宇宙警察ブレイバー~地味子の女子大生が深夜の土手で行き倒れ青年を助けたら、その人が宇宙の刑事で宇宙犯罪組織との戦いに巻き込まれた~   作:XX(旧山川海のすけ)

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第75話 ムラクモの真実

「嘘を吐くな! ムラクモはアブダーに与したりしない! 素晴らしい男で、俺の兄貴分だった男だ!」

 

 タケハヤの声はどこか震えていた。

 絶対に認めたくない。

 そんな思いが溢れていた。

 

 だからこそ、可能性のあまりにも低い「胎紋認証を誤魔化した」という答えに飛びついたのだ。

 

(でも、何故?)

 

 裕子は困惑していた。

 だったら何故、自分は別人だなどと嘘を吐いたのか?

 

 最初から本人と名乗っていれば有利に戦えたはず。

 

 ここまでの動揺をさせる効果がある爆弾なのだ。

 なのに、しなかった。

 

 心置きなく戦えてしまう「自分はクローン」という嘘を吐いた。

 

(何故……?)

 

 その答えは

 

「フッ。兄貴分な……俺の主人格もそこで苦しんでいたよ」

 

「主人格……?」

 

 ムラクモのその呟くような言葉に

 

 タケハヤは聞き返していた。

 知りたかったからだ。

 

 この認めたくない真実を否定してくれる可能性を願って。

 

 そんな彼の様子に

 

「……おめでたいな。気づいてなかったのか?」

 

 ムラクモは嗤う。

 タケハヤが何も知らない、気づいていない。

 

 そんな気持ちがそこに込められていた。

 

 

 彼は言った。

 

 

「ムラクモはずっとクシナダが好きだったんだよ……お前がアシナ長官に引き取られるずっと前から」

 

 

「え……?」

 

 

 タケハヤの動きが止まった。

 それほどの衝撃。

 

 ムラクモは続ける。

 

「お前に分かるか……? ずっと女として愛して来た女を、いきなり現れた年下のガキに奪われた男の苦しみが……?」

 

 その声は怨嗟に満ちていた。

 嫉妬と……悔しさと……憎しみ。

 

「どれだけ苦しんだか分かるか……?」

 

 メタルスーツの黒い仮面の奥に。

 憎悪の瞳が光っている。

 

 それが透けて見える言葉であった。

 

 彼は語りながら双極の剣を構える。

 

「ムラクモは……俺の主人格は苦しんだ。ずっと恋焦がれた女が、別の男を愛している。その事実に……」

 

 ムラクモの言葉を誰も止めることができない。

 ひとり語り続けた。

 

 そして

 

「だが自分は兄……気持ちを封印しなければならない……そう思い、必死で抑えて来た……そこに言われたんだよ。アブダーに」

 

 語り出す。

 何故彼が宇宙警察を裏切ったのか。

 

 それは……

 

「お前のその気持ちを解決してやる。お前の身体を一時的に別人格に明け渡せ。そうしてくれればお前が邪魔に思っている男を排除させてやるぞ、と……」

 

(まさか)

 

 裕子はその言葉で察してしまった。

 

 彼が何を目的にしているのか

 

「俺の主人格は迷った。迷ったが……最終的に乗ったんだ。自分の身体をこの俺……副人格に明け渡すことをな!」

 

 彼は別人格に身体を明け渡した。

 それこそが、ブレイバーキラー=ムラクモツヴァイ。

 

 その目的は

 

「俺の目的はただ一つ! お前を抹殺し、その後元の人格に身体を返し、元の人格が想いを遂げる下地を作ることだ!」

 

(やっぱり……)

 

 予想通りだった。

 彼はタケハヤを殺し、その後何食わぬ顔で「ムラクモとして」クシナダの傍に戻るつもりなのだ。

 おそらくは……

 

 ムラクモツヴァイを自分で倒し、婚約者の敵討ちをした頼れる義兄として。

 そうなれば自分はクシナダを手に入れることが可能になるかもしれない。

 

 そんな、悍ましい計画……!

 

(最低だ)

 

 横恋慕の果てに、恋敵を別人格に排除させ、想い人を奪い取ろうだなんて。

 

 そんなものは愛じゃない。

 ただのエゴである。

 

 これで分かった。

 何故最初のときに自分の正体を語らなかったのか。

 

 クシナダに真実を知られると計画が破綻するからだ。

 

「そんな……ムラクモ……!」

 

 タケハヤは受けた衝撃から立ち直れない。

 それを嘲笑うようにムラクモは

 

「どうした? 掛かってこい! それともできないか? 腰抜けめ!」

 

 そう強く言葉を叩きつけ。

 

 そして

 

 その手に握った双極の剣の刃を突き出した。

 力強く、その片側を。

 

 その瞬間その刃が……

 

 伸びる!

 まるで槍のように。

 

 その伸びた刃はタケハヤ=ブレイバーの胴を貫いた。

 

「がぁっ!?」

 

「タケハヤさん!」

 

 タケハヤの呻き声と裕子の悲鳴。

 メタルスーツが火花を散らし、タケハヤ=ブレイバーは膝を突いた。

 

 避けられなかったのだ。

 動揺のあまり。

 

 そして受けたダメージは恐ろしいダメージだった。

 

 そのダメージの大きさで、タケハヤの電装が解除される。

 

 その場には片膝を突いた革ジャンの傷ついた青年。 

 その手から宇宙警察証が零れ落ちた。

 

「勝負あったようだな」

 

 刃を戻し、ムラクモは勝ち誇った声でそう言った。

 

(汚すぎる)

 

 そして裕子はその言葉に憤る。

 許せなかった。

 

 この男がこの事実を明かしたのは、動揺しているときに致命打を叩き込むためだ。

 

 そのために……

 

 裕子はカプセルに入れられたクシナダを思い出す。

 あの通り……想い人には重大な真実が洩れぬようにしたのだと。

 

 あまりにも汚い。

 何が決闘だ。果たし合いだ。

 

 こんな決着……認められない!

 

 そんな裕子の怒りを他所に

 

「トドメだ! ダーク・イン・パルス!」

 

 ムラクモ=ブレイバーキラーは双極の剣を振り回す。

 まるでその刃で2つの大きな円を描くように。

 

 そして腰を落とす。

 突っ込んで、タケハヤを仕留めるつもりなのか。

 

 ……だがそのとき。

 

 その場の誰もが、信じられないものを見ることになる。

 

 

「電装(でんそう)!」

 

 

 裕子が。

 

 タケハヤの手から零れ落ちた宇宙警察証を拾い。

 

 それを構え、装着コードを叫んだのだ。

 

 そしてその瞬間。

 

 その場は白い光に包まれた。

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