宇宙警察ブレイバー~地味子の女子大生が深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた~ 作:XX(旧山川海のすけ)
「ええとまず、あなたが
「……そうだ」
念のためのクシナダの質問に、肥満体の巨体男は頷く。
どうやら間違いないらしい。
「あなたは怪人に襲われてそうなったそうですが、そのときの話を教えてください」
クシナダはじっくり時間を掛けている時間が無いからか。
いきなり本題を訊ねる。
すると
「……いきなりアイツは襲って来たんだ。怪人の姿をしていたけど、あれは蓮田の奴だ」
暗藤はそんな話をした。
(……蓮田?)
裕子はそこで少し引っ掛かった。
当然それは、先日書店で出会った男性のことである。
彼の名前も確か蓮田であった。
だがそれはただの同姓かもしれない。
そう思ったから、彼女は口を挟まなかった。
そこを掘っていく時間的余裕もあるとも言えないし。
「分かりました。怪人に間違いなく襲われたんですね。そしてあなたは怪人の正体にも気づいたと?」
「ああ。声が一緒だった。あいつは俺が中学時代に助けてやった蓮田だったんだよ」
クシナダの言葉を肯定し、そう返す暗藤。
そのとき
(……あれ?)
裕子は暗藤の表情に苛立ちの感情が浮かんだのを感じた。
催眠暗示が掛かった状況でも、そういうのは出るらしい。
クシナダは深掘りする。
「その蓮田という人物はどういう人物ですか?」
「俺が地元の中学に通っていたときに、イジメから救ってやった優等生だ」
どうもこの男、中学時代に不良に目をつけられてイジメを受けていた蓮田という男性を助けた過去があるらしい。
つまり、この男は自分が恩を与えた人間に襲われたことになる。
一体何故なのか?
当然、そこは気になる部分だ。
だからクシナダは
「なるほど。何故そんな人物が怪人になってあなたを襲ったんでしょうか? 心当たりはありますか?」
質問をさらに続けた。
すると
「……俺の借金の連帯保証人にしたことを根に持ったんだろうよ。中学時代の恩返しをしようとするような度量も無い薄っぺらい奴だったってことだ」
その瞬間。
(は?)
裕子の中で時間が停止した。
連帯保証人というものは、裕子も当然知っている。
一般に「絶対になるな」と言われているものだ。
法的にどうしてそう言われているのかは正確には知らない。
彼女の中の認識では「自分の借金を他人に押し付けるためによく利用される怖い法律制度」である。
それにこの男は、中学時代に自分が恩を与えたという蓮田という人物を指名したのか。
しかも自分の借金の連帯保証人として。
(人の心が無いの?)
正直、反吐が出る思いである。
中学時代にイジメから救って貰った恩、というのは決して小さくはない。
そんな相手に拝み倒されたりしたら、断ることに決断力が要るはずだ。
そしてそれを「根に持った」とこの男は言った。
それはつまり、この男は借金を押し付けたのか。
連帯保証人関係のあるあるではないか。
「酷過ぎる……」
思わずそう呟くと。
暗藤は
「俺は大企業の研究職やってる蓮田なら俺の借金くらい必死になれば返せると思った。だから連帯保証人を頼んだのに、それで襲ってくるなんて」
自分は酷い目に遭った。
そう言いたげにそう続けた。
「何言ってるんですか!?」
……我慢できなかった。
自分で作った借金を他人に押し付けるなんて、最低の所業ではないか。
殺されなかっただけでもありがたく思うべきなのに、この男は自分が被害者だと思っている。
許せなかったのだ。
裕子の言葉に暗藤は反応する。
「仕方なかった。借金のカタに
その言葉には後ろめたさのようなものは一切なく。
自分こそ被害者であるという気持ちが溢れていた。
彼は言う。
「稼いでいる奴に助けてもらうことのなにがいけないんだ……?」
……衝動的に、頭蓋骨の縫合が外れて頭をガーゼで巻いている患者である暗藤を、グーで殴りつけたい衝動に駆られた。
だが裕子はそれをグッと抑え。
「……一生被害者ヅラしててよ。加害者」
そう、吐き捨てるように言う。
クシナダも眉を顰めていた。
不快だったんだろう。
彼女は
「では最後に、その蓮田という人物の個人情報を知ってる限り教えてください。そして……」
そう、この件で一番重要に思われる部分を訊ね。
続けて
「全部それを話し終わったら、怪人に襲われたというのは作り話であり、本当は借金取りにやられたんだと警察に言ってください」
そう言ったのだ。
この件に関する、隠蔽工作として。
「いいですね?」
クシナダの催眠暗示。
その言葉に。
暗藤は抗えず、虚ろな目で頷いたのだった。