宇宙警察ブレイバー~地味子の女子大生が深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた~ 作:XX(旧山川海のすけ)
「ええと、タケハヤさんには感謝してます」
最初にそのことを伝える。
クシナダと名乗った女性は、裕子に探るような視線を向けていたが
「タケハヤさんがいてくれなかったら、多分私はアブダーにアブダノイドの材料として誘拐されてたと思うので」
最初の最初は巻き込まれただけだったが。
この間の暮香の事件はそれとは別件だ。
あの子は自分をアブダーに300万円と引き換えに売り飛ばそうとしていた。
もしタケハヤからバルキリオンを貸して貰っていなければ、きっと自分は罠に掛けられて売られていただろう。
裕子がタケハヤを褒めたので。
クシナダの表情が目に見えて嬉しそうになる。
(あっ、これは可愛い)
この子はタケハヤが本当に好きなのだ。
それが伝わって来た。
「どうぞ上がってください。タケハヤさんは今、日用品の確保に出てます」
買い出し、とは言わない。
言いたく無かったからだ。
電子マネーの偽装で支払いをするので、厳密には買ってない。
支払いを他所に押し付けている。
個人に押し付けているわけではないが、電子マネーのケツ持ちをしている会社に確実に支払いを押し付けている。
宇宙刑事として活動するためには仕方ないことだと割り切っているが、自分としては「買い物」とは認めたく無かった。
だからそういう言い方になった。
「……失礼します」
クシナダがそう一礼して裕子の部屋に上がった。
そしてクシナダが持っていたスーパーのレジ袋を床に下ろした。
そこで。
裕子はそのレジ袋の中身に初めて気づいた。
そこには……
和牛のステーキ肉。
国産牛のバラ肉。
そして立派な伊勢海老が数匹……
高級食材が山のように入っていたのだ。
(えっ)
流石に引っ掛かる。
(ちょっと待ってよ)
宇宙刑事が生活費を地球の文明の経済から摘まむのはしょうがないこと。
だけど……
そこには何かしら、遠慮が要るんじゃないだろうか?
安い肉なら豚肉があるし。
それより安く、鶏肉がある。
栄養価も牛肉に劣るとも思えない。
なのにわざわざ高級品を選ぶ必要は……
裕子は迷った。
迷ったが……
言うことにした。
「ええと、ごめんなさいクシナダさん?」
「えっ」
彼女は驚いた顔でこちらを見る。
さっきまでは、上げてもらった裕子の部屋をぐるりと見回していたのに。
突然何か詰問口調で呼ばれたので相当驚いているようだった。
その表情に裕子はまた迷ってしまったが。
(今言っておかないと、多分もっと酷いことになる)
そう思ったから。
「宇宙刑事が地球の経済から生活費を摘まむのはしょうがないですが、これは無いんじゃないですか?」
「これの中身全部高級食材ですよ!? 支払いはどうしたんですか!?」
思い切って全部言った。
その瞬間。
クシナダの顔色が曇った。