いらっしゃいませ。
不死のお客様。
異形騎士アルトゥルを斃したのですね。
……アルトゥルは、特別な武器を振るっていたと存じます。
それは彼の故郷に由来する大剣と、独特の短剣であった筈。
その二振りの刃は、あの仮面の大樹が齎したものです。
以前にもお伝えした通り、仮面の大樹はある種の錬成炉です。
故に材料があれば、特別な武器を錬成できる。
かつてニトから力を奪った三人羽織は、その身ごと力を捧げた。
その祝福を宿したのが、アルトゥルの持つ二振りの刃だったのです。
その目的はただひとつ。
アルトゥルの主である、涙の聖女モルガンを討つこと。
現在のモルガンは、もはや聖女としての面影が残っていない有り様。
彼女の不死を絶つために、アルトゥルはニトの力を必要としたのです。
しかし、アルトゥルは敗れたようです。
ニトの力を宿した武器もろとも、彼女の……虫の操り人形へとなり果てた。
お客様は、ただニトによる使命を阻む敵を打ち倒しただけに留まらない。
死に場所を失った彼を救う、慈悲の葬送を成し遂げたのです。
どうか、誇ってください。
それが手向けです。
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在りし日のブートカは、ウォッカが有名な国でありました。
しかしそれと同じぐらいに、リンゴの質も名高いのです。
これも以前からお伝えした通りですね。
ブートカは有数のリンゴ生産国であり、それ故にリンゴを用いた文化も発達しました。
そのうちの一つが、先般提供したエストカクテルでございます。
ウォッカにリンゴジュースをくわえたカクテルは、ブートカで愛される飲み方の一つ。
それをエスト瓶で再現したのがエストカクテルなのですが、当店ではさらにもう一つリンゴにちなんだ料理を提供しております。
リンゴとは、ジュースにしても直接食べても美味しい果物です。
あのみずみずしくて甘酸っぱい味が、ブートカの民を虜にしたのです。
しかしブートカのリンゴの魅力は、それだけに留まりません。
それは、パイ生地よりもしっかりした生地を用いたケーキ。
その生地に、すりおろしたリンゴをぎっしり詰めて焼き上げたものでございます。
シナモンを効かせてありますので、きっとお客様にもご満足いただける甘味となりましょう。
「リンゴケーキ」です。
ブートカ特有の伝統料理であり、通常のアップルパイとは異なる味を楽しめます。
ぜひ、お持ち帰りもご検討ください。
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異形騎士アルトゥル。
彼が護っていたのは、城塞都市ブートカが誇る聖堂です。
その聖堂には、広大な地下墓地が広がっています。
「聖堂の地下墓」です。
聖堂の地下墓は、もともと多くの聖人を祀る場所であったといいます。
それ故、神聖な場所であり限られた者のみが出入りしていたとか。
しかしブートカが失われ、その景色が時が淀むロードランに流れ着いた現在、その領域もまた歪んでいます。
ニトの力が及んでいないにもかかわらず、骸骨がどこかから湧いてでて地下墓内を彷徨い歩いているようなのです。
おそらく、これもまた時が淀むが故の現象……とりわけニトの地下墓の要素が入り込んでしまったのやもしれません。
ですがそれ以上に恐ろしいのが、虫の存在です。
この地は「虫の病」の源泉に近く、故に虫の数も多い。
実際の探索では、大量の虫に追われることでしょう。
ここまで数が多ければ、きっとただ毒を対処するだけでは不足でしょう。
そこで、先程提供しましたリンゴケーキには出血に強くなる「工夫」を凝らしております。
この効果時間は、驚くほど長いものへと調整しています。
勿論従来通り毒や猛毒にも効きますので、改めてお持ち帰りをおすすめします。
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ブートカ生まれの聖女は、涙の女神クァトにちなんで涙の聖女とも呼ばれます。
涙の名を冠するだけあり、涙の聖女達は哀しみに寄り添う慈愛の性質で知られます。
ですが、どういうわけか涙の聖女達は"闇"とも縁深い。
公的な記録には残されていないものの、地下墓最奥にはその"闇"に至った聖女達のための牢が隠されているそうです。
涙の聖女モルガンは、そこにいます。
モルガンはブートカの地で生まれ、同盟国であるカリムにて奇跡と物語を学んだと言います。
そこで異形騎士アルトゥルと出会い、共に各地を巡ったのだとか。
時にはヴィンハイムを巡り、時には最初の死者ニトに縁ある地も訪れた。
トマシュや三人羽織の縁はここに由来すると存じます。
……いや、そもそもニトによる使命の目的を思えば、何らかの形でニトの目にかなったのかもしれませんね。
彼女の、聖女としての働きは、それほどまでに名高いものでありました。
しかし、モルガンの活動には虫の病が纏わりついていました。
もとより彼女が訪ねる地のことごとくが、虫の病に侵されていたというのです。
どこを巡ろうと、どの地へ赴こうと。
……そうです。
虫の病の源泉とは、涙の聖女モルガンその人でございました。
それを知ったモルガンは、自ら故郷の地下牢に入ったのです。
自らが虫の病の、最後の死者になるために。
ですが彼女は不死となり、その身から湧く虫は地下牢から這い出てしまいました。
それこそが、この地に蔓延る虫の病の元凶。
誤解を恐れずに申し上げるなら、その下腹部は何世代にもわたってドブネズミや虫が営巣していると思われます。
その繁殖力と闇の力は、侮れるものではない。
放置すればロードラン全てをも覆いつくしかねない、闇と深淵の災厄です。
アルトゥルが三人羽織と結託して彼女を介錯しようと試みる動機にもなり、そしてニトがその使命を遺す理由にもなりました。
もはや、その苦痛を長引かせる道理はないのです。
だからどうか、彼女をおくってあげてください。
それはニトの加護を宿した、お客様だからこその慈悲に他ならないのですから。
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行かれるのですね。
どうか、貴方の旅に寄る辺があらんことを……おっと失礼、呪いとは厄介なものですね。
やはりお客様に対しては、こちらの方が相応しいでしょう。
またのご来店、心よりお待ちしております。
事が終わった後もお立ち寄りくだされば、またお酒や料理をお作りいたします。
ここは墓地街の酒場ですから。
・リンゴケーキ
墓地街で酒場を経営する、名もなき神族による料理。
すりおろしたリンゴをたっぷり乗せた、持ち帰り用の品。
出血、毒、猛毒の蓄積を減らし、状態を解除する。
その他、一時的に出血、毒、猛毒に対して強い耐性を得る。
この効果時間は、驚くほど長い。
店主がかつて訪ねた国のひとつで振る舞われる、国民的なスイート。
その地ではリンゴの味で知られていて、みずみずしく甘い。
陰気な雰囲気でも知られた同国の、大きな魅力だ。
・涙の聖女モルガンのソウル
聖堂の地下墓で虫に食われていた
涙の聖女モルガンのソウル。
多くの死を看取った慈悲深い聖女として知られるモルガンは、しかし己こそが虫の病の根源と知った。
故に自ら地下墓の牢に閉じこもり、死ねぬ身のまま虫に食われる苦痛に耐え続けた。
その不死を絶つことこそが、彼女の信奉者達の使命だったのだ。