宇宙警察ブレイバー~地味子の女子大生が深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた~ 作:XX(旧山川海のすけ)
食事を終え。
片付けも終えた後。
裕子は身支度を整え、家を出る。
出るのだが……
(隣にタケハヤさんが歩いている……)
なんとなく気まずい。
タケハヤと一緒にマンションの部屋を出るときに、誰かに見られやしないかと気が気でなかった。
一応、自分の家に誰を連れ込もうと文句を言われる筋合いはない。
だけど、女子大生の1人暮らしのはずなのに、男性と一緒に歩いているなんて。
男にだらしない女だと思われる。
それが嫌だったのだ。
なので彼女は歩きながら周囲をきょろきょろと見回している。
その様子にタケハヤは
「……どうした? 急がなければならないんじゃ……?」
不思議そうな視線を送りつつ、そんな能天気なことを言ってくる。
彼女はそれに少し苛立ちを覚えつつ
「こっちも一応、世間体というものがありましてェ」
そう返した。
彼女の言葉の語尾の伸び方に、彼女の苛立ちと何を気にしているのかを察したのか。
タケハヤは
「ああ、他人の視線に関しては気にしなくていい。存在解像度を下げる処理をしているから」
「……存在解像度?」
また知らない言葉である。
歩きながらタケハヤは説明する。
「宇宙警察証の機能で、現在俺は自分の存在感を極限まで下げている。俺個人に注目しなければならない理由がない限り、俺の存在は誰にも気づかれないんだ」
曰く、今のタケハヤは道端の小石のように「そこに居ても誰の目に留まらない存在」になっているらしい。
裕子はタケハヤの存在を気にしないといけない理由があるので影響外だが、通りすがりの人間には「そこに居ても気にならない人」になっている。
だから裕子がタケハヤと一緒にいることを誰かが目撃しても
あの女子大生、男を連れ込んでいる! とは思われず。
気づかれない。
タケハヤの方から話し掛けでもしない限り気づかれないのだ。
(へぇ)
裕子は感心すると同時に
(……また、悪用したら怖いことになりそうな機能だな)
そんなことを考えた。
彼女は思った。
宇宙警察証を誰かが拾って自由に使ったら、やりたい放題になるじゃん、と。
そしてタケハヤの言う通り。
大学まで一緒に歩いて行き、そのまま午後イチの講義が行われる教室に入っても。
誰も裕子にもタケハヤにも何も言ってこなかった。
あの地味な子彼氏連れてる! とか。
あなた大学の人じゃないよね部外者? とか。
彼女が教室の席につき、講義が始まるのを待っているとき。
タケハヤは教室の一番後ろに立ち、待っていてくれている。
誰も気づいていないけど。
そして時計が午後1時を指したとき。
教室の前の入り口から教授が入って来て。
講義が始まった。
この講義は必修だから、適当にはやれない。
裕子は頭を勉強モードに切り替え、講義内容をノートに取ることに集中した。
そしてチャイムが鳴り。
教授が「じゃあ今日はここまで」と言ったので。
彼女は大きく息を吐く。
今日の講義も多分乗り切れた。
テストを落すわけにはいかないから、しっかりと纏めないと……
そう思いつつ、彼女は机に出していた教科書類を、学校鞄に使っているリュックに入れているとき
「きりたーんっ」
甘えた声が聞こえて来た。
同時に彼女は、グッと胃が重くなるのを感じた。
それは派手目のメイクとネイル。
そしてギャルっぽい服装をした女で。
名前は
「講義終わったから、一緒にカフェに行こっ」
彼女は裕子に馴れ馴れしく話し掛けてくる。
カフェに行く前にすることがあるはずなのに。
そう……
彼女こそ、裕子に虚偽の理由で借金を申し込み、計4万円のお金を巻き上げた張本人であった。