宇宙警察ブレイバー~地味子の女子大生が深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた~ 作:XX(旧山川海のすけ)
「キミたちは本当にやる気がないねぇ」
あるとき。
必修科目の講義で。
黒板に向かっていた教授……白髪の年配男性……が振り返り、いきなりそんなことを言った。
いきなりなんだ、と思って裕子の板書を写す手が止まる。
すると教授は少しバツが悪い顔をして
「ああ、すまない。今のは主語がデカかった。実は先日ねえ」
そう言って謝罪して、雑談をはじめた。
裕子は知らなかったのだが、どうも先日この講義の追試が行われたらしい。
今年では無く、去年分の、だ……。
この教授の講義は、この大学のこの学部で一番難しいと言われており、入学時の新入生オリエンテーションでも言われた。
毎年この教授の講義で単位が取れず、進級ができなくなる学生がボロボロ出るから、と。
なので裕子は言われた通り、板書を全力で写し、教授の話で重要そうな部分はなるべくメモして来た。
自分の能力を100%出し切る勢いで。
だが……
あれだけオリエンテーションで言われたにも関わらず、この教授の講義を適当に受けて。
結果、試験で合格点が取れず、落第してしまう学生がいるらしい。
まあだからこそ、オリエンテーションで言っているんだろうが。
言わないともっと出るからだ。
教授は言う
「僕の講義が分かりにくいから合格できない、俺が落第したのは教授のせいだ、と怒鳴り込んで来るのがいたんだよ。まったく」
完璧に呆れているというか……嫌悪感すら滲ませた声であった。
教授は言った。
「僕の講義なんてね、キミたちが将来目指す場所では
言い方に棘がある。
だいぶ教授は腹を立てているようだった。
そのまま続ける。
「僕の講義は板書を全て写し取って、僕が重要だって言ったことを全部メモして、それを丸暗記できれば絶対合格できるんだから」
確かこの講義がスタートするとき。
第1回目に教授はそんなことを言っていた。
だから裕子はその通りにしているわけだが。
怒りが収まらないのか教授はさらに続ける。
「その程度のことができないでどうするの? 全く、自分の努力不足を僕のせいにしないで欲しいねぇ」
裕子は内心、それは教授の問題であってこっちは知らんがな、と思ったが。
口には出さない。
だけど教授は最後にグチだけでなく
「言っておくけどね、この学校を卒業したらもう機械工学の勉強をしなくていいなんてそれは大間違いだからね?」
教育者としての忠告めいた話をした。
それは研究者の人生の話で……
「研究者ってのは、日常的に最新の技術書を自腹で購入して読むんだよ。生涯勉強! 肝に銘じておくんだよ」
とても厳しい話であった。
(技術書か……)
そして裕子は。
大学の講義が終わったので。
なんとなく足を運んだのだった。
この街で一番の大型書店であるアマノドー書店に。
アマノドー書店は大企業グループである天野グループ傘下の書店で。
ここに来ればそれが買える本であるなら手に入らない本は無いと言われていた。
本棚が無数に立ち並び、その傍に何台かパソコンが置いてある。
本の検索サービスである。
彼女は
(何か1冊、技術書を買ってみようかな)
そう思い、あの教授の講義で出て来た用語に関する本を検索で探した。
すると1冊、ちょうどいいものを見つける。
『最新の車載基盤』
値段は3000円。
手頃である。
これにしようと思った。
「ええと……Mの78番棚……」
表示されている棚番号を呟き、探す。
場所はすぐに見つかる。
それは平積みの本ではなく、棚差しで。
1冊しか無かった。
(あっ、これだ)
そう思い、彼女が手を伸ばすと。
別の手がその本に一足先に伸び
サッと抜き出してしまう。
(えっ)
同じ本を狙っている人が居た。
その偶然に驚きながら
その手の主を見ると。
向こうもこっちに気づいた。
その手の主。
それは男性で。
それは八重歯がちょっと目立つ感じの、裕子より年上の……
どう見ても社会人の男性であった。