宇宙警察ブレイバー~地味子の女子大生が深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた~ 作:XX(旧山川海のすけ)
「しばらく俺をここに住まわせてくれ」
行動を共にして欲しいとはそういうことらしい。
彼が自分の言葉を説明してくれたとき、ようやく意味が分かった。
だが
(ちょっと待ってよ)
正直、そう思った。
自分は一応若い女で。
この家はワンルームである。
そこに同年代の若い男を住まわせるなんて。
世間体もあるが、さすがに貞操の危険のようなものを考えざるを得ない。
無論、タケハヤが立派な人物なのは肌で感じ取ったが、それとこれとは別。
間違いがある可能性は十分に考えられる。
しかし……
(宇宙犯罪組織アブダー……)
そのことが頭を過った。
彼らは言っていた。
宇宙刑事に善意を向けた人間は無差別に殺す、と。
だとしたら、タケハヤに居て貰わないと困る。
彼が去った時点で、自分は無防備になってしまう。
それに。
(彼がこの地球で活動するためには、多分拠点が要るはず)
そこに思考が向いた。
ということは。
自分が彼との間違いを恐れて彼の要請を拒否すると、彼が潜伏した先で関わった人が、またアブダーの報復の標的になることも考えられるのではないか?
それはまずいだろう。
よくない。
ここで自分のことを理由にして、他人の迷惑になる行為を選択するのは許されない。
彼女はそう思ったのだった。
故に
「分かりました」
許可を出す。
その言葉にタケハヤはホッとした顔になった。
「良かった。拒否されたら困ったことになると思っていたんだ」
彼の方も、自分の提案があまりにも常識外れであるという認識はあったらしい。
彼女は彼のその言葉に笑みを見せた。
「そうしないとアブダーのアブダノイドが襲って来たときにどうしようもなくなりますし」
笑いごとでは無いのだが、無駄に暗くなってもしょうがない。
なので彼女はそうした。
そんな彼女に
「キミは真面目で勇敢な女性だな」
タケハヤはポツリとそう言った。
彼女はその言葉に少しドキリとした。
なんとなく、行方不明の弟に言われた気がしたのだ。
自分より優秀で、価値が高かったはずの弟に。
弟に認めて貰えた気がした。
なので少し照れが出て
「そんなことないです。他に選択肢が無いからそうしただけで」
少しだけ慌てて。
「とりあえず今日は、冬布団用の毛布を1枚貸しますのでそれで寝ていただけますか?」
そう言った。
冬布団を引っ張り出すために、部屋の押し入れに向かいながら。
これが自分が男性であれば自分のベッドを使わせるのだろうが、さすがにそれは嫌なのでそう言ったのだが。
「いや、そういうものは要らない。宇宙警察証の効果で睡眠時間を1分程度に抑えられる」
タケハヤ曰く、だから寝具は特に要らないとのこと。
凄まじき科学力。
睡眠は脳の修復とか、記憶の再構成、肉体成長など色々重要だと聞いた覚えがあるのだが。
それを1分にまで短縮させるなんて
「それで大丈夫なんですか?」
だから思わずそう訊ねると
「流石に1年以上は続けられない。それ以上続けると深刻な身体異常が起きる」
少し困り顔でそんな答えが返って来た。
やはり科学力で無理をするだけで。
完全安全なシステムでは無いのか。
もし完全安全システムなのであれば、宇宙の社会は夜の概念が無かったりするんじゃないのかと少し考えたが、そういうことではないようだ。
あくまでタケハヤのような、悠長に8時間睡眠を取れない環境に行く人のための特別仕様なのか。
と、そのとき。
「ふぁ……」
思わず、欠伸が出てしまった。
口に手を当てる。
ちょっと色々あり過ぎて興奮が続き。、
眠気を覚えなかったがそろそろ限界らしい。
眠りたい。
「すみません、ちょっと眠りたいんですけど」
「そうか。すまない。存分に寝てくれ。俺は起きてるから」
タケハヤはそう言って、壁際で腰を下ろしてその背中を壁に預けた。
あの姿勢で寝ずの番をしてくれるようだ。
それを見て彼女は
(……泥棒が入って来ても安心かも)
そんなことを頭の片隅で思った。
そして寝る前に歯を磨くために。
浴室と脱衣場、そして洗面台があるスペースに入り込み。
鏡を見た。
そこには目がしょぼついている女……自分の姿が映っている。
飾り気の無いジーンズと無地の黒Tシャツを身に着けた、見るからに彼氏が居なさそうな地味な女。
それが自分である。
髪の毛は肩まで伸ばしているがくせ毛で。
特に染めてはいないが、清楚なお嬢様という風では無い。
顔つきに卑屈さがある気がする。
昔、目付きが暗いと嫌なことを言われたこともある。
双子の弟は自分とは違った、
まあ双子とはいえ、男女の双子だ。
二卵性なのだから、顔はそっくりにはならないのは当然なのだけど。
それでもたまに思ってしまう。
運命は理不尽だな、と。