宇宙警察ブレイバー~地味子の女子大生が深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた~ 作:XX(旧山川海のすけ)
(いくらバルキリオンがあっても、闇金に顔を見られるのは良くないよね)
そう思ったので。
裕子はマスクをしてサングラスをした。
あの世界的な感染症の流行が切っ掛けで、マスクは当たり前にあるものであるが。
サングラスを持っていたのはただの偶然だった。
これは目から入って来る紫外線で目を傷めるという情報を仕入れ、日差しが強い日はサングラスが要るのではないかと思い購入した安物である。
だが、これで顔を隠せるはずだ。
顔の防御を固めた裕子は、スマホをズボンのポケットにねじ込んで外に出た。
3号公園は、裕子の通う大学から一番近い公園である。
設置されている遊具は鉄棒とブランコ、そして滑り台と砂場。
そして公園の奥に電話BOXがある。
電話BOX……携帯電話の普及と共に、姿を消していった設備である。
この公園にはまだこれがあった。
撤去費用がケチられた結果なのか、それとも万一の防犯のためなのか。
よく分からないが、ここにはまだ存在しているのである。
深夜の3号公園には人が居なかった。
暗い公園内には街灯の光が届かず、良く見えない。
公園内に入って暗い中、夜目を利かせるために目を凝らし見回しながら
思った。
(闇金がいないな……)
もしここに闇金が来ているのであれば、公園沿いの道路にハイエースが駐車されててもおかしくないと思ったのだが。
そんなものはなかった。
歩きで来ているのだろうか?
そんな馬鹿な。
人を攫うとか、捕まえるとかするのにアシが無いなんてあり得ない。
裕子は「確かに自分は3号公園と聞いたよね?」と自分の耳に疑問を持ち始めながら
公園中央まで進み出た。
すると
「来てくれたんだ!」
弾んだ声が聞こえた。
暮香の声であった。
その声に「自分の聞き間違いではなかった」ということでホッとするとともに。
怒りが湧く。
もう絶縁したとはいえ。
こんな夜中に電話をしてくるなんて
本当に迷惑な子である。
「五味山さん」
声の方を向き
帰るよ、と言おうとしたとき。
突然、裕子の周囲に紫色に輝く光の檻が出現したのだ。
「えっ」
完全に予想外だったので、マヌケな声が出た。
それがおかしかったのか
「あははははっ!」
暮香は笑い出した。
お腹に手を当てて、本当に愉快そうに。
突然の光の檻による捕縛に、戸惑う裕子は
「どういうこと五味山さん!?」
さすがに語気強く、そう問うと。
暮香は
「えっ、アンタを売り飛ばすんだけど?」
ひとしきり笑った後、そう普通に言ったのだった。
(売り飛ばす……?)
その言葉に、裕子の中には思うところがあった。
(アブダー)
流石に分かる。
光の檻で人を閉じ込めるなんて、今の地球の技術で実現不能だ。
アブダー以外無い。
そんな裕子の様子に自分が優位であると勘違いしたのか。
暮香は語り出した。
「人間を1人300万円で買ってくれるバイトを見つけたんだぁ」
ニヤニヤしながら。
「アンタを売れば、リボ払いの借金を払ってお釣りがくるよね」
そんなことを。
……どうやら。
自分は暮香に「売り飛ばし要員」として呼び出されたらしい。
吐き気がした。
自分の借金返済のために、他人を売り飛ばすなんて。
だから
「……アナタ、どこまで腐ってるの……! 恥ずかしくないの……?」
思わず、言ってしまった。
その言葉に暮香は目を吊り上げる
その表情は怪物のように見えた。
そしてそのまま
「うるさい! お前なんかに何が分かる!」
「私だってキラキラした女子大生ライフを送りたいんだよ! それの何が悪いんだ!?」
「ウチの実家は、冴えないサラリーマン家庭! その貧しさ、惨めさがお前なんかに分かってたまるか! 大した苦労もしてないくせに!」
「勝手に偉そうに喚いてろ! お前は売り飛ばされるんだよ! お前はもうおしまいなんだ!」
……暮香が心に抱えていた闇を見た気がした。
彼女はそんなことを思いながら、これまでを生きて来たのか。
きっと、これまで幸せを感じたことが無かったのでは無いだろうか?
だけど
「……言いたいことはそれだけかな……?」
裕子は落ち着いていた。
自分でも驚くほどに。
タケハヤに与えられたバルキリオンによる安心感と、暮香の醜悪な振る舞いが、彼女から怯えを取り去ったのかもしれない。
彼女はスマホを取り出した。
暮香は嘲る笑みを浮かべ
「馬鹿じゃないの!? スマホなんて使えるわけ……!」
そう言おうとしたとき。
裕子はスマホを掲げ
叫んだ。
「来て! バルキリオン!」
同時に遠くで馬の嘶きが聞こえ
次の瞬間。
闇の中から出現した銀色の
――木っ端微塵に弾き飛ばした!