宇宙警察ブレイバー~地味子の女子大生が深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた~ 作:XX(旧山川海のすけ)
(タケハヤさんがいない)
ホンの数日前まで普通に独り暮らしをしていたのに。
タケハヤが玄関ドアを開けて外に出てしまうと。
何だか部屋が広くなった気がした。
同居人がいる状況に慣れてしまって、寂しさを感じるようになっていたのか。
さすがにちょっと早すぎると彼女は思う。
本当にホンの数日なのだ。
一緒に過ごしたのは。
こんな短期間で何故そうなったのか本当によく分からない。
まるで何年も一緒に過ごした相手のようだった。
「数日振りの独りメシかぁ」
ここ数日、食事は一緒に摂るのが普通だったから。
寂しさを誤魔化すようにそう呟く。
多分タケハヤは暫く帰って来ない。
これまで宇宙船に戻れなかったために溜まっていたことを全部片づけないといけないだろうから。
そう思い嘆息し、彼女はスマホの画面を見つめた。
銀色の馬のアイコン。
バルキリオン召喚アプリのアイコンだ。
(どう使うのかな?)
召喚自体はタップするか声で宣言することで呼べるとは言われているが。
でも、実際に呼んだ場合にどうすればいいのかを事前に調べておくべきではないか?
そう思い、彼女はアイコンをタップするかどうかを迷う。
別にバルキリオンを呼びたいわけではない。
使い方の詳細を知りたいだけなのだ。
でも、タップしたら外から窓を突き破ってバルキリオンがここに突入してくるかもしれない。
もしそう来たらどうしようか……?
その不安があって、押せない。
そう思って迷っていたとき。
突然、電話が掛かって来た。
その相手は……
(うわっ)
思わず心でそんな声が出た。
そこに表示されていたのは「
裕子は暮香の番号を着信拒否に設定していなかった。
その理由は「弁明の機会も与えないのはどうなんだ?」と思ったからだ。
多分友人たちは全員暮香を着信拒否にし、LINEもブロックしているはずだ。
それは彼女たちの決断であるから、それが悪いとは思わない。
だが彼女は、弁明があるなら受け入れる隙間くらいは残すべきだと考えた。
しかし……
(どうしよう……?)
本当に電話が掛かって来たら迷ってしまった。
出るべきかどうか。
ここで日和ってしまうのは、我ながら情けないと彼女は思った。
着信コールは続く。
彼女は自分の決断の責任を取ろうと思った。
(もしあの子が誠心誠意謝るならそれを受け入れて絶縁。私に文句を言いに来たならその場で通話を切ればいい)
そう方針を決めて彼女はスマホの通話を繋いだ。
そして
「もしもし?」
すると
『お願い! 助けて! 謝るから!』
その第一声は謝罪であった。
暮香は裕子に謝った。
金を借りたことも、暴言を吐いたことも。
そして嘘をついて彼女を友人のコミュニティから追い出そうとしたことも。
「……何でそんなことをしたの?」
一応第一声が謝罪であったので。
裕子は話を聞く方向に舵を切った。
それを許しと取ったのか
『ちょっとリボ払いでお金を使い過ぎちゃったの!』
そう言って話し始めた。
自分が借金を重ねていた理由を。
どうも暮香はリボ払いに手を出してしまったらしい。
毎月の引き落としが定額になるなら、いくら使っても平気だ。
そう思ったらしい。
リボ払いの定額払いは無限では無いことを理解していなかったのだ。
そして限界が来たとき、一気に請求が来た。
そこで彼女はようやくリボ払いがどういうものかを本当の意味で理解したのだ。
そのために返済する金をかき集めるために、あんなことをしたらしい。
(……流石にそれは無いわ。リボ払いなんて)
聞きながら裕子は呆れてしまった。
だけど彼女はそこには触れない。
どのみち絶縁する気でいたからだ。
それでも
『お願い助けて! 助けてくれないとアタシ自己破産するしか!』
彼女は悲鳴のようにそう言って
自己破産した場合の自分に降り掛かるペナルティについて口にする。
ローンを組めなくなる。
就職に不利になる。
カードを作れなくなる。
……などなど。
(自業自得じゃない)
そう思ったが
「で、借金はいくらなの?」
……一応、訊ねる。
手切れ金代わりにいくらかはあげてもいいかとは思ったのだ。
彼女が愚者なのは間違いないが、この失敗でその後の人生にずっと支障が出るのは少し可哀想かもしれないと思ったのだ。
しかし
『にっ、二百万なんだけどっ!』
返って来たその言葉で
「ゴメン。無理」
さすがに彼女は即断し。
通話を切ってそのまま暮香を着信拒否に設定した。