『再会 side Mari』
「ふぁー、みんなみんな再会できてよかったねえ、お姉さんうれしいよー。」
「おばさんの間違いじゃなくて?」
「姫は手厳しいにゃあ。」
この世界にやってきて1か月がたつ。
この世界の私も、懲りもせず研究者をやっているらしい。性分は変わらないものだ。
この世界に来て一番しんどいこと。それは…
「歳を取るって、こんなに過酷なの!!」
エヴァに乗っていた頃は、呪いの影響か疲れや、歳を取るということがなかった。
しかしよく考えてみれば、私はワンコ君と姫の親世代なのだ。
そりゃ、体にもガタがくる。
肩は凝るし、体力は全然ないし、老眼が始まってるし…
自分でも一気に老け込んだなあと思う。
年齢不詳のお姉さんキャラから年齢不詳の美魔女にキャラ変しなくてはいけない。あまり変わっていないと言う声がする気がするが気にしてはいけない。
そのためにはアンチエイジングを頑張らねば…
でも姫の言うおばさんってキャラも捨てがたい。
私は今、宇部にある工業地帯に位置する企業の研究所に勤めている。
元々研究者なんて1人で勝手にやっている人が多いから周りの人間関係とかに気兼ねなく生きていけるから生活は楽である。
彼女たちが来るまでは。
「1月からこの研究所の副所長になる赤木リツコよ。急だけど皆さんよろしく。」
「同じく1月からこの研究所でお世話になります伊吹マヤです!よろしくお願いします!」
「副長…マヤさん…」
そう。WILLEの彼らに会うまでは。
私の顔を見ても何も反応がなかったところから、何も覚えていないのだろう。
正直彼女らへの感情は複雑だ。
エヴァパイロットである私たちにDSSチョーカーをつけたことや、シンジくんへの仕打ちは許されることではないと思う。
かと言って彼らが悪だったとは思わない。むしろ正義だったと思う。
あの時の行動は全て致し方なかった事だと思う。
ただ何かが足りなかったのだ。
思いやり、愛、気遣い、責任感…。名前はつけきれない。
みんながみんな、何かしらの罪があるのだと思う。
それらの加害者であり被害者である、シンジくんが全てなかったことにした今、わざわざ掘り返して責めるということはするべきではない。
このことは、私たちだけで大事に持ち続けていくものだろう。
私はいいだろう。
だが、アスカとシンジくんはどうなんだろう。
彼らは私よりも付き合いが長い。
そして、WILLE艦長であるミサトと暮らしていた時期もある。
私よりも感情は複雑だろう。
見てくれだけだとしても家族だったのだ。2人にとって初めての我が家であり、落ち着ける場所だったのだ。
愛憎の一言では表せない感情があるだろう。
「世界が間違っていたとしても、出会いまで間違いであったとは思えない、か。」
彼らは、どう思っているんだろうか。
ユイさんの話やレストランでの出会いから、この世界の知り合いが前を思い出すにはシンジくんがトリガーとなるようだ。
ユイさんとしては、シンジくんがもう一度会いたいと思うなら、出会いと再会は待っているということなのだろう。
ユイさんから彼らを託された以上、彼らの思いはできる限り叶えてあげたい。
もう一度会えるなら、なんていうチープな映画のようなセリフが思い浮かぶ。
彼らは、それを望むのだろうか。
感動的な再会からの帰り道。
私はどうも考えが発散してしまうため、ついに聞いてみることにした。
「姫はさ、もしも…もしもだよ。今日みたいにミサトと再会できるとしたら、どうする…?」
「どうするって…何よ急に…。」
「いや、もしもの話、たらればだから気にしなくてもいいけど、単純に気になったから。」
「そうね…。」
アスカはうつむき、考え込んでしまった。やはり、簡単に片づけられるような問題ではないのだろう。
「そうねえ、もう一度会えるなら、そんな希望があるなら、一発ぶん殴ってやるかな。『このアル中女が!』って。」
