宇宙警察ブレイバー~地味子の女子大生が深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた~ 作:XX(旧山川海のすけ)
「出来るの!?」
ちょっと声が大きくなりそうだった。
慌てたが、客たちのカオスは裕子の声を目立たないものにしていた。
ホッとした。
「……出来るんですか!?」
そして小声で言い直す。
すると
クシナダは眼鏡をクイと押し上げながら
ドヤ顔をする。
そして言った。
「私、科学者なんですけど」
……そう。
確か彼女はそんな肩書であった。
裕子は仕事を再開する。
例の男性の背後の空間に、クシナダがいる。
彼女は存在解像度を下げている影響で誰も気づいていないのだが
彼女は空中におそらく立体映像で、半透明のモニタやキーボードのようなものを出現させ、指先を走らせものすごい勢いでキーボードを叩いていた。
裕子もパソコンは使うが、比較にならないほど速いタイピング速度だ。
それに合わせるように、凄まじい勢いでモニターに文字が流れていく。
(すごい説得力。ザ・科学者って感じ)
裕子はテーブルを拭きながらそれをチラ見し、先ほどの「出来ますよ」が真実であると確信を持った。
彼女は出会ったときは色々ポンコツな部分を見せられたが、本職ではとてつもなく有能らしい。
(あの勢いなら数分掛からないかも)
そう思ったとき。
裕子のスマホがブブッと鳴る。
着信である。
仕事中であるのでマナーモードなのだ。
(えっ、ひょっとしてもう終わったの!?)
タイミング的に裕子はそれはクシナダからのものと思い。
そのとき裕子は空いた料理の皿を運んでいる最中で。
驚いて危うく皿を落としそうになった。
慌ててあの男性の席に視線を向けると、クシナダはモニターとキーボートを消してこっちに向かって来ていた。
そして裕子に
「さあ、お仕事が終わったらメールを確認しましょう」
そう、囁いた。
「桐谷さん、もう上がっていいよ」
そして深夜1時。
客が居なくなった店内で、裕子がテーブルをアルコール消毒するために拭いていると。
厨房の方から店長がそう彼女に言って来た。
店長としては、女子大生を引き留めてその後何かしらの事件に巻き込まれたら困るからそう言っているのかもしれない。
「お疲れでした店長。ありがとうございます」
裕子はそう言って頭を下げ、スタッフルームに飛び込んだ。
手早くユニホームのエプロンを脱ぎ、ロッカーに入れ。
そして荷物を装備して。
彼女たちは外に出る。
通常ならそのまま帰るところであるが……
「見るよ」
「はい」
2人は身を寄せ合って、1台のスマホの液晶パネルに注目した。
メールを確認すると、受信BOXに1通のメールが届いている。
裕子はそのメールを開いた。
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【件名】「永劫混沌王杯」特別招待のご案内
拝啓平素は天野銀行の事業に対し、格別なるご理解と多大なるご出資を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、かねてよりご要望をいただいておりました、至高の娯楽――「特権階級の愉悦」をご賞味いただく舞台の準備が整いました。
その舞台は、ご承知の通り横浜から混沌の海を進む「エターナルカオス号」でございます。
今回も、全国から集められた生きている価値の無い人間未満の多重債務者共が、自らの命とわずかな希望を賭けて決死のギャンブル大会に参加致します。
そんな愚者どもを安全に、一方的にゲームで敗北させ、絶望の涙を流させるのは選ばれし皆様だけの極上の愉悦でございます。
今宵も多数のゲームと、皆様だけにお渡しするチートをご用意致しました。
是非ご友人もお誘い合わせの上、愚者の失笑物の人生を踏みつぶし、得点とし、多額の賞金を手にする愉悦をお楽しみください。
なお、本メールはセキュリティの都合上、高度な暗号化が施されており、受信された端末のみが「乗船証」となります。
受付にて本画面をご提示ください。
皆様のご乗船を、心よりお待ち申し上げております。敬具
天野銀行特別興行統括部
募集要項
日時: 〇月×日 深夜2時(厳守)
集合場所: 横浜港B地区 第4埠頭 倉庫街(詳細は添付のマップをご参照ください)
持ち物: 本メールが表示された端末。
備考:現地集合でございます。