篝火「アノール・ロンドの酒場」   作:上代わちき

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三品目「湖獣肉の炭火焼」

 

 いらっしゃいませ。

 不死のお客様。

 

 ……おや、湖獣の肉ですか。

 つまり、庭園にまた湖獣が現れたということですね。

 同時に、お客様はその討伐に成功したわけです。

 

 

 

 すっげぇなアンタ。

 俺あいつをまともに狩れるようになったの、何匹目だったかな~。

 ……おっと失礼、呪いとは厄介なものですね。

 

 

 ともあれ、これで今後の庭園は比較的安全となるでしょう。

 亡者が絶えることはないでしょうが、あのブレスがなくなるだけでも探索のしやすさは変わる筈。

 緑花草の採取も捗るようになりましょう。

 

 

 

 まぁ半年もすればまた新しい個体が現れるでしょうが、その時はまた私が狩りましょうか。

 メニューのよい材料になります。

 

 

 庭園の湖獣は、水生生物であるせいか、それとも他の怪物とは異なる何らかの事情があるのか、魚の肉にも似た旨味があります。

 見た目はゲテモノですが、きちんと調理すれば美味しく頂けるのです。

 

 

 

 どうでしょう。

 そのお肉、私の方で調理させて頂きたく存じます。

 

 きっと、お客様もご満足頂ける逸品になりますよ。

 

 

 

 

 以前から申し上げている通り、私はロードランの外を旅するのが趣味です。

 とりわけカタリナの国と、羊飼いの国がお気に入りですね。

 

 カタリナについては以前申し上げたので省略しますが、実は羊飼いの国については、まだまだ品があるのです。

 

 

 実は、その国は地中海に面する国です。

 それ故、海の幸にも恵まれていました。

 

 内陸の方はその限りでもないようでしたが、国として発展しているだけあって、そのような場所でも川に恵まれています。

 自然、魚料理にも精通するようになります。

 

 

 おかげで、当時も色々堪能することができました。

 どいつもこいつも調理法くっそ面倒くさかったり名前がややこしかったりするけどな。

 ……おっと失礼、呪いとは厄介なものですね。

 

 

 とまぁ、料理人失格気味の私ですが、プロとしてお店に出せるメニューを開発しました。

 それが「炭火焼」です。

 

 ただのシンプルな焼き料理と侮るなかれ。

 料理人失格気味とは申しましたが、その代わり私には「工夫」を凝らす力がございます。

 

 

 

 というわけで「湖獣肉の炭火焼」が出来上がりました。

 お好みで塩とレモンもどうぞ。

 

 お酒に合いますよ。

 

 

 

 

 おや、その鍵は……牧場の門を開く鍵ですね。

 かつて牧場の主が合い鍵の一つを庭園で失くしたと宣っていましたが、それを湖獣が飲み込んでしまったのでしょうね。

 

 それがあれば、人の身でも牧場に入れるようになるでしょう。

 

 

 

 あの牧場は、私の友のものでした。

 ロードランの外を巡ることで、景色を知り、食べ物を知り、文化を知り、人を知る……その喜びを共有し合う仲でした。

 

 とりわけ、羊飼いの国のことを気に入ったようで……いつしか、自身でも羊を育てることを目指すようになりました。

 その到達点が、まさにあの牧場だったのです。

 

 

 牧場で育てた羊の肉を、私の店で提供する。

 アノール・ロンドに落ち着いた後は、そのように穏やかな生活を送ったものです。

 

 

 

 

 しかし、私の友は呪いに冒されました。

 名を失い、けれども使命を失わなかったあの大狼に留守を任せて、牧場を去ったのです。

 

 しばらくは牧場として最低限は機能していました。

 時折あの大狼の許しを得て、半ば野生化していた羊を狩ることで羊肉の提供を続けていたのです。

 

 

 

 でも、流石にもう眠りについてもよい頃合でしょう。

 きっと、これでよかったのです。

 

 

 

 

 今の牧場は、もう管理する者もいない廃墟となっています。

 

 ですが、牧場の主の住処はまだ残っている筈。

 そこには、いくつかの宝が眠っています。

 すべて、私の友が旅で得たものです。

 

 

 大狼すら失った今、あのまま死蔵させておくのも寂しいでしょう。

 よろしければ、お客様の旅に連れていってはいかがでしょうか。

 きっと、その方が彼も喜ぶ筈です。

 

 

 

 でも、牧場を訪れる際は精微に準備を行うことをおすすめします。

 

 あれから一度、私の方でも牧場を訪ねてみたのですが……。

 どうやら、デーモンの生き残りが牧場に現れたようです。

 きっとあれが、大狼を牧場から追い出した元凶でしょう。

 

 

 

 そのデーモンは、牛頭でも山羊頭でもなく、羊頭です。

 かつて大王グウィンによるデーモン狩りで滅ぼされたと聞いていましたが、どうやらそうでもなかったようです。

 

 あの羊頭のデーモンは、神族を酷く恐れます。

 故に私の手で駆除することはかないませんでしたが、お客様ならば応戦しようとする筈。

 

 

 

 お客様にとっては脅威となりますが、だからこそ安全に討伐へ臨めることでしょう。

 牧場で安全を確保するならば、まずはあの羊頭のデーモンを斃すことからはじめてみるべきと存じます。

 

 

 





・湖獣肉の炭火焼

 アノール・ロンド市街地で酒場を経営する、名もなき神族による料理。
 湖獣の肉を炭火で焼いた、持ち帰り用の品。

 一定時間、防御力を高める。

 一見してシンプルな料理だが、店主による「工夫」により他にはない旨味が凝縮された逸品。
 それはある種の薬効であり、そして酒にも合うよう味付けされている。
 これが、酒場が愛される秘訣なのだ。



・羊頭のデーモンのソウル

 棄てられたアノール・ロンドの牧場に潜む、羊頭のデーモンのソウル。
 もともと牧場の奥底に隠れ潜んでいたが、「名もなき神」に刺激されて気性が荒くなっているようだ。

 混沌から生まれた羊頭のデーモンは、須らく虐げられた。
 黒騎士の狩りの対象としても追われ、アノール・ロンドへ逃げ込むほどの力を有する個体のみが、今日まで生き残ることができた。
 並外れた生存本能が齎した、埒外の逃走劇がかつてはあったのだ。
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