宇宙警察ブレイバー~地味子の女子大生が深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた~ 作:XX(旧山川海のすけ)
メールを確認し裕子は思った。
まずこのメールは金を送れとはやっぱりどこにも書いてない。
〇月×日の深夜に……横浜港に来いとだけ書いている。
詐欺と考えるにはあまりにも効率が悪い。
人を集めて、そこで集金するくらいならここで金を要求すれば良いではないか。
それに、横浜までの交通費が出るとはどこにも書いてない。
いや、多分出ないだろう。
現地集合なのだから。
だから逆に「本当のVIP向けの闇賭博案内状ではないか?」と思ってしまう余地がある。
詐欺にしては効率が悪過ぎるから。
そして主催が天野銀行……
業界最大手のメガバンクだ。
そういう金融業はギャンブル漫画では闇賭博の主催者役に回っているケースが多い。
無論フィクションの話だが、本物と疑う場合は説得力の一部になる気がする。
あと多分……
このメールを警察に持っていっても何の意味も無い気がする。
警察もこんな「漫画の読みすぎだ」という内容のメールは相手にしないだろう。
冷静に考えるなら「そんなこと現実にあるわけない」その一言なのはその通りなのだし。
いくらなんでも多重債務者を大量に破滅させて失踪させたら大問題になるだろう。
しかもそれを定期的にやるなんて無理があると思う。
日本の社会制度はそこまで甘くないはずだ。
それに主催者名が書いてある。
もしこのメールの後、多重債務者の大量失踪が相次げば大問題になる。
変なメールが確認された後、その通りのことが起きてるぞ、と。
天野銀行さんちょっと話を聞かせてくれ、と。
ならば……
「クシナダさん、このメールに書かれている場所に行ってみない? アブダーの作戦かもしれない」
裕子は一緒にメールを読んでいたクシナダにそう呼び掛ける。
クシナダは頷き
「ええ。確認する価値はあると思います……〇月×日は……来週末の金曜日ですね」
そう真剣な顔で答えた。
〇月×日がやって来た。
この日はバイトのシフトを入れることを避けた。
店長に頼まれそうになったとき
「すみません。その日は用事がありまして」
と頭を下げた。
店長は「桐谷さんにはいつもお願いしてるからいいよ。デートかい? 楽しんできな若いんだし」と言ってくれた。
(今までバイトのシフトを一向に構わんッッって言って来てて良かった……)
裕子は少しホッとした。
いつでも辞められるようにするために、敢えて可能な限り要請は受けるようにしていたのがここで効いてくるなんて。
(真面目にやってて良かった)
そう心から思った。
「で、どうやって横浜まで行くんですか?」
日没後しばらく。
深夜帯になりそうな時間帯。
裕子はマンション傍の道路で、周囲に人が居ないことを確認しながらそうクシナダに訊ねる。
裕子は最初、新幹線を使って横浜に行くことを想定して、出費を覚悟していたのだが
クシナダが「その必要はありません」と言うのでそれに従った形だ。
クシナダは裕子に得意げな表情を浮かべ
「まあ、見ていてください」
そう言い。
突如、またあの立体映像のモニタとキーボードを空中に出現させ。
超速タイピングを披露する。
すると……
「わ」
裕子は口に手を当てた。
こんなもの驚くに決まってる。
一瞬の輝きの後。
突如彼女らの前に、バイクに似た乗り物が出現したからだ。
違うのは、車輪の代わりに別のものがついていることだった。
それはちょうど車輪を縦から横倒しにしたような、円形の装置で……
「これは反重力高機動バイクです。これなら横浜まで10分くらいでひと飛びですよ」
ふふん、と言いたげなクシナダ。
進んだ技術を未開人に見せつけて、気分がいいのかもしれない。
クシナダはそのまま慣れた仕草でその「反重力高機動バイク」に跨り。
「さあ桐谷裕子さん。後ろの席に乗ってくださいな」
そう呼び掛ける。
裕子はその言葉に従い、おずおずと後ろに乗り。
クシナダの腰に掴まるように抱き着いた。
クシナダの身体は科学者というには引き締まっていて。
普段からかなり鍛えているように感じられた。
彼女は富裕層らしい。
富裕層あるあるで、普段から十分な運動習慣があるのかもしれない。
「では、いきますよ!」
クシナダは裕子が後ろに乗ったのを確認した後。
反重力高機動バイクのグリップを捻ってエンジンを起動させ
反重力高機動バイクはふわり、と空中に浮かび上がり。
瞬く間にスルスルと裕子の住んでいるマンションより高い位置に昇っていき……
「うお」
裕子のその声は遅れて聞こえた。
空飛ぶバイクが超高速で横浜方向にカッ飛んで行った数瞬後に。