宇宙警察ブレイバー~地味子の女子大生が深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた~ 作:XX(旧山川海のすけ)
「あっ、VIPの方々ですね」
裕子のスマホの画面を見て。
黒服の男は丁寧な口調でそう言った。
「本日はご足労感謝致します。それでは選ばれし者のみに許されている王者の
そう言いながら男は足元の革鞄から茶封筒を3つ取り出し、手渡して来る。
「これは?」
「チートの説明書です」
(大丈夫かしら……)
ひょっとしたら毒みたいなものが仕込んであるかもしれない。
そう思ったが
(万一のときはクシナダさんがなんとかしてくれるはず)
そう思ったので。
彼女に視線を向けて
目で「開けて良いですか?」と言う。
すると彼女は頷いた。
なので裕子は代表するつもりで封筒を開けてみると
中には1枚のA4の紙が入っていて
そこには
船内の別室で、AIが装備されたチート眼鏡が渡されること。
その眼鏡を掛けると骨伝導で指向性音声での指示が出たり、その他特殊機能を使えるらしいこと。
その内容は……
例えば麻雀では自分のツモ予定の牌の種類、対戦相手の当たり牌が全部分かってしまったり。
ポーカーや大富豪では相手の手札を丸裸にでき。
双六ゲームでは賽の目を任意で弄ることができる。
読んでて思う。
(どんなんよ。AIってつけておけばなんでもアリだと思ってるでしょ)
これは多分嘘だな。
裕子は直感的にそう思った。
ただ、そんな能力があったらそのギャンブルでかなり有利に立ち回れる。
そう思えることが書かれている気がした。
だからまあ、ここで本当に闇のギャンブル大会が行われていると思っている人間にしてみれば
ええっ! こんなことまでできちゃうのかよ!?
……と、テンションが爆上がることになるだろう。
そしてニコニコ顔で船に飛び込むことになるはずだ。
夢のチート眼鏡に目が眩み、そこに至るまでの道に仕掛けられた罠に気づかずに。
(罠として考えたら相当怖いよね)
そう思いつつ裕子は説明書を畳み
「船に入れてください」
そう、黒服にお願いをした。
その声は怯えが無くてかなり落ち着いていて。
自分でも意外だった。
それくらい、タケハヤやクシナダを信頼しているということだろうか?
黒服に桟橋を通らせて貰い。
船内に入る。
別室がどこにあるという話はされなかったが……
なんとなく、それが何故なのかを予想しながら、3人は通路を進んだ。
まるで飾り気の無い金属製の通路を。
すると奥に金属の扉があり。
開けて中を覗くと……
(誰もいない……?)
そこはだだっ広いホールのような部屋で。
誰も居なかった。
テーブルや麻雀卓のようなギャンブル道具も無い。
いや、正確には数人ヒトがいた。
奥に背広を着た、ギャンブル大会の主催者と思しき人間がこちらを見て立っている。
おそらくここに来た人間は、この部屋の異様さで混乱してしまい。
訊きに行くはずである。
ここで大会をするんですよね? 別室ってどこですか? と。
何故なら思考に警戒というものが書き込まれていないから。
ここは自分たちにとってはただのゲーム会場で、自分は騙されるのではなく騙す側だと思い込んでいるから。
それが獲物を捕食するための仕掛けであるという可能性を考えもせずに。
(いつ襲われてもいいようにしないと)
警戒した彼女はスマホを起動させる。
すると……
そのとき気づいた。
なんと、スマホの通信が切断されていることに。
「大丈夫。呼べますよ」
不安になったから小声でタケハヤとクシナダにそのことを伝えると。
確かにこの場所はネットへの接続が切断されているようではあるが、それはバルキリオンの召喚において何の障害にもならないとのことを言われた。
(バルキリオンとの通信はネット通信環境とは関係無いのか)
当たり前かもしれないが、そこを直接言語化して伝えられ、彼女は少し安心を得る。
(よし)
そこで彼女は気合を入れた。
あそこにいる人物に接触しようと。
なので
「タケハヤさん、お願いします」
彼女たちはタケハヤを先頭にして、その後ろに裕子とクシナダがついていく形でこのホールの中に入った。
万一を考えるとこの陣形であろう。
そして彼らは
「お前たちは……!」
「あんたは……!」
「にいさん……!?」
――そこで。
思いがけない再会をすることになる。