宇宙警察ブレイバー~地味子の女子大生が深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた~ 作:XX(旧山川海のすけ)
〇月△日。
日曜日。
2人はアブダーに指定された日、木見北市の公園からタケハヤの宇宙船経由で灯影島に転移した。
「すごい。さっきまで公園にいたのに」
一瞬で見知らぬ島の砂浜に立つ自分に興奮を隠せない裕子。
そんな裕子を見ながらタケハヤは
「やってることは、生命体を一度情報に変換し、それを任意の場所で再構成することで」
歩きだした。
この転送技術について語りながら。
「これは霊魂学と密接に関わってる……らしい。クシナダからの受け売りだ」
「霊魂学?」
タケハヤの話に出た耳慣れないその学問の名前に裕子がそう訊くと
タケハヤは
「生物の魂に関わる学問で、胎紋認証技術なんかもここに含まれる」
(胎紋認証も?)
どうもイメージに合わない。
胎紋認証は生命誕生時に母親の胎内で刻まれる紋様という話。
何故そんなものが生物の魂と関わるのか……?
「魂っていうのは不滅のものじゃないんですか? 輪廻転生して、ずっと巡っていくような……?」
裕子の中ではその生命の一生限りの話である胎紋認証と、輪廻転生を繰り返す不滅の魂のイメージが合わなかったのだ。
なので、裕子がそう自分のイメージを口にすると
タケハヤは少し思案する顔になり
「んー、少し違うな。巡るというより、海と水の関係に近いものと考えられているよ。キミにイメージしやすい形で言うなら」
「海?」
ピンとこなかったのでそう訊き返す。
するとタケハヤは頷き
詳しく解説してくれた。
「そう。巨大な魂の集合地がそこにあると考えてくれ。まるで海のような。そこから生命体が誕生するときに「雨が降るように」魂が汲みだされ、生命体の中に入り込むんだ」
……なんとなく理解できた。
つまり、
そういうものだというのか。
「そしてその生命体が死を迎えると、その魂の集合地に戻り、元の巨大な魂の1つになる……だから海なんだよ。水もいずれは海に戻っていくものだろう?」
(なるほど)
裕子は納得する。
なんだか、仏教の話で聞いたような覚えがある話であった。
ひょっとすると、地球人も本能的にそんな宇宙の仕組みに気づいていたということなのか。
それとも太古の昔に宇宙人にそんな話をされたことがあり、そこからそういうイメージに至ったのか。
「……その辺を教えてくれたのもクシナダだった」
懐かしそうにタケハヤは語る。
そこで裕子はふと思った。
「タケハヤさんはどういう経緯でクシナダさんと出会ったんですか? いや、引き取られた先で義理の兄妹として出会ったのは聞いてますけど」
……ふたりの詳しい馴れ初めを聞いていなかったな、と。
するとタケハヤは何ともない普通の表情で
「……俺は元々、アブダノイドの材料にされる予定の知的生物として囚われていたんだ」
そんなことを言った。
(えっ)
その言葉は裕子には驚かざるを得なかった。
そんな話、今まで1度も聞いた覚えが無かったからだ。
彼は自分の身の上を話すとき、そんなことは一言も言わなかった。
まさか、そんなことだったなんて。
彼は続ける。
「だからそれ以前の記憶は俺には無い。……アブダーに完全消去されてしまったからね」
……何ともない表情で。