宇宙警察ブレイバー~地味子の女子大生が深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた~   作:XX(旧山川海のすけ)

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第43話 企業研究員の蓮田氏

「あっ、ゴメン。キミもこの本が欲しかったのかい?」

 

 その若い男性はそう裕子に申し訳なさそうな顔をする。

 裕子は

 

「いえ、別にこの本である必要は無いんで」

 

 両手をぶんぶん振って「気にしないで欲しい」という意志を示した。

 自分はただ、教科書ではなく技術書を読むという経験をしたかっただけなのだ。

 それによく考えてみれば、ひょっとしたら図書館に行けば事足りるのではなかろうか?

 そんな思いすらある

 

「ええと、お兄さんは社会人の人ですよね? だったら仕事目的ですよね? だったら別にいいです」

 

 気にするな、という意味で必死で本を譲る意志を伝えた。

 すると

 

「ああ、助かる。どうしてもこの本が欲しくてね」

 

 若い男性はあっさりと裕子の言葉を受け入れて、本を手にレジに向かっていった。

 裕子はホッとして、だったら別の技術書は無いかと棚を探す。

 

 さっきも言ったが、別にあの本である必要は無いのだし。

 

 裕子は棚を探し、あの本とは別の「最新の基盤はんだ付け事情」という本を手に取る。

 まあ、これでもいいだろう。

 値段も大差無かったので、猶更そう思う。

 

 そしてその本を持ってレジに向かうと。

 あの男性がレジで支払いを済ませて店から出ていくところであった。

 

 裕子と目が合う。

 

 その男性は

 

「えっ、その本で良いの? この本とは微妙に内容が逸れると思うんだけど?」

 

 裕子の持っている本のタイトルを見て、彼はそう言った。

 裕子は愛想笑いを浮かべ

 

「いえ、実は今日講義で教授に技術書の話をされたので、自分で買ってみようかなという思い付きなんです」

 

「あっ、じゃあキミは機械系の大学行ってるんだ?」

 

「はい。一応工学部の精密機械科です」

 

「珍しいね。リケジョってやつか」

 

 裕子の話を聞いた男性は楽しげで。

 少し考える素振りを見せた。

 

 そして

 

「あー、うん」

 

 少し探るような目で頬を指で掻きつつ彼は

 

「……嫌なら別に良いんだけど、同じ理系の人間、しかも学生から本を掻っ攫ったことに少し負い目を感じるんだ」

 

 で、おずおずと

 

「このビルの1階にあるコーヒーショップで、コーヒーを奢らせてもらえないかな?」

 

 お茶に誘われた。

 

 

 

「へー、企業で研究員されてるんですね」

 

「そうだね。だからキミの先輩になるのかな」

 

 ここでコーヒー程度で断るのは失礼だと思い。

 裕子は男性の誘いを受けることにした。

 

 1階のコーヒーショップでコーヒーを奢って貰った。

 

 丸いテーブルを挟んで、互いにブレンドコーヒーを飲みながら自己紹介をした。

 

 男性の名前は蓮田(れんた)保正(やすまさ)といい、この近くの企業で研究員をしているらしい。

 

 どこの企業かを訊こうと思ったが、それに関しては

 

「軽々しく言えないんだ。悪いね」

 

 と拒否された。

 どうもお金を貰って研究している立場だと、秘密には神経質になるらしく。

 

 自分の情報は徹底的に口外したくなくなるらしい。

 

 そんなものなのか、と裕子は聞いてて思った。

 

 で、折角なので色々訊いた。

 大変なことは何なのか、と。

 

 すると

 

「休みが貰えないのが一番辛いかな」

 

 そんなことを苦笑しながら言う。

 

「仕事の関係上、残業休日出勤当たり前だからさ。労基なんて実質無視で仕事があるんだよ。……まあ、その分お金は貰えるんだけどね」

 

 そう言いつつ彼は「今日は休みなし連続勤務の代休なのさ」と平日の今日この場にいる理由について自分の分のコーヒーを飲みながら説明する。

 

「でも、あまりにそれが続くと『お金を払うから家に帰らせてくれ』と言いたくなる気分になるよ」

 

 蓮田氏の笑いは自虐的な笑いであった。

 

「だからまあ、キミもこの道を目指すなら、勉強以外に体力もつけることもおすすめする……学校の勉強と違って望むような正解があるかどうかわからないんだよ。そうなると、最後はやっぱり体力だから」

 

(大変だ)

 

 裕子はコーヒーを啜りつつそう考える。

 

 で、そのとき。

 

 ふと思った。

 

 訊ねてみるか、と。

 

「あの」

 

「何かな?」

 

 後輩にモノを教えている気分なのか。

 蓮田氏の目は優しい気がした。

 

 なので思い切って聞いてみる。

 

「自分の仕事の分野で、皆目見当もつかない技術ってありますか? ……まるで魔法のように思えるような」

 

 あのことを訊いてみようと思ったのだ。

 胎紋認証偽装技術について

 

 プロの技術者としてどう思うかを。

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