銃弾が飛び交う学園都市?!んでもって銃の耐性なし?!・・・やってやろうじゃねえかこの野郎!! 作:オーバジン
「……クソが……痛ぇ……」
瓦礫の中からガラガラと音を立てながら一人の少年がフラフラと立ち上がる。
「ふざけんなよ……二発目は聞いてねぇぞ……」
「っ!?……ガァァ……アァ?」
少年は首に激痛を感じ右手で押さえようとして違和感に気付く、そして痛む首を酷使し自身の身体を見下ろす。
「は……?」
自身の姿は見るに堪えないものだった。
全身はボロボロで血だらけ、あちこちに破片が肉に食い込んでいる。そして首からは大量の血……血液がドロドロと流れている、自身が気絶していた地面には凡そ人間が出していいはずの量ではない程の血だまりができている。
しかし少年の視線は自身の右腕のあった場所を見つめている。
「俺の……腕……」
少年の声は震えている。それもそうだろう視線の先の右腕があった場所には何もない、右腕を動かして振ろうとするしかし何も起こらなかった。
脳からでた腕を動かす信号は虚しくそこには届かなかった、何もないのだ、そこには虚空がある、自身の色白の腕は肩から先のどこにもない、周りを見ても足元にもなかった。
あの血だまりは首だけではなく腕を失ったからも理由なのだろう。
「……覚悟はしてた……だけど……いざ……こうなると……」
少年はグラついてその場にまた倒れこむ、右腕が無くなったことによりバランスが取れなかったのだ。
「でも……ここでくたばる訳にはいかない……恐らくセイアも、二発目は予想外だったはずだ……そのうちまた指示を出してくれるはず。」
「とりあえず、此処を移動しないと……だが……」
少年はまた左手で身体を支え起こす、しかし立ち上がり少しするとまたフラフラと身体が揺れる。
「クロナ……聞こえるか」
『ガガガッ……ウ……ヒョウ!』
「よかった繋がった……」
『あぁ……首からこんなに血が……それに腕が……!』
『何をしているのですか!?今すぐ処置をしてください!』
カオスの箱に呼びかけるとクロナとケイの声が聞こえてくる、どうやら奇跡的にカオスの箱には損傷がなかったようだ。
『私が……あの時もっと早く気づいていれば……私がアロナみたいにバリアを張れれば……!』
「クロナ、俺がこうなったのはクロナのせいじゃない、ミサイルをここにぶち込んだ奴のせいだ……難しいかもしれないが……今は気負っている場合じゃない……ケイ」
『な、何ですか?というかそれよりも早く応急処置を……』
「クロナのことは、任せた。」
『は……何を?』
「俺は今から俺じゃなくなる。」
『ど、どういう……』
「一度通信を切るぞ、クロナを落ち着かせてやってくれ。」
『ちょっ、ちょっと待ちなさ……』プツッ
ヒョウはカオスの箱との通信を切る。
「先生の位置情報は分かった、他の奴らの信号もある……何者かの生体反応も……」
「恐らく、そいつらが……敵か……」
ヒョウは一通り確認し終える。
「指輪も……無事だな……良かった、これが壊れてたら……」
上着の中に手を入れ指輪を取り出し確認する、母親の形見には傷一つなく今この瞬間も美しいダイヤモンドが炎の光を反射している。
「今度はもう間違えない……俺はどうなってもいい、先生を守らねぇと……」
ヒョウは指輪を懐にしまう。
「アッシュ」
『なんですか?』
ヒョウはそう言うと、頭の中に機械的な女性の声が響く。
「頼みたいことがある。」
『ふむ……内容によります。』
「俺を先生のところまで連れていけ、位置はもう共有してある。」
「俺は今この片腕が無い状態に慣れていない、アッシュなら慣れているだろ?」
『それなら私でなくてもあのポンコツか殺戮兵器に任せればよいのでは?』
「カレブは信用ならない、あいつに任せると被害が拡大するだけだ、パスは楽観的すぎる、任せるには少々不安だ。」
「だからお前を、完璧を追及するアッシュに頼む。」
『……賢明な判断ですね、私に掛け合った意図は理解できました。では、その対価は?』
『私はあくまであなたの中にいますが、貴方ではない。何かを頼むならそれに見合う対価が必要でしょう?』
アッシュ、彼女はプレデターズという組織に所属していた、簡単に言うと金もしくは対価があれば何でも請け負うという組織だ。それもあり対価を求めてきた、まぁ当然といえば当然だろう。
