透明で雑味がなく、癖のないクリアな味わいが特徴です。
同じ蒸留酒でも、ハーブやスパイスを用いて香り付けしたジンとは異なり、主役と言うより脇役としての側面が強いのです。
そのようなお酒ですので、カクテルに向きます。
複数の種類のお酒を混ぜ合わせたり、あるいは他の飲料を加えたりする飲み方です。
私は時にロードランの外を旅しますが、その中で訪れた国のひとつ「ブートカ」ではリンゴジュースとの組み合わせが愛されておりました。
ブートカはカリムの同盟国としても有名ですが、ウォッカの国としても名高い。
呪いで国としての正式な名を失ってなおも、ウォッカに縁ある単語である「ブートカ」が通称として残る程度には。
そんなブートカのもう一つの魅力が、リンゴでございます。
ブートカは最大級のリンゴ生産国であり、食べ物として親しまれております。
故にリンゴにちなんだ料理や文化も発達します。
その一つが、ウォッカとリンゴジュースを組み合わせたカクテルです。
それを、不死の方々も楽しめるよう「工夫」いたしました。
「エストカクテル」です。
リンゴ味へ調整したエスト瓶をもとにしてますので、不死の体によく効くと存じます。
虫の病にも効きますので、是非お持ち帰りについてもご検討ください。
◆
ここについて、ですか?
ここは墓地街……その中でも、とりわけ墓守街と呼ばれる区画です。
同じ墓地街でも、城壁の中と外で分けられます。
この辺りは城壁の外とされるのです。
城壁の外は、墓守のような死に触れる方々のための場所とされます。
彼らが整備・管理する墓が広がる他、そんな彼らの集落もございます。
彼ら墓守の家は、伝統的に木造建築となっております。
狭い土地を効率的に用いるため、時には複数の家が積み重なるような景色も見受けられます。
故に、スラム街のような恐ろしさも兼ね備えます。
この街を探索すれば、亡者の奇襲を受けるかもしれない。
常以上の警戒をおすすめします。
それから、この地では「虫の病」が蔓延しています。
どこからか虫が湧いてきて、執拗に人へ付きまといその肉を食い漁る。
尋常な手段では虫を振り払う術はなく、際限なく虫が湧いてくる恐ろしい呪いです。
お客様にはニトの加護があるようなので、この呪いに苛まれることはないでしょうが……。
しかし虫が齎す状態異常には警戒を密にして損はありません。
先のエストカクテルは毒や猛毒によく効くため、今一度お持ち帰りをおすすめします。
また時には出血にも苛まれるやもしれませんので、当店では「苔玉の素揚げ」も用意しております。
よろしければこちらもご検討ください。
◆
ここ墓地街は、先に申し上げたブートカに縁ある地です。
呪いにより正式な名前を失ったブートカは、しかしてその景色や文化はこのロードランへ流れ着いたようです。
さながら吹き溜まりのように。
故に同盟国であるカリムの影響も強いのですが……それとは別に、ニトとの縁も強いようです。
墓王ニト。
その領域である「巨人墓地」には、彼奴の眷属である「三人羽織」が多数蔓延っています。
ですがそのうちの何体かは、ニトの力を奪いそれぞれへ逃げていった。
そのうちのひとつが、この墓地街のようです。
仮面の大樹。
それが、お客様が斃すべきニトの敵です。
もともとニトの力を奪いこの地へ逃げた三人羽織が、力をその身ごとある種の錬成炉へ捧げた末路であると言います。
如何なる縁があってそのようにしたか、現地点では詳細を断定できませんが……。
しかしニトは、その大樹を斃さなければならない敵とみなしています。
故にこそ、お客様はこの地に誘われたのでしょう。
おそらくお客様は、もともとニトとは無縁の者。
何らかの事情でニトのソウルを奪わなければならない身の上であったことでしょう。
そして実際に、巨人墓地でニトを斃された。
しかし実際にニトを斃せるということは、その実力は確かなもの。
そこにあえて希望を見出して、彼奴はお客様に加護とこの地への道を遺していったと存じます。
お客様にとってはいい迷惑かもしれません。
しかし、不死の旅は何かと入用です。
この地で得られる宝が、使命の役に立つかもしれない。
お客様が帯びたニトの使命は、もしかしたら指標として利用価値のある代物かもしれませんよ。
・エストカクテル
墓地街で酒場を経営する、名もなき神族による酒。
専用の瓶に満たされた、持ち帰り用の品。
つまみとしてドライフルーツも付いている。
HPを回復し、毒と猛毒の蓄積を減らし、状態を解除する。
その他、一時的に毒と猛毒に対して強い耐性を得る。
予め氷を入れた瓶にウォッカを注ぎ、エストで満たしステアしたもの。
そのエストは店主の「工夫」でリンゴ味へと変わっており、不死人であっても味を楽しめる。
・仮面の大樹のソウル
墓守街奥地で鎮座していた
仮面の大樹のソウル。
墓王ニトから力を奪った三人羽織の一人が、その力をある種の錬成炉に捧げた故の末路。
それは、とある騎士に乞われてのことだったという。