深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた件 作:匿名希望
(えっ、どういうこと?)
このマンション、オートロックのはずなのに。
このマンションはエントランスに通じるドアが自動ドアで。
住人以外は通れない仕様になっている。
なのに何で入り込んでいるんだ?
……あの青年は、彼女の部屋の前に居た。
ということは、エントランスの自動ドアをクリアしたということになる。
日中なら分かる。
他の住人がマンションに入るときに忍び込めばいいのだ。
でも、今は深夜だ。
その手は使えない。
あり得ない……
困惑なんてもんじゃ無かった。
彼女はハッキリと恐怖を覚えていた。
なので
「何ですか!? 帰って下さい!」
ハッキリとそう伝える。
会話する気なんて全く無い。
言う通りに帰らなければ、警察を呼ぶ……
そこに迷いなんて無かった。
相手が
「驚かせてすまない。中に入れてくれないだろうか?」
そう言って来ても
分かりました。今開けます。
そんな言葉が出る訳は無くて
彼女はスマホを取り出して、即座に110番をタップした。
そしてそのまま警察に通報しようとしたとき
玄関ドアが開いた。
驚きのあまり彼女の手が止まる。
そして流れるように青年が入って来た。
土足だったが、彼女にそれを咎める余裕は無かった。
鍵を掛けてチェーンまで掛けてあったドアが何故かあっという間に突破され。
侵入者が自分の部屋に踏み込んでくる。
その恐怖は、彼女から一切の抵抗の術を奪っていた。
青年は彼女の手からスマホを奪い
「落ち着いて聞いてくれ」
真剣な声でこう言ったのだ。
「キミは宇宙犯罪組織に狙われている」
彼女はその言葉を受け入れることができなかった。
しかし
スマホを奪われている。
そして今、自分は男性と2人きり。
その事実が、彼女から
「そ、そうなんですか!」
……常識的な反応をする選択肢を奪い去っていた。
この言葉を肯定しないと何をされるか分からない。
ならば、こうするしかないではないか。
男性は自分の名前をタケハヤと名乗った。
身分は
裕司、と名乗ったらどうしようかと少しだけ思ったが、そうじゃなかった。
男性に弟の面影があるのはただの偶然のようだ。
まあ、今はそれどころでは無いのだが。
明らかに異常で危険な存在が、
普通にホラーである。
話を合わせてやり過ごす。
それしかない。
……朝になったら隙を見て逃げ出して、警察に駆け込まないと。
それまでは話を合わせて、相手の怒りを買わないように……
彼女はそんなことを考えながら、さも男性の話に興味があるふうを装って質問をする。
男性に靴をまず脱がせて、そして座布団をすすめ、向かい合って友好的に会話するテイをとる。
「
「地球から10万~15万光年離れた宙域にある天球という惑星だ」
10万光年から15万光年?
何で幅があるんだと思ったので。
「何で幅があるんですか?」
「そりゃあ、宙域自体が動いているからさ。距離に変動があるのは当然だろ?」
……そういえば。
太陽は実は高速で動いており、太陽系という不動のものではない。
何かの本でそういう話を読んだ気がする。
だったら惑星間の距離が何光年クラスで変動があっても別に変では無い。
(どうしよう。おかしい人のおかしい話なのに、妙に説得力がある)
もしかしたらこの人嘘を吐いていないのでは?
そう、頭の片隅で思ったが
(いや、嘘でしょ。あり得ないじゃん)
彼女はその考えをすぐに打ち消した。
ちらりと時計を見る。
現在深夜1時半。
幸い、明日の午前中は講義が入っていないから、大丈夫だけど
(遠いな……夜明け……)
彼女はこの先の見えない戦いを生き抜くために。
必死で頭を回していた。
いつもなら寝ている時間帯なのだが、その眠気を感じないほどに。