宇宙警察ブレイバー~地味子の女子大生が深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた~ 作:XX(旧山川海のすけ)
(暮香……! まさかそこまで堕ちるなんて)
己の愚行で大学を辞め、実家に引っ込んで。
聞いた話では日々借金返済のためのバイトに明け暮れていると聞いた。
自業自得である。
全く可哀想だとは思わない。
だけど……
裕子はこの元友人の末路に、哀れさを感じた。
彼女は結局自分すらも大切では無かったのだ。
だから簡単に生身の身体を捨てられる。
彼女の正確な目的が何であるかは分からないが、彼女程度の人間をアブダーが重用すると思えない。
アブダーが目的を果たした後、彼女は使い捨てられるはずだ。
「クシナダさん」
裕子は思わぬ展開に絶句しているクシナダに向けて
「タケハヤさんに連絡をお願いします」
タケハヤへの連絡を依頼して
あとひとつ
「私に暮香と話させてください」
それを依頼した。
「五味山さん、何を考えているの?」
クシナダに依頼して、アブダーゾーンにいる暮香との会話を可能にしてもらい。
早速彼女に呼び掛けた。
その声に暮香は反応する。
「誰よアンタ?」
どうやら声で判別がつかないのか。
ホンのしばらく会っていないだけなのに。
彼女にとって裕子はその程度の存在なのだ。
そこでは別にショックは受けなかった。
好きな人間でも無かったわけだし。
だから
「……桐谷よ」
名乗った。
すると
「ハッ、オマエかよ。何の用?」
暮香は鼻で嗤い、そう返す。
裕子は別にその暮香の態度には憤慨せずに
穏やかに
「あなた、アブダーがどういう組織か分かってるの?」
そう訊ねた。
暮香は
「別に知らないよ。どーでもいいし。協力したら仕返しを手伝ってくれるっていうから従ったダケー」
せせら笑う口調でそう返す。
「仕返し?」
裕子はその言葉が良く分からなかった。
仕返しとはどういうことだろう?
小林は何もしていない。
揉めたのは自分と暮香のみである。
だが
裕子が暮香の言葉を理解しなかったことが気に入らなかったのか
「ザケンナッ!」
突如、暮香は激昂した。
そして早口で怒鳴り散らす。
「この女はなぁ! 私の言う事より陰キャネクラ女のオマエの言うことを信じたんだよッ! 馬鹿にしてるだろッ! 舐めやがってッッ!」
(そんなことが許せないって言うの……理解できない……!)
信じて貰えないのは単に信頼性が無いからだ。
信頼性が無いのはそれだけの関係性を築いてこれなかっただけの話だ。
どこまで行ってもそれだけの話で。
誰が悪いわけでもない。
それなのに、この女はそれが許せないという。
「言っとくが陰キャネクラ女のオマエより、私の方が上の女なんだからなッ! 私はファッションもメイクもハイレベルに達していたし、カワイイって言われまくってた! お前はオトコにカワイイって言われたことあるのかよッ!?」
「……だから?」
そのとき。
その会話に割り込む者がいた。
暮香は棘のような目を向ける。
それは……
「本当にくだらない価値観ね。あなたにとって自分の価値基準はオトコの中にしか無いのね?」
小林であった。
小林は臆さず、機械の化け物と化した元友人に
「別にどうでもいい人にカワイイって言われたから何? それに何の価値があるの?」
一歩も引かずに厳しい言葉を投げかける。
「私も裕子も、別にみっともないと言われる筋合いは無い程度には見た目に気を遣ってる。それで充分でしょ馬鹿馬鹿しい」
その眼光は鋭くて。
暮香は一言も返せない。
そして
「だからあなたの嘘には誰も騙されなかったのよ。あなたが中身空っぽなのは皆知っていたからねッ!」
その言葉を叩きつけられたとき
暮香は
「黙れ殺すぞッ!」
金縛りが解けたように、発狂を見せる。
だが小林は
「裕子は友達よ。……ここで黙っちゃ女がすたるってもんよ」
やはり一歩も引こうとしない。
堂々とした態度を崩さず、そう言い放つ。
「てめえ……耳を削いでやる!」
暮香はその機械の右手に、ナイフのような鉤爪を出現させる。
それを見て裕子の血の気が引く。
(まずい)
小林はおそらく言葉を撤回はしない。
そうすると、暮香の怒りは収まらない。
すると、待っているのは
裕子の中に最悪の想像が浮かぶ。
裕子は
「待って!」
反射的に言っていた。
友人……小林を守るために。
「小林さんの身代わりになるから、私をそちらに入らせて!」
……そんなことを。