宇宙警察ブレイバー~地味子の女子大生が深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた~ 作:XX(旧山川海のすけ)
『暗藤に話を聞きに行く』
『その後は……』
『闇金をやってやる』
この3つのワード。
蓮田は何らかの方法で怪人化……おそらくアブダノイドになる力を得て。
最初に暗藤に接触し、望む言葉を貰えなかったか何かで激昂し彼を半殺しにして。
そしてその後……
同じ力で闇金を狩るつもりなのだ。
この3つのワードからは、それが読み取れた。
「アブダノイドにされてしまった人って元に戻せるんですか?」
この先蓮田が何をするつもりなのか。
それをキーワードから読み取った後。
裕子はそこを確認する。
クローン技術が一般化しているに違いない宇宙の文明であるならば、もしアブダノイドに改造されていても、何とかなるのでは無いだろうか?
そう思ったのだ。
それに関しては
「人格を破壊されていたら無理ですが……そうでないなら、方法はあります」
クシナダはそう返す。
曰く、クローン技術で肉体を再生し、そこにオリジナルの記憶を転送するらしい。
宇宙ではまだ目覚めていないまっさらな脳には人権が発生しないらしく。
宇宙の倫理では問題の無い行為なのだとか。
そこで裕子は思った。
(えっ、でも。アブダーは生物兵器に知性を持たせる目的で、知的生物を攫うんだよね?)
そういうことが可能なら、知性を持ったアブダーを量産し放題では無いのか?
クローンをいっぱい作って、そこにオリジナルの記憶を転送しまくればいいのでは?
そう思ったのだが
(だったらやってるに決まってるよね。だけどおそらくやってない)
ということは、多分それは何らかの理由で無理なのだ。
そう思う。
技術というものは、基礎的なことが分かってないと理解できない面がある。
例えば、先日彼女たちはカレーを作った。
作ったカレーは辛口の、市販のルウのカレーであった。
だが世の中には、50倍カレーというものがある
普通のカレーの辛さの50倍だという意味だ。
これを訊き、誰かが
だったらそのカレーを50倍の量の水で溶けば、普通のカレーの50倍の量が作れるじゃないか。
こう言ったとしたらどうだろうか?
多くの人間は「アホなことを言うな」というであろう。
何故なら、その場合味が薄まって、カレーではなくなるからだ。
カレーの味は辛みだけではない。様々なものがある。
それも50倍に薄まってしまうのである。
だが、それを理解しない人間は「何で50倍ではダメなんだ? 理解不能」となる。
同じように、記憶の転送という技術の基礎を全く理解していない裕子にとってその疑問については考えるだけ無駄だ。
クシナダに訊けば説明はしてくれるかもしれないが、その労力を彼女に払わせることに見合うほどの興味があるわけでもなく。
(スルーしよ)
そう思った。
代わりに
「この街の闇金を探して先回りした方が良いんでしょうか?」
その提案をする。
クシナダなら調べてくれるかもしれない。
そう思いつつ。
だが
「それは……なかなか難しいですね」
それはどうも、難しいらしい。
クシナダの眉根が寄る。
裕子は思った。
(えっ、何で?)
クシナダはSNSの書き込みから事件の真相に辿り着いたり。
他人のスマホに保存されたメールを抜き取りコピーをしたり。
常識外れなことができるのに。
これだけは無理なのか。
意外過ぎて意味不明だ。
しかし彼女は
「だったら、何があれば出来ますか?」
諦めず、言い方を変える。
クシナダに丸投げして無理なのであれば、丸投げをやめればいいのでは?
そう思考を切り替えたのだ。
すると彼女は言った。
「……闇金の電話番号があれば」
闇金の電話番号さえあれば、そこから発信場所を特定し、住所を割り出すことができるらしい。
それを聞き裕子は思う。
(それなら)
闇金の電話番号。
彼女にはその心当たりがあった。