勝ちヒロインのアスカさん   作:唯野あかつき

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今回から第二部です。


第二部 逆行 君が思い出になる前に
第二部第一話 心残り、そして


 

 

 

「ねえアスカ、心残りって、ある?」

「そうねえ、一つ、あるかな。」

「僕もだ。」

 

 

 

 

 

第二部 逆行 君が思い出になる前に

第一話 心残り、そして

   

 

 

 

 

「姫もワンコ君も合格おめでとー!!」

 

ネオンジェネシスから早くも3ヶ月が経った。18歳で新たな世界での生活を始めた碇夫妻ことシンジとアスカは、大慌ての大学受験を終えた。

 

元々の地頭の良さから、シンジは3ヶ月弱で高校生としての勉強を終えた上で共通テストで高得点を叩き出し、彼の『両親』の母校である京都大学に、すでに大卒で余裕の合格だったアスカとともに通うことになった。

 

入学式を前にしたこの日、京都で新しく借りたアパートに、合格祝いに来たマリ、大阪の音大に通うことになったカヲル、シンジたちと同じく京都大学に通うことになったレイが集っていた。食卓を囲み、シンジが作った手料理をみんなで食べていた。

 

「まさか本当に母さんたちの母校に行ける日が来るとは思ってなかったよ。」

「まああの2人の子供なら当然っちゃ当然にゃ。」

「まさかあのバカシンジがね〜。」

「お兄ちゃんとお姉ちゃんと同じ学校…」 

「いいねえみんな幸せそうで。団欒はリリンの文化の極みだよ。」

「まあまあみなさん飲みなさい!」

「うわコネメガネ酒臭い!」

 

 

 

 

 

 

 

「もうすぐ、春だね。」

一通り食べて飲んでが終わり、マリは酔い潰れ、カヲルとレイは仲良く寝てしまった頃、ベランダで夜風にあたりつつ、シンジとアスカは月を眺めていた。

「そうね。もう、春か…。」

「早いね…。つい最近この世界にやって来たばかりだと思ってたのに。」

「あの時はまだ冬だったね。」

 

肩を並べて空を見ている。

 

月は2人の心まで照らすようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえアスカ、心残りって、ある?」

「そうねえ、一つ、あるかな。」

「僕もだ。」

 

 

 

 

 

 

 

「私はいろいろ悪いこともして来たし、残念なこともあったし、嫌なこととも向き合い続けてきたけど、こうしてシンジと2人でいられてほとんど流されちゃった。でも、唯一埋められない穴がある。」

「僕もこうして世界を作り直して、父さんとも和解できたのに、埋められない心の穴があるんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミサト…加持さん…」

 

 

 

 

 

 

どちらがつぶやいたのだろう。おもむろに2人の名前が飛び出した。

 

2人とも目を合わせない。合わせたら泣いてしまうと思うからだ。

 

 

どの世界でも、自分たちの居場所を作ってくれた。

 

どの世界でも、自分の信念のために戦った。

 

そして…どの世界でも、その命を散らしていった。

 

 

 

名誉の死なんて存在しない。死の後に残るのは残された者の喪失感のみだ。

 

最後の世界でも、加持さんはニアサーを止めるため、ミサトはシンジに槍を届けるために命を散らした。

 

 

 

 

 

 

確かに彼らと過ごした時間は何度繰り返しても短いままだった。

でも人生で一番濃い時間だったと自信を持って言える。

 

それなのに、ありがとうって言いたいのに、当の本人たちはもういない。

 

 

一つの思いが彼らの頭をもたげる。

 

 

このまま僕たちだけ幸せになっていいのだろうか。

 

 

他人に聞けばいいと言うにきまっているが、そんなことでは疑念は払拭されない。

 

 

 

 

ネオンジェネシスで、時を戻さないと決めた心に、もうしないと誓った後悔が押し寄せようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「君たち、どうかしたのかい?」

 

マリの酒臭さに当てられて酔って寝ていたカヲルとつられて寝ていたレイが目を覚ましていた。

 

「ちょっちね、昔のことよ。」

「ミサトのことね、バレバレよ。」

 

 

 

「後悔、してるのかい?」

「うん、もうしないって決めたんだけどね…」

 

 

「もう一度戻れるって言ったら…?君たちはどうする…?」

「そんなこと言ったって…もう円環は閉じたじゃないか。」

 

 

 

 

「一つだけ方法がある。」

 

 

 

 

 

 

「は?」

「いや、ないと思うじゃん。でもあるんだよねー。」

 

 

「レイ、このバカの口にゴミでも入れて黙らせて。」

「そうしたいところだけど、どうやらほんとっぽいのよ。」

「どうゆうこと!」

 

 

「カヲル君、つまりどういうことなの?」

「難しい話になるから気をつけて聞いてね。」

そして渚カヲル、いや、第17使徒ダブリスとして、話し始めた。

 

「シンジ君たちはネオンジェネシスで世界をやり直した。いわば、過去にあったセカンドインパクトもろもろからエヴァに繋がるまでの話をなかったこととして上書きした。でも、全てを上書きしたわけじゃない。例えば人物やエヴァに関わらない文明や文化はそのまま流用した。つまりその部分は上書きされてるわけじゃない。

だから、もし…」

「「「もし…?」」」

「もし、前の世界で生き残ることができたならこの世界でもまた会えるということだよ。」

 

あまりの突飛な、しかし現実味のある発想に一同動揺を隠せない。

「過去に戻ることなんて、前の世界に戻るなんてどうすりゃいいのよ!」

もっともな追及を前にカヲルは不意にシンジに向き合う。

「シンジ君、君はおっちょこちょいだね。」

「えっ?」

「世界を書き換えたのに、まだ僕に使徒の搾りかすが残ってる。この力を使えば、あと一回くらいは無理をしても何とかなると思うよ。」

「何とかって…」

「そこはご都合主義的な力だから使徒の力なんて。」

 

「詳しいことを言うと、君たちにはこれまでの世界、つまり上書きする前のログの中に入り込んでもらう。もう終わった世界だから、結末を変えるのは容易じゃない。そこでマリさんを使う。マリさんが君たちと関わりがなかった世界線があるだろう。その世界線に無理やりマリさんをねじ込んで、君たちと関わりがあるようにする。そうすれば、世界線が変わる。あとは君たちがどう動くかだ。最後の世界をその世界だった、と事実を曲げてしまえば、そこで生き残った人は、この世界でも生きている事になる。」

「そしたらミサトや加持さんとまた会えるのね!」

「そういうことになるね。」

 

 

改めてカヲルは残りの4人(一人寝ている)に向き直る。

「シンジ君にアスカ、本当に行くのかい?」

「うん、また会えたなら、お礼が言いたい。感謝してもしきれないほどのことをしてもらった。それなのに死んでしまったなんてつらいもの。」

「そうね、もう一度会えたらなんて思ってたんだもの、躊躇する理由がないわ。」

「もう一度エヴァにのって、戦うことになるんだよ。もしも死んでしまったりしたらもう二度と戻ってこれないよ。」

「私たちをなめるんじゃないわよ!天下のエヴァンゲリオンエースパイロットのアスカ様とシンジ様よ。レイもね!」

「レイ。マリさんはしょうがないにしても僕は君まで連れて行くのはすこし気が引ける。ほんとは君に大変な目にもう一度会ってほしくない…でも…」

「これ以上言わなくていいわカヲル。私も行く。お兄ちゃんとお姉ちゃんの力になりたい。」

ここでマリの話が出てもスルーされる事に扱いの悪さが伺える。

 

 

「そっか。じゃあみんなで、いこうか。」

「行くってそもