宇宙警察ブレイバー~地味子の女子大生が深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた~ 作:XX(旧山川海のすけ)
(すっごい速い)
反重力高機動バイクのスピードは体感新幹線くらいある気がした。
いや、それ以上かもしれない。
だが、風で吹き飛ばされるようなことは無く。
このバイクの搭乗者は球状のバリアで守られていた。
なのでその速度は、薄青いバリアの外を流れる景色で察するのみだ。
思わず裕子は訊ねた。
「これ、どれぐらいの速さなの?」
「ギリギリ音速に届かないくらいです」
(すご……)
落ちたら死ぬな。
色々な理由で。
裕子はそう思い、クシナダに抱き着く力を強くした。
ここが生命線だ。
そして数分後。
「着きました。横浜港です」
シュウウウ、という音と共に減速し。
停止し。
人気の無い暗い場所に降り立ち。
クシナダは出したときと同様に、立体映像のキーボードでコマンドを打ち込んで、反重力高機動バイクを消してしまう。
なんとなく
「そのバイクどこから出してるの?」
そう訊ねると
「収納用に設置している別次元ですね」
そんな返答が。
四次元空間とか平行世界とか、そんな感じだろうか?
正直ちょっと興味があった。
しかし
(今はそれどころじゃないか。遊びに来たわけじゃないし)
そう思ったので彼女はそれ以上訊くのはやめておいた。
裕子はスマホで現在時刻を確認する。
時刻はまだ23時になっていない。
メールにおける集合時間まで3時間以上ある。
(もうちょっと遅めに出た方が良かったかも)
タケハヤはまだ来ていない。
来るのが速過ぎたのだろうか?
集合場所に向かって23時を過ぎた後。
タケハヤがやって来た。
「悪い。待たせた」
「タケハヤさん」
「まだ大丈夫です」
小声で挨拶し合う。
そこはメールに書いている通り、夜の船着き場。
闇の奥に立ち並ぶ倉庫群。
それはまるでゴーストタウンのような雰囲気がある。
倉庫の壁面のコンクリートは痛んでいて、一部鉄骨が見えている。
その倉庫の向こうに存在するはずの夜の海に視線を向けると、海は見えなかったが磯の香りがした。
遠くに観覧車やベイブリッジの明かりが見えて、まるでそちらは別世界に見える。
そんな中、その岸壁に横付けされている船がある。
『エターナルカオス号』
闇色に塗られた巨大な貨物船。
客を乗せる船には見えない。
船体に英語で船名が書かれていなければ、おそらく気づかなかったはずだ。
その船には桟橋が渡されており大柄な黒服の男がいて。
時折やってくる人間を中に招き入れている。
その際にスマホを見せている気がした。
それを見て
「深夜2時じゃないんだな」
「出発がそうだってことじゃないでしょうか?」
タケハヤとクシナダがそう言葉を小さく交わす。
それについては同感だった。
多分深夜2時まで外で待たせると、嘘がバレる可能性が高くなるから、こうして早くから船を解放しているのかもしれない。
(とりあえず……)
こうしてタケハヤと合流できたのだ。
彼女らは互いの顔を見て頷き合い。
そして
裕子はスマホに例の謎メールを表示させて。
おそらく入場受付を行っているであろう黒服にその液晶画面を見せた。