「ふぇ?」
「なんとなくあんたが言いたいこともわかる。あれだけの仕打ちをしといて、会いたくないとかそういうのはないのか、そういう事でしょ。」
「ま、まあそういう事だね。」
「そういうことはもう私は置いといたのよ。まあ、往復ビンタがおまけで付くかもしれないけどね。」
「は、はあ。」
私はどうも拍子抜けしてしまった。
「確かに、ミサトが私たちにしたことは許されないことかもしれない。でもそれはお互い様。私だって大概シンジにひどいことしたし、シンジはミサトや世界中の人にものすごい迷惑をかけた。そうやって憎悪の環が続いていった。けど、あいつは…シンジはその環から自力で抜け出して、その環を封じ込めた。だからもう、終わったことなのよ。その憎悪の環はエヴァがあったあの世界に置いてきた。もうこの世界には何もない。あいつが私たちの家族としてはっきりそこにあったということを私たちが覚えているだけ。だから、憎しみとかじゃなくて、残ってるのは家族としての痴話げんかだけよ。」
「そっか、そうか…」
なんだかおかしくなってきた。
何が複雑だ!
彼らはそんなもんじゃなかった。そんなことで崩れる絆じゃなかったのだ。
心配することはない。
笑えるじゃないか。
なんて幸せな家族だろう。
あのマンションにそんな幸せが詰まっているとは思わなかった。
先に歩いて行っていたシンジ君と並んで歩くアスカ。
でもそこには、目に見えなくても確かに、彼らの”姉”の存在があるのだ。
次の日、私は早速パソコンをいじって調べ物をしていた。
小さいながら自分用の研究室を持っているため秘密の調べ物にはうってつけである。
何を調べていたかというと、
葛城ミサトの行方
である。
昔の知識を総動員し、各地のデータベースを漁る。
もちろん見つかったら逮捕確定だがそこはうまいことごまかしてある。別に情報を盗むことが目的ではないのだから見逃してほしい。
この前の再会の様子から、この宇部市の付近に痕跡があるはずだと思ったが、近隣自治体含めてヒットなし。
範囲を中国地方、西日本、全国に広げるもやはりだめ。
さすがに世界中のデータベースに入るのは無理がある。あきらめようとしたとき、おもむろにある考えが浮かんだ。
各地のデータベースに手当たり次第に名前を入れていく。
加持リョウジ
シンジ君たちより少し年下の男の子がヒットする。一方父親と母親の欄は…
「空白!?」
どうも養護施設で拾われたよう。
ほかにもいろいろな名前を入力していく。
碇ゲンドウ
碇ユイ
やはりヒットしない。もしかしてとシンジ君の戸籍も調べる。
親の欄は
またも空欄だった。
そしてアスカ。
アスカは旧姓が惣流という知らない名前だった。
なんでもシンジ君が何度もやり直した世界線の中の一つでのアスカの名前なのだそう。
クローンではなかったというから親が存在するのではないかと考えた。
しかしまたも親の欄は空欄。
つまり…
「過去へは戻さない、ってこういうことか…」
つまり、ネオンジェネシス時点で死亡していた人物はこの世界には存在しないということだ。
「もしも会えるなら、なんて希望を持ってしまったけど、本当にただの希望だったのかしら…。たらればに過ぎないのか…。」
第三話 終劇
あとがき
これにていったん第一部は終わりと考えております。
エヴァにはまりその勢いのまま書き始めたシリーズですが思っていたより多くの方に読んでいただき嬉しい限りです。
今後は、この設定を使った新シリーズに飛ぼうかなと思っていましたがやめます。
どうせ設定が同じなのでそのまま同シリーズで進めていきたいと思います。
第一部の終わりを読んでいただければわかる通り、だいぶ不穏に終わっています。さてどうなるやら私にもわかりません。
次回!第二部逆行編がスタートします!
お楽しみに!