筆者「上代わちき」代理の……まぁ、「店主」とでも名乗りましょうか。
今回の「五品目」をもって、本作は完結となります。
要するに今回が『最終回』ですね。
どうか、最後まで楽しんでいってください。
まぁページをめくれば……今回の品も含めた……今までの品をいつでも楽しめますから、あまり気負わずに読み進めてください。
おっと、そろそろ不死のお客様が訪れる頃合ですね。
そろそろ店を開けなければ。
いらっしゃいませ。
不死のお客様。
どうやら「黄金の塔」の探索が捗っているようですね。
まさか店の裏手に、塔への裏道があったとは思いもよりませんでした。
この店は奇縁によりお譲りいただいた「貰い物」だったのですが、もともとは意外な由来があったのかもしれませんね。
店の造りを見ていただければおわかりになるかもしれませんが、かつては意義を失い棄てられてしまった教会だったのです。
今にして思えば本来「黄金の塔」も、最初は異なる目的で建てられた墓場であり、その役割が変じたことでこの教会の意義もなくなったのかも。
そんな教会を、皆様の憩いの場として作り変えたことでこの酒場は生まれたのです。
それに……。
お客様は、ニトの手のものを成敗いたした様子。
かつての都市に代わり、感謝申し上げます。
一度眠りについた者達を強引に起こすなど、あまりにも野蛮。
何か目的があったのでしょうか、流石にやりすぎというものです。
その罪は、いつか報いとなって返るべきもの。
きっと彼らへの救いとなったことでしょう。
よろしければ、一品ごちそうさせてください。
私からの、感謝と祝いの品です。
今までお客様は、肉料理を堪能なさりました。
そろそろ一度、お口直しがしたい筈。
今回の料理なら、ぴったりです。
◆
私はいくつもの国を旅してきました。
そのうちの一つが「カタリナの国」であり、「羊飼いの国」でした。
一方で、時が歪んだ末に「未来の国」を知る機会にも恵まれました。
その国では、不死の宝である「エスト瓶」が使われていました。
鈍い緑色のその瓶は、旅の必需品。
多くの方が、旅のお供とされていました。
ですが、面白いことにその国では鈍い灰色のエスト瓶も飲まれていました。
篝火の熱を、冷たく変えて楽しんでおられたのです。
本来エスト瓶は、旅に疲れた体を癒すものです。
しかし冷たい灰色のエスト瓶は、その力を持ちません。
その代わり、魔術や奇跡・呪術を扱う際の助けとなる力を秘めておりました。
そこに、私は新しい食べ物のヒントを得ました。
実は、先に申した「羊飼いの国」では冷たい氷菓子も食されていました。
「羊飼いの国」では熱い料理が盛んだったこともあり、逆に冷たい食べ物にも需要があったようなのです。
それを、このお店でも再現してみました。
「エストのシャーベット」です。
この食べ物は酒に合う甘さと、そして熱い体を冷やす効能があります。
その効能の中で「未来の国」のエスト瓶の力を再現しております。
お客様が、魔術・奇跡・呪術を扱いになるならば、きっとよい助けになる筈です。
後ほど、お持ち帰りの分をご用意いたしますね。
◆
「黄金の塔」上層は、「名もなき神」の拠点となっています。
もともとは、そこが奴の寝所だったのです。
ですが、ニトの手による姦計故か、目覚めてしまったようなのです。
……尤も、たまたまきっかけがニトの手だっただけで、遅かれ早かれ一度は目覚めたことでしょう。
それだけ、奴は妄執に囚われておりました。
奴は、もう私の友ではありません。
一度は、かつての友を討とうと試みました。
それでも、今一度眠らせることはかないませんでした。
私には、彼を安らかに眠らせる資格というべき何かが欠けているようなのです。
ともすれば、そもそも神族という存在そのものに限界が訪れているのやもしれません。
かつては私の力に葬送の役割がない故と、そう考えておりました。
でも、ここ最近になって、違う理由があると思うようになりました。
奴の目的は、大王グウィンの後を継ぎ、火の時代を継続することです。
故に「王の器」……その資格を有する不死のお客様を狙ったのでしょう。
◆
かつて私と彼は、ロードランの外を旅しておりました。
そこで国を知り、文化を知り、食べ物を知り、人を知った。
だからこそ彼は火を継ぐことを選んだようですが、私の意見は少しだけ異なります。
我々神族に、火を継ぐ資格はきっとない。
たとえ大王グウィンがそれを為したとして、我々がもう一度同じことができるという保証はどこにもないのです。
それは人にも同じことが言えます。
が、貴方方には我々にはないものがあります。
それは自ら選び、掴みとる力。
あるいは、何かを探し求める発見の力。
それが何なのかは判然としませんが、案外「人間性」こそがその答えなのかもしれませんね。
不死のお客様。
どうか、奴を止めてあげてください。
もうこれ以上、戦う必要はないのだと、喝を入れてあげてください。
我々の時代は、もう終わりました。
古竜の時代が終わり、神々の時代が始まったように……今度は、人の時代が訪れます。
この世界を引き継ぐか、それとも新たな可能性を模索するか……いずれにしろ、それを選ぶのはきっと人だ。
人で、あるべきなのです。
◆
行かれるのですね。
どうか、貴方の旅に寄る辺があらんことを……おっと失礼、呪いとは厄介なものですね。
やはりお客様に対しては、こちらの方が相応しいでしょう。
またのご来店、心よりお待ちしております。
貴方様の行き先や使命の果てがどこであれ、お立ち寄りくだされば、またお酒や料理をお作りいたしますよ。
ここはアノール・ロンドの酒場ですから。
・エストのシャーベット
アノール・ロンド市街地で酒場を経営する、名もなき神族による料理。
特別な「工夫」で溶けることがなくなった氷菓子を包んだ、持ち帰り用の品。
魔術・奇跡・呪術の使用回数を回復する。
酒場の店主は、時の歪みの果てで未来を知った。
だからこそ、未だにアノール・ロンドの酒場を経営し続けているのだ。
この世界には神がいて、人がいて、そして友がいたのだから。
・名もなき神のソウル
アノール・ロンドの市街地に建つ黄金の塔上層にいた、名もなき神のソウル。
王の資格を持つ者の出現に呼応してその妄執を強めた、決意の戦士。
名もなき神は、時の歪みの果てで過去を知った。
黄金の塔で新たに目覚めた時、今度こそ火を継ぐと決意した。
この世界にはまだ神がいて、人がいて、そして友がいるのだから。