宇宙警察ブレイバー~地味子の女子大生が深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた~ 作:XX(旧山川海のすけ)
第41話 抱えている疑問点
「桐谷裕子さん、これは買わないんですか?」
夕刻にクシナダとスーパーに買い物に行き、買い物かごを片手に安いものを探していたら。
クシナダがワゴンのようなものに乗せられた見切り品の山を指差した。
それを一目見て裕子は思う。
(いや、無理でしょこれは)
それは明らかに痛み始めた野菜類である。
萎びたセロリ、新鮮さが失われたピーマン。
他にも色々あったが、明らかに「もう生ごみ」というレベルの見切り品である。
スーパーにはたまにこういう商品があるものだ。
「いや、これはアウトです。見た目って大事ですよ……調理したら食べられるのかもしれませんけど」
そう裕子が否定すると。
クシナダは
「んー、そうなんですか。じゃあ私が買いますね」
そんなことを言い、自分の買い物かごに放り込む。
(えっ、買っちゃうの?)
そう思い、こっそり
「でもそれ、ほとんど駄目になってると思うんですが」
そう囁くように言うと、彼女は得意げに
「フードキューブに加工すれば、多少腐敗している程度なら食べられるものになりますので」
眼鏡クイをやりながらそう言った。
で、実際。
自宅マンションに戻って来て、クシナダが例のモニタとキーボードの立体映像のようなものを出して。
彼女がキーボードのようなものを叩いたら。
白い樹脂製のボディの、単身者用の電子ジャーみたいな謎家電が召喚され。
彼女が
「見ててください」
そう言い。
さっきスーパーで確保して来た廃棄寸前の見切り品の包装を剥がし、その電子ジャーめいた謎家電に放り込んでいく。
そして蓋をして。
スイッチを押し。
3分後。
チーン、と言う音がして。
蓋を開けると。
何だか、2センチ角の緑色の立方体が多数入っていた。
これがフードキューブなのか。
「できましたよ。どうぞ食べてみてください」
クシナダがそう言ったので、裕子は恐る恐る、1つ手に取り。
口に入れた。
そしてかみ砕き、飲み込む。
味は……
「あんまり美味しくないけど……食べられないほどじゃ無いですね」
そう。
食べられないほどではない。
例えるなら味のついていない麩菓子。
そんな感じで。
甘くもなく塩辛くもなく。
美味しいと思えないだけで、食べられないわけではない。
それに関してクシナダは
「食べ過ぎを防ぐために、そういう味なんです。元々、手軽な栄養管理をするための技術なので」
……とのこと。
どうも宇宙でも暴飲暴食で大変なことになる人はいるらしく。
そんな人が、手軽に自己管理をするために開発された技術だとか。
で、副産物的に「材料はある程度痛んでいてもOK」な仕様になったんだとか。
横で聞いていて裕子は「へー」と思うと同時に。
思った。
あのとき……
横浜港で、タケハヤとクシナダの義兄であるムラクモという人物の複製人間であるムラクモツヴァイと出会った。
そしてムラクモツヴァイは本来オリジナルしか出来ないはずの電装を行い。
ブレイバーキラーに変身した。
彼女らはそれを「どうやって胎紋認証を突破したんだ!?」と狼狽えていた。
彼女らの中ではそれはあり得ないことらしい。
それをムラクモツヴァイは嘲笑い
この世にはクリアできない鍵は無い。
そう、言い放った。
……ここで裕子は思ったのだ。
何故ふたりは考えなかったんだろうか、と。
それは……
(ムラクモツヴァイが……ムラクモ本人なんじゃないかって)
複製人間であること自体が嘘。
その可能性だ。
でもふたりはムラクモツヴァイは複製人間であることを疑わなかった。
分からなかった。
普通クリアできない本人認証を突破したなら、そう思うのが自然なんじゃないのだろうか?
分からない……
でも彼女らは。
このフードキューブのようなものを作ってしまえる、自分たち地球人より遥かに進んだ文明を持ち、様々なことを知っている宇宙人。
そのふたりがそう思うのなら
(何かそういう結論になる何かがあるんだろう……きっと)
そう思ったので。
訊ねることはしなかった。
あと、訊けば怒らせるかもしれないという予感があったのもあるのだが。