「あぁ、対価は決めてる。」
「あれができた時、真っ先にアッシュに乗ってもらう。」
『機体の型は?』
「もちろんローニンだ。」
『……いいでしょう、対価としては少し弱いですが、頼みの内容と比べれば妥当でしょう。』
『それでは身体を明け渡しなさい。』
「感謝する。」『いいえ。』*1
するとヒョウは目を閉じる。しばらくすると体のふらつきも収まってきて、少年の雰囲気から機械的な冷たい雰囲気に変わっていく……まるで人が変わったように……。
少年は目を閉じたまま、静かにその場に佇んでいる、相変わらず全身から血を流しているが。
少年の背後からは川流シノンたちクロノススクールの生徒達がいつの間にか居てこちらへとカメラを向け、何か動揺したように話している。
「やはり、この身体は鍛え上げられていますね……これで殺しに寛容だったのなら楽だったのですが。」
少年はフードを被り、腰に機械刀がどこからか出現する。
「さぁ……行きましょうか。」
ヒョウ(アッシュ)は、シッテムの箱とカオスの箱が共有している位置情報を頼りに走っていくのだった。
タッタッタッ……
崩れた瓦礫の上を周りに血をまき散らしながら軽快に走っていく。
「ミサイルが落ちたにしてはやけに静かですね……この世界の人間なら、このような爆撃では死に至る可能性はゼロに等しいはずなのですが……ふむ……?」
キィン!!
目の前に飛んできた銃弾を刀で両断してその場に立ち止まる。
「先ほどから気配がすると思えば……なんですかあなた達は。」
『『……』』
視線の先にはガスマスクを着用した青白い肌で、えぐい角度のレオタードを着た幽霊のような女性がこちらに銃口を向けていた。
「……姿だけ見ると、恐らく幽霊もしくは亡霊と呼ばれるものと酷似していますね。」
「……少々興味をそそられますね、本当に実在しているものなのか……それとも幻覚というものなのか……」
「いえ……ですが正直に言うと亡霊はヴァイパーの娘だけで間に合っていますので。」
剣先をユスティナ聖徒会に向ける。
「どのみち、邪魔をするというのなら容赦はいりませんね。」
「不完全な存在達よ、我が刃で切り捨てましょう。」
『!?』
ユスティナ聖徒会は剣先が自分たちに向いたのを確認した瞬間、雰囲気が変わったのを理解する。目の前の少年から発せられる圧、それが先ほどまで戦闘していた正義実現委員会や風紀委員たちとは違うものだと確信する。
明確に向けられる強烈な殺意、それに、感情は無いはずのユスティナ聖徒会は一歩後ずさる。
「来ないのですか?ならばこちらから動くとしましょうか。」
そう言った瞬間、視界から少年が消える。
『?……!?』
一体のユスティナ聖徒会の上半身と下半身が両断され空中で霧散する。その隣にいたユスティナ聖徒会は一瞬の出来事に驚愕したような動作をして後ろを振り向く。
「切った感触がある、つまり実体があるのですね……」
「先生とやらの元に着くまでとなりますが……久々の戦闘ですので楽しませていただきましょう。」
「ブリンク、起動。」
そうしてまた一体、下半身と上半身がお別れするのだった。
キンッ!キンッ!がガガがガガッ!
放たれる銃弾の中を刀ではじきながら走って進んでいる。
「シッ!」
そして近づいてくるユスティナ聖徒会を両断していく、一つ一つの動きが戦闘慣れしたプロの動きだ、ブリンクの予測困難な距離の詰め方と殺すことにためらいの無い剣筋が、こちらに向ける明確な強い殺意が聖徒会たちの戦う意思を削いでいく。
「ふぅん……脆いですね……肉体は言わずもがな精神までも軟弱とは……亡霊が聞いて呆れますね、ヴァイパーの娘はもっと強かったはずなのですが……。」
「……なるほど、彼女には復讐という目的があったからなのでしょうね。」
キィン!!
「銃弾に殺意がこもっていない、足止めが目的なのですか?だとすると舐められたものですね。」
「はぁ……残念ですね、もっと楽しませてくるると思ったのですが……」
「先を急ぎましょう、こんな茶番に付き合ってる暇はありません。」
「そこを退きなさい、弱き者たちよ。さもなければ刀の錆にしてくれましょう。」
シュン……ズバァ!
