宇宙警察ブレイバー~地味子の女子大生が深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた~ 作:XX(旧山川海のすけ)
「私に偽装電子通貨で使い込んだ分を補填させてください」
手振りを交えながらクシナダはそんなことを言う。
ようは高級食材を偽装電子通貨で買ってしまった分を働いて稼ぐという事か。
裕子としては
「気持ちとしては分かるけど、それはさすがに」
裕子の一存でどうにかなることではない。
裕子は雇われバイトの身で、クシナダをバイトに雇う権限など無いのだ。
だがクシナダは
「別に店長に頼んでくれとは言ってません。同行して、存在解像度を下げて傍にいます」
存在解像度を下げる……
それはつまり、誰にも気づかれない空気のような存在になるということだ。
それだと単純に頭が2つに増えるメリットがある。
オーダーの聞き逃しが減る。
あと……深夜帯は増えるのだ。
トイレに色々して、零す客。流さない客。
アルコールのせいで常識が欠落するせいであろう。
放置すると間違いなく店のイメージが悪くなる。
とはいえ、そこばかり見ているわけにもいかないし。
そこで存在解像度を下げたクシナダが注意してくれれば、正直非常に助かる。
トイレがアレになってるよと教えてくれれば素早く掃除できるではないか。
「それなら一応やってくれるとありがたいことはありますけど……」
何も言わずに同行を認めると卑怯なので、一応裕子はクシナダに何で役に立てるかは包み隠さずに伝える。
トイレの件はさすがに彼女の顔が強張るのを察したが
「大丈夫です! お役に立てます!」
クシナダはそれでも申し出を取り下げなかった。
(おお……)
正直ここで、裕子はクシナダに大きな好感を持った。
人間、あまり汚物は見たくないものだ。
自分のものでも嫌なのに、ましてや見ず知らずの他人のものなど……
(この人、絶対に良い人だ)
そう確信を持った。
そして2人は自転車に2人乗りで職場に向かう。
本来は道交法違反であるが、存在解像度を下げた状態だと誰も気に留めないので捕まらない。
とはいえ
(本来なら違法なことをやってるんだよね)
そう思うと、何故か興奮してしまった。
自転車に乗りながら、荷台部分に座っているクシナダが
「タケハヤとは7年前に出会ったんです」
自分とタケハヤの馴れ初めを話してくれた。
タケハヤは7年前にクシナダの父親である現宇宙警察の長官に引き取られたらしい。
身寄りがない少年だったそうだ。
そしてそこから義理の兄妹として生きて来て、あるとき自分が男性として彼を愛していることに気づき、今に至る……らしい。
(なるほど。義理の兄妹からの恋愛かぁ)
聞いてて裕子は思う。
(やっぱり宇宙人でもそうなると燃えるのかなぁ?)
一般に恋愛は障害が多いほど。
プレミア度が高いほど。
燃えるとは聞いているのだが。
そんな話を聞きながら、なるべく安全運転で。
いつもより10分近く遅く、職場に到着した。
出た時間に余裕があったので遅刻にはならなかったが、内心少しだけ不安だった。
自転車を指定の自転車置き場に駐輪し、店に入る。
「おはようございます」
業界ルールで22時近いのにおはようございますで入店し。
店のユニホームの紺色エプロンを身につける。
……こうして。
宇宙人の見えないサポート同伴の、呑み屋の深夜帯のスタッフのバイトがはじまった。