宇宙警察ブレイバー~地味子の女子大生が深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた~ 作:XX(旧山川海のすけ)
「俺を止めに来た……だって?」
蓮田の目に怒りの感情が浮かぶ。
裕子はその目を見て心が騒めいたが
彼女は
「怪人の力を使って暴れて、何か意味があるんですか?」
そう自分の想いを伝えた。
その言葉で蓮田は
「……悪が減るだろ? 金の力は恐ろしい……暗藤が変わってしまったのはああいう奴らがいたせいだ」
まっすぐに裕子を見つめ、酷く冷たい声でそう返した。
(この人は……!)
裕子はその言葉で衝撃を受けた。
この人は……
本当のところは……あの男をまだ信じているのか、と。
あの暗藤という男が彼を借金の連帯保証人にして借金を押し付けたのは、全て闇金が悪いのだ。
そう思っているのだと気づいた。
(何で……!)
そんな酷い裏切りを受けたのに、何故まだあんな男を庇うのか。
あの男は蓮田が襲撃してきたことを「当然の報いである」とは思わず、恩知らずな行為だと言い切った。
正真正銘の人間のクズなのだ。
全く理解できなかった。
「どうしてまだあんな人を庇うんですか!?」
そんな裕子の言葉に、蓮田は目を吊り上げながら
「こう言っては何だが……キミはまだ社会に出てないよね?」
そう、大学生の裕子には反論が難しいことを言ってくる。
それは……
「キミは分かっていない! お金というものがどれほど恐ろしいものかを! 実際に本当の意味で稼いでいないから!」
金の恐ろしさ。
それを「裕子はまだ社会に出ていない」という一点で「理解していない」と断じる。
そのときの蓮田は
「金の力は恐ろしいんだ! 愛情を捻じ曲げたり、暗藤のように友情を捻じ曲げてしまったりすることも出来てしまうんだよ!」
鬼のような表情をしていた。
俺の言うことを否定することは一切許さない。
そんな気持ちがその顔に満ち溢れていた。
だが、しかし
「……そうでしょうか?」
そこに。
クシナダが口を挟む。
バイトしかしていない自分には何も言えないと、黙るしかなかった裕子に代わって、である。
彼女は言った。
「そんなもので捻じ曲がるものは本物の愛情や友情であるとは思えませんけど? ……友情や愛情ほど価値のあるものはないでしょう」
蓮田の言葉を真っ向否定するそんな言葉を真正面から。
「キミは……?」
クシナダのその様子に蓮田はたじろぐ。
彼女から説明不能の説得力を感じたのだ。
金の力で捻じ曲がるのは本物では無かっただけの話なのだ、という言葉に。
彼女は蓮田の問いに答える。
「桐谷裕子さんの友人をやらせていただいているクシナダという者です。……あなた、金の力の強大さを隠れ蓑に、現実から目を背けていますよね?」
その言葉は蓮田の表情を引き攣らせる。
自分でも自覚したのかもしれない。
自己正当化のために、金という強大な力の名前を持ち出したことを。
彼女は淡々と言った。
「……お金の力は小さいチカラでは無いです。でも、何でも出来る万能の力では無いし、この世にあるものを何でも手に入れられる力でもないんです」
彼女は富裕層である。
金の力の大きさは理解しているのだろう。
自らがそれを振るって来て、御して来ただろうから。
だからこそ自信をもって言えるのかもしれない。
「所詮、他人のサービスやモノの一部を手に入れられるチケットでしかないんですよ」
そのことを。
金は金でしか無いということを
「それを愛情や友情と引き換えにするなんて……その人物がその程度の人間だったってことでしょう!」
かつての江戸の時代。
日本にもただのガラス製品を黄金と引き換えにした商人がいた。
クシナダに言わせれば、金のために友情や愛情を捨てるのは愚の骨頂。
ガラス球を黄金の塊と引き換えにするような愚かさなのだろう。
その言葉は
「だ……黙れェェェェェ!」
蓮田を激昂させた。
同時に彼は高く右手を上げた。
そして
「パタアブダァァァァ!!」
そう叫んだ瞬間。
蓮田の背後の空間が歪み。
そこから触手と甲殻類の装甲のようなものが湧きだし、蓮田の身体を覆って行った……!