宇宙警察ブレイバー~地味子の女子大生が深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた~ 作:XX(旧山川海のすけ)
(次元波動砲バルキリーカノン……!?)
ブレイバー=タケハヤが口にしたその兵器の名前に。
彼女は「なんかいける気がする!」という気持ちが湧き上がる。
名前だけで何とかできそうな気がした。
『タケハヤさん! それは一体どういう兵器なんですか!?』
興奮のあまり思わず彼女は食い気味で訊ねてしまう。
するとタケハヤは彼女に
「……正直、キミに相当負担が掛かってしまう武器だが、堪えてくれ」
ものすごく、申し訳ないという気持ちが籠った言葉でそう返して来る。
(えっ)
その言葉にさすがに裕子は血の気が引いた。
『それはどういうことですか……?』
若干声に怯えが入る。
そんな彼女に
「桐谷裕子さん。次元波動砲バルキリーカノンは……」
クシナダが説明する。
「バルキリオンに合一化している知的生物の精神エネルギーを砲弾として撃ち出す、次元波動兵器です」
その兵器の正体を。
(えっとつまり)
『……私の精神エネルギーを撃ち出すんですか?』
「そうです」
裕子の震え声の確認を、クシナダが即座に肯定する。
彼女は続けた。
「知的生物の精神エネルギーは瞬間的に無限大に拡大する凄まじい爆発力があるんです。それを撃ち出し、対象を破壊する……宇宙戦艦すら、一撃で堕とす破壊力があります」
(無限大の爆発力……)
バルキリオンの中で、裕子は思わずゴクリと唾を呑む。
全く未知の話だが、彼女はその話に大きな興味を持ち。
同時に
(やってやろうじゃないの!)
そう思った。
タケハヤは負担と言った。
つまり使ったからと言って命が無くなったり、精神に異常が起きたりはしないのだろう。
もしそうなら、彼はそう言っているはずだ。
自分を騙し、都合よく使おうとはしない……
そういうタケハヤへの信頼が、彼女にはあった。
『囚われた人は助けられるんですか?』
だから彼女はその部分だけを確認した。
気にしたのはそこだけだったから。
それに関しては
「それは大丈夫。私が攫われた人々がいる場所をスキャンして、そこに撃ち込みますから……」
タケハヤではなく
「アブダノイドを貫いたときにあなたが救ってください」
クシナダが代わりに返答をした。
「バルキリオン! シューティングフォーメーション!」
ブレイバーがキレのある動きと共にそのコードを叫ぶ。
その瞬間。
バルキリオンが変化を開始する。
宙に浮きあがり、変形していくのだ。
(おおおお……)
その4本の脚が折りたたまれ、頭部が真っ二つに割れて左右に開き、中から砲身がせり出してきて……
その間、僅か数秒。
変形が完成し、その場に巨大なレーザーキャノンのようなものが出現していた。
これが次元波動砲バルキリーカノンである。
その巨大レーザーキャノンを、ブレイディとブレイバーが2人掛かりで担ぎ上げ、遠くの空を飛ぶバリアブダーにその砲口を向ける。
そしてクシナダ=ブレイディが鋭く言った。
「桐谷裕子さん! エネルギーチャージを開始します! アブダーの企みを絶対阻止すると心で強く思ってください!」
心で強くアブダーを否定する。
それは精神エネルギーを爆発力に変えるこの兵器では必須のような気がした。
(アブダー……!)
奴らは人を自分たちの商品の材料にするために拉致することを繰り返している。
これまでに、一体何人の未開の惑星の知的生物が奴らに誘拐されたのか。
そしてその後人格を破壊され、なりたいはずもなかった殺戮マシーンの知性にされてしまったのか。
許せない……!
彼女はそのとき、自分の弟のことを思った。
中学のとき、姿を消してしまった弟のことを。
響き渡るバルキリーカノンの機械駆動音。
それは内部のエネルギーの高まりを示していて。
裕子のアブダーへの怒りが最高潮に達した
その瞬間だった。
「精神エネルギーレベルがマックスレベルに到達しました! 桐谷裕子さん! 人質の座標を送ります! 任せましたよ!」
鋭いクシナダの言葉。
そして続いて
「バルキリーカノン……発射ァァ!!」
タケハヤのその声と共に。
轟音が響き渡り
バルキリーカノンの砲口から蒼白い巨大な光弾が撃ち出された。
そしてその光弾は
その内部に、女性の姿があるように見えた。
(すごい。全部分かる)
バルキリーカノンの砲弾内部に、裕子の意識があった。
彼女はクシナダが発射寸前に送って来たデータを全て把握していた。
それによると、人質……つまり攫われた人々はバリアブダーの中心部に集められているらしい。
その場所は手に取るように分かった。
バルキリーカノンの砲弾と化した裕子は、ぐんぐんバリアブダーとの距離を詰めていく。
接近していく。
「バリバリバリ~!」
バリアブダーは気づいていない。
顔をこちらに向けてこない。
そしてそのまま
砲弾はバリアブダーのどてっ腹に突き刺さり、その巨大な体を抉り消滅させながら突き進む。
人質のいる部分にはすぐに到達した。
彼女は手を伸ばし。緑色に輝く球に見えるそれを大切に両手で包み込む。
そして
「バリ……?」
巨体を貫通し、突き抜けた裕子は背後を振り返った。
そこには……
腹から背中にかけて、巨大な風穴を開けた船の形に似たアブダノイドの姿。
アブダノイドは今気づいたらしい。
自分がたった今、処刑されたことを。
身体を捩じって、アブダノイド・バリアブダーは顔をこちらに向けた。
船首部分にバリ島の民族的仮面に似た顔があった。
バリアブダーの名前は、ここからも来ているのかもしれない。
その顔が、叫んだ。
「バリィィィィ!!」
その瞬間だった。
バリアブダーの巨体が
激しい光の粒子を撒き散らしながら大爆発を起こした。
そしてアブダーゾーンが消滅し。
元の次元に戻って来たとき。
裕子は立ち上がるのも億劫なほど、疲弊していた。
バルキリーキャノンの砲弾になるということはこういうことなのか。
精神的にメチャクチャな疲労を感じ、あらゆるやる気が著しく低下する。
精神エネルギーの爆発力を武器化する兵器なだけに。
彼女は深夜の横浜港の岸で、蹲る。
(なんかもう、何にもしたくない)
周囲には気絶した男女が沢山転がっていた。
あんな怪しさ満点のメールでも、対象を日本全土に広げれば、このくらい確保できるということなのか。
そんなことを考えるのも億劫なのだが、ついつい考えてしまう。
そんな彼女に
「……ご苦労様でした」
クシナダが手を差し伸べてくる。
そして
「本当に助かりました。……あなたがこの人たちを救ったんですよ」
その声は感謝と称賛に満ちていて。
それを自覚したとき
「……家に送って欲しいな」
裕子は、クシナダの手を取る気力を取り戻していた。