宇宙警察ブレイバー~地味子の女子大生が深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた~ 作:XX(旧山川海のすけ)
アブダーゾーンは宇宙犯罪組織アブダーが創り出す悪魔の空間である。
アブダーゾーンに入った者は、邪心に満ちた者以外その力を大きく落とす。
およそ3分の1の力しか発揮できなくなる。
アブダーゾーンはそんな、
そんな空間にタケハヤは引きずり込まれてしまった。
(大変だ。助けに行かないと)
だがそう思う彼女の心に、アブダーゾーンという悪魔の空間の恐ろしさが圧し掛かる。
アブダーゾーンでは大きなデバフが掛かるが、タケハヤが装着しているメタルスーツはその機能を全開で使えばデバフ効果を約100秒の間無効化することが可能だ。
だがそれは、可能なだけであるのだ。
100秒以内に倒さなければ、実質こちらの次元の3倍強くなったアブダノイドが敵になる。
勝ち目などあろうはずがない……!
正直恐ろしい。
恐ろしいに決まっている。
できればこのまま100秒以内にタケハヤがなんとか独力でアブダノイドを倒して、アブダーゾーンを破壊して戻ってくることを望みたかった。
だけど彼女は考える。
(私は一緒に巻き込まれなかった)
あのアブダー首領の声から判断するに。
これは全てアブダー首領の考えだ。
タケハヤだけを引きずり込んだのは。
それはつまり
(バルキリオンが一緒に引きずり込まれると、ブレイバーが著しく有利になるから)
そういうことではないのか?
そしてさらにそれは
(バルキリオンが無ければ、おそらくブレイバーは著しく不利になる)
だったら
――もう答えは決まっている!
彼女はバルキリオンを走らせた。
アブダー首領はこう考えたに違いない。
バルキリオンに入り込んだ地球人の女は、きっとブレイバーを助けるために悪魔の空間に乗り込んだりしない。
100秒以内に勝負をつけないと、死が確定する危険な場所になど来るものか、と。
(舐めないで)
彼女は怒りに震えていた。
自分という存在が侮られていたことに。
(思い通りになんて、なってやらないんだから!)
その思いと共に
――彼女は次元の壁を突き破った!
次元の壁をガラスを砕くような音と共に突き破り。
彼女はアブダーゾーンに突入した。
突入と同時に彼女の視界の端に、数字が表示されグングン減り始めた。
アブダーゾーン内でデバフを打ち消していられる制限時間だ。
これがゼロになる前にタケハヤと、ブレイバーと合流し。
そしてアブダノイドを倒さなければならない……!
(どこにいるの……!?)
走りながら彼女はその姿を探す。
アブダーゾーンは採石場のような、石と砂以外何も無い空間である。
ブレイバーの存在はすぐに見つかった。
遠く離れた場所で、ゴリアブダー相手に戦っていた。
見ればゴリアブダーはタケハヤと積極的に戦わず、時間の引き延ばしを狙っているようであった。
その意図するところは一目瞭然だ。
制限時間を過ぎて、アブダーゾーンのデバフ効果が完全に機能することを狙っているのだ。
(させないから!)
彼女は駆け出す。
そしてその
『だああああああっ!』
乱射しながら駆けつける。
そのビームの雨はほとんど無駄に終わったが
「グワッ!」
ただ1発が、運良くゴリアブダーの足を捉え、その動きを鈍らせた。
その隙に彼女はタケハヤに、ブレイバーの傍に到達する。
「桐谷さん……」
ブレイバーになっているタケハヤの声は
彼女がここに来るまでに何を決断してくれたのかを理解したのか。
裕子は
『もう40秒無いです! 決めましょう!』
そんなタケハヤの気持ちを敢えて無視し、そう呼び掛ける。
タケハヤはその裕子の言葉を受け
「……ああ。いこうか!」
ひらり、と。
裕子が操るバルキリオンの背中に飛び乗った。
もう、いくしかない。
『オオオオオオオ!』
雄叫びを上げて裕子が操るバルキリオンは突撃し。
その背に乗るタケハヤ=ブレイバーは
その右手に握った形状記憶超合金ヒヒイロカネで出来た長剣・ブレイバーブレードを変形させた。
長剣サイズから、斬馬刀クラスの巨大剣へと。
「ウ……ウホオオオ!!」
自分に迫って来る斬馬刀を握る人馬一体の鋼鉄の戦士を前にして
ゴリアブダーは背を向けて全力で逃げ出した。
制限時間内に追いつかれなければ勝ちだという考えか。
だが
バルキリオンは瞬く間にゴリアブダーとの距離を詰め
そして
「ブレイバーバルキリースラッシュ!」
バルキリオンに跨り、ゴリアブダーとすれ違いざまに。
ブレイバーが繰り出した巨大剣の胴薙ぎの斬撃が。
ゴリアブダーを背中から胴体を真っ二つに斬り裂いて
「ウホゥ……!」
その最期の呻き声。
その数秒後、上下2つになったゴリアブダーは光の粒子を撒き散らしながら。
2つの大爆発を起こした。