宇宙警察ブレイバー~地味子の女子大生が深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた~ 作:XX(旧山川海のすけ)
(やっぱりこの子、借金を返そうとしない)
とても嫌な気分だった。
自分とは違う種類の人間。
裕子はこれまでの人生で、他人からモノを奪ったり、掠め取ったりしたことがただの1度も無い人生を歩んで来た。
それはただ、自分に価値を感じられない気持ちゆえに結果的にそうなっただけかもしれない。
彼女はずっと「自分はもっと良い目を見ていいはずだ」と思ったことが無かったからだ。
でもだからといって、彼女の気持ちが幼稚な意見になるというわけがない。
「カフェ?」
裕子は暮香の言葉を繰り返した。
そして
「どこのカフェ?」
「大学前だけど?」
暮香はキョトンとした表情で、平気な調子でそう言う。
すでに裕子に4万円も借金をしている人間の振る舞いではない。
裕子は彼女に自発的に借金について触れてくれることを願いながら
「あそこ、1回入ると平気で1000円以上飛ぶよね?」
ドリンクに何か食べるものを追加すると、まず1000円が飛ぶ。
暮香は言っていた。
ひったくりに遭い、空き巣に入られて金に困っていると。
それで自分から合計4万借りたのだ。
そんな人間が、カフェなんて生活に関わらないことに金を使う。
金を貸した人間として許せないものがあった。
その怒りが、彼女に言わせた。
「あなた、お金無いんじゃ無かったの?」
その一言で暮香の表情が変化した。
一瞬ぽかんとした表情になった後。
瞬く間に不機嫌な表情になり
「えっ、アタシがカフェに行ったらダメなワケ? お金無い子はお金使っちゃいけないの?」
そんな、問題をすり替える言葉で、非難口調で言ってくる。
不機嫌による圧力を感じる。
だが彼女は
「……お金無いって言って、人から4万円も借金しておいて、言うことがそれなんだ」
怯まなかった。
常識的に考えて、昨日対峙した正真正銘の怪物であるアブダノイドに比べれば、こんなタカリ女など怖くもなんともない。
だから言いたいことが言えた。
すると
「守銭奴! ばっかみたい! お金数えるのが趣味なワケ!? キモ!」
暮香は目を吊り上げ、叫び出す。
周りもザワついている。
止めた方が良いんじゃないのか、と言ってる人間もいた。
だが裕子は一切声を荒げずに
「そう思うならもう近づかないで。貸した4万円はどうせあなたから回収するのは無理よね。あきらめるから」
淡々とそう言いつつ、教室を立ち去る準備を進める。
教科書類を全てリュックに仕舞い、消しゴムのカスを集めて握りしめ、ゴミ箱に向かいながら
「さよなら」
そう一言残し。
彼女は教室を後にした。
後ろの教室では、暮香が暴れている音が聞こえた気がする。
「助けに入ろうかと思ったが、大丈夫だったな」
そして教室を出てしばらく。
周囲に人が居なくなった後。
タケハヤが彼女に話し掛けてくる。
ここでなら、他者にタケハヤの存在に気づかれることが無いから。
確かにあの場でタケハヤが割って入ることは可能であった。
しかし、その場合彼の存在が明らかになってしまう。
大学という施設には事実上誰でも入ることが可能だが、さすがに講義を行った直後の教室に見知らぬ男が突如現れるのは避けた方が良いのは間違いないだろう。
目立つし、噂になる。
裕子はタケハヤに
「お気遣いありがとうございます」
気遣いへの礼を言い
そして
「でも、大丈夫です」
タケハヤの方に振り向きながら彼女は
「アブダーに比べれば、あんな人怖くもなんともないです」
そう言ったとき。
彼女は自然に微笑んでいて。
そして少しだけ自分に自信がついた気がした。