何体ものユスティナ聖徒会が吹き飛ぶ。
「まぁ、目の前に来たあなた達を逃がすつもりはありませんがね。」
周りのユスティナ聖徒会を片付ると機械刀を腰の鞘に収刀する。
「……片腕は無いですが、やはりこの身体は戦闘に最適ですね他のレジェンドたちの力を扱える……面白い……しかし、この身体が朽ちていくのを見るのは非常にもったいない……」
「さっさと行きましょう、私が表に出ていられる時間もかぎられていますからね」
そうつまらなさそうに吐き捨て移動速度を上げるのだった。
「片腕の状態には慣れましたか?もう少しで彼女らの居る場所にたどり着きますよ?」
『了解、この状態にはだいぶ慣れた万全とはいいがたいがさっきの青い奴らと対峙しても負けることは無い。』
「上出来です。恐らく私が表に出ていられるのは彼女らの元に着いて少しの間でしょう。」
『分かった、そこからは自分でどうにかする。』
「間違っても、死ぬことの無いようにお願いしますよ?」
『あぁ、少なくともアッシュをローニンに乗せるまでは死なんさ、約束は守る。』
「……どの口で言っているのですか、あの金髪ロリ少女との約束をすでに破っているにも関わらず?」
『……』
「まぁ……あなたがこういった事務的な約束ごとを破るといったことは無いようなのでそこは心配はしていませんので。」
「貴方が、守れる約束と守れない約束ごとの違いは何なのでしょうね?」
『……もうその話は今は良いだろ……』
「そうですね、この話はもういいでしょう。これから戦闘を行うあなたに精神攻撃をするのは悪手という物でしょう。」
『包み隠さずに精神攻撃っていうんだな……』
「えぇ、今のあなたと私に隠すことなど無いでしょう?お互いがお互いのことをすべて知っているのですから。」
「貴方も私達に今まで十分攻撃をしてきたではありませんか。あの能天気なポンコツと殺しを道楽などと感じているいかれ野郎は気にしていないようですがね。」
『あいつらは……まぁ、気にしてなさそうだな。』
「奴らには本当に……もういいです。」
『苦労してるんだな……』
「貴方も一日中奴らと会話してみることを推奨しますよ。恐らくですが頭痛がひどくなると思いますよ?」
『勘弁したいね……先生との距離は?』
「残り、おおよそ75m前後と言ったところですね、アルティメットの準備はできていますよ。」
『状況は?』
「貴方が先生と言っている人物の元には反応が二つ、それと対峙している反応が主に四つ、他には有象無象と亡霊もどきが大勢。」
「恐らく、二つの反応は風紀委員長とあの金髪ロリ少女ですね。」
『……アッシュ、フェーズティアの最大距離は?』
「75mですね。」
『今すぐそこに行け。』
「いいのですか?アルティメットは活動時間を大幅に削りますが?」
『問題ない、もうバランスも完璧につかんだ、後は俺がどうにかする。仮に死んでも一度だけならどうにかなる……だろ?』
「……いいでしょう。」
機械刀を身体の前で構える。するとその機械刀にまっすぐ線そこが少し開きそこから青白い光とモヤが漏れ出る。
「フェーズティア。」
目の前の何もないところに機械刀を思いっきり振り切ると刀がなぞった空間が切れ、そこにワープホールができ、それに触れる。
その瞬間視界が青白く染まりその世界を高速で移動していき数秒経つと色の付いた出口が見えてくる。
『アッシュ!イブキちゃんを守れ!!』
「どの口が偉そうに……はぁ、分かりました。」
音もなくフェーズティアから現れると、そのままブリンクでイブキの前に滑り込み、
キィン!!
放たれた銃弾を真っ二つに切った。
「お、お兄……ちゃん?」
その場の全員は突如現れた少年の姿に目を見開いて驚く。
「全く、手間を掛けさせてくれますね……」
「命令だけに従って動く亡霊もどきなどという、生きてすらいない不完全な存在で私を排除しようなどと、考えが甘いですね。」
そうしてヒョウ(アッシュ)は先生の元にたどり着くのだった。
少年が○○になるまであと少し……
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