深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた件   作:匿名希望

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第5話 電装

 裕子の部屋の窓をブチ破って入って来たのは

 

 古代生物三葉虫に似た甲殻を持った人影で。

 色は薄い黄色。

 

 三葉虫の胴体に、人型の胴体を生やしたような姿……

 

 着ぐるみではない。

 着ぐるみでしかあり得ない姿なのに。

 

 その質感を見ると、本物としか思えなかった。

 

 ……本物の怪人……!

 

 裕子は戦慄した。

 自分の部屋に、化け物が入って来た……!

 

「ククク……地球人の女、己の不運を呪うガイイ……! お前は関わってはいけない者に関わったノダ」

 

 ガラスの破片の中から立ち上がる怪物。

 その怪物の視線が

 

 タケハヤに行きついたとき停止する。

 

「……宇宙警察(ギャラクシーポリス)の刑事……!」

 

「アブダノイド・シャコアブダー……。覚悟しろ」

 

 タケハヤは怪物に臆さず一歩前に出る。

 

 今、タケハヤはこの怪物をアブダノイドと言った。

 それは、先ほど彼が語った生物兵器と同じ名前であった。

 

 ということは……

 

(さっきまでこの人が言ってたことは全部本当だったの……?)

 

 宇宙警察も、宇宙犯罪組織も本当だった。

 

 タケハヤは色々言っていた。

 

 宇宙犯罪組織アブダー。

 アブダノイドという生物兵器を売り捌いている犯罪組織。

 

 彼らはその素材として、文明が宇宙連邦に加入できる域に到達していない未開の惑星から知的生物を拉致するという残虐な犯罪を常態化している外道の集まりであると。

 

 その気になれば生物兵器にゼロから知性を持たせるのは不可能ではないことなのに、彼らはそのコストを嫌がって、彼らから見れば原始的な文明しか持たない惑星から知的生物を攫い、生物兵器の素材として調整するのだ。

 

 さっき聞いたときは本当のことだと思っていなかったから話半分に聞いたことであるが、実在するなら最低ってもんじゃない。

 文字通り外道の集まり、外道衆だ。

 

 無理矢理攫われた挙句、怪物の材料にされてしまうなんて。

 

「被害に遭うのは未開の惑星の人間だけであるから、宇宙連邦も人道上許せないと言いつつも、全力を挙げて叩き潰そうとはしないんだ……俺はそれが仕方ないことだとは片付けたくない」

 

 タケハヤがそう言ったときの顔は胸を締め付けられた。

 そこだけ、なんだか本気に感じたのだ。

 

 気持ちが入っているように思えた。

 

 ……でも、今なら納得できる。

 全部本当のことだったのだから。

 

「アブダノイドの人!」

 

 裕子は黙っていることが出来なかった。

 叫んでいた。

 

 アブダノイド・シャコアブダーは視線を裕子に向ける。

 彼女は衝動のままに続ける。

 

「あなたも無理矢理化け物にされたんでしょ!? どうしてアブダーの手下をしているの!?」

 

 タケハヤの言葉が正しいなら、彼らもまた犠牲者のはずだ。

 それなのに、アブダーの尖兵。

 

 理解できなかったから。

 

 シャコアブダーは裕子の言葉に一瞬停止したように見えたが

 

 次の瞬間

 

「グハハハハハ! 知るか馬鹿! 調整時に記憶など消されているに決まっているダロ!」

 

 爆笑する。

 裕子は絶句した。

 

「アブダーに従えば偉くなれル! 殺戮を楽しめル! 無双できル! 従うに決まってンダロ!」

 

 あまりにも酷い返し。

 裕子は何も言えなかった。

 

 そこに

 

「……キミの気遣いと勇気は素晴らしい……だけど、悲しいことに、彼らは元の人格を調整時に破壊され、兵器に相応しくなるように調整されているんだ」

 

 タケハヤの言葉。

 

 それは気遣いに満ちていた。

 

 そんな……

 そんなことって……!

 

「酷過ぎる……!」

 

「そうだ。絶対に許せない。彼らは叩き潰さなければならないんだ」

 

 そう言いつつ

 

 タケハヤは、革ジャンのポケットから何かを取り出す。

 

 それは……

 

 漆黒の板状の何かで。

 スマホに近い大きさで。

 

 宇宙刑事の彼が手にするとサイズ的にまるで警察手帳に見えた。

 

 タケハヤはそのアイテムをシャコアブダーに突き出した。

 

 突きだし、身体を沈め

 

 天に向けて高く突き出す。

 

 そして――

 

電装(でんそう)!」

 

 高らかにそう吼えた。

 その瞬間

 

 あたりは一瞬光で真っ白に染め上げられ。

 

 その光が消えたときには

 

 そこに、銀色のメタルスーツに身を包んだ、輝く戦士が出現していた。

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