宇宙警察ブレイバー~地味子の女子大生が深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた~ 作:XX(旧山川海のすけ)
「おい桐谷さん、そろそろ時間じゃ無いのか? 昼から講義なんだろう?」
その声で起こされる。
彼女は寝起きの頭だったが
(あ、タケハヤさんか)
まずそれを思い出し。
午後イチの講義が1時から。
大学までは歩きで10分なので12時40分くらいに家を出ればOK。
そこまで思考が巡り。
枕元の目覚まし時計を確認する。
……時刻は12時であった。
(適当に食べて出ちゃおう)
そう思い、ベッドから起き上がったとき。
彼女はタケハヤが昼食を用意してくれていることに気づいた。
(えっ)
ローテーブルの上に、白ご飯がよそわれたお茶碗と。
具だくさん味噌汁。
そして焼き魚が並んでいたのだ。
(ちょっと待って)
彼女は冷蔵庫に突撃し。
中身を確認した。
すると
「無い!」
そう。
無いのだ。
買い置きしており、焼いて保存していた焼き魚が!
「焼き魚使ったの!?」
勝手に冷蔵庫の中身を使われた。
その事実に裕子は語気を荒くする。
その様子に
「……いけなかったか?」
タケハヤは困惑した表情を浮かべた。
「味噌汁の具材は古そうなものを選んで使ったし、焼き魚なんて足が速いだろ……」
「そんなことない!」
裕子は力説する。
「魚は焼けば1週間は持つ! 野菜も多少痛んでも火を通せば大丈夫!」
……裕子は別に仕送りが足りないわけではないのだが。
値引きされた食材を調理して、食い繋ぐことに情熱を感じていた。
僅か数百円のことではあるが、値引きされた分お金を儲けたような疑似的な感覚を感じるのだ。
「私がッ! 値引きされたサバの切り身を計画的に食べることをどれだけの情熱を……!」
そう、今までの自分への自信の無さ由来の自己主張の小ささが無かったかのように主張する。
タケハヤはその剣幕に一瞬たじろぐが
「いやでも、いつかは食べるわけだろ? そりゃあ計画を狂わせたのは悪かったかもしれないが、これは致命的なやらかしでは無いと思うんだが?」
そう言われ。
彼女は我に返る。
(確かに)
自分はかなり綿密な焼きサバを食べる計画を立てていた。
予定では今日は朝にパンを食べ、明日の朝に焼きサバをレンチンして食べる予定だった。
それが1日早まっただけではないか。
そこに気づき、冷静になった彼女は
「いきなり怒ってごめんなさい」
頭を下げて、タケハヤに詫びた。
タケハヤも
「いやいや、俺も勝手にその食糧貯蔵庫の中身を使ってしまってすまなかった」
居候するわけだから、せめてこのくらいしようと思ったんだ。
彼はそう言って、爽やかに笑った。
そして
「一応、宇宙警察証の機能に現地の電子通貨を偽装する機能があるから、それで使った分は埋め合わせるよ」
そんなことを何のことも無いような風に言う。
(現地の電子通貨を偽装……?)
それはつまり
ナナコンや。ペルペルや。
イコッカみたいな。
電子マネーを偽装してしまうってことだろうか?
(それ、犯罪じゃん!)
そう思ったが。
よくよく考えると……
(現地のお金を全く持たず、任務を果たすのってキツくない?)
そこに思い当たる。
金が無いということは……
食料品を手に入れることも出来ず。
日用品も買えず。
公共機関も使えないということだ。
もしそれが必要になったとき、どうするというのだろう?
日雇いバイトでもしろというのか?
それで宇宙刑事の任務が果たせなくなったら本末転倒ではないか。
それに……
(正直、宇宙人は未開の惑星の経済から宇宙刑事1人分の生活費を摘まむ程度、大したことないと思ってるのかもね)
そう思った。
だったらもう、これは仕方ないのかもしれない。
だけど
「あの、埋め合わせはしなくていいです。これからのタケハヤさんの生活費だけで十分なので」
一応、そう言っておいた。
そうしておかないと、自分という人間が犯罪者に転落する気がしたから。
タケハヤは
「そうか? キミがそう言うなら」
……と、少し不思議そうな表情で言い。
「じゃあまあ、冷めないうちに」
そう言って、自分が作った食事をすすめてくれる。
裕子はローテーブルの前に寝巻のまま正座で座り。
味噌汁を啜り
「あ、美味しい」
そう一言呟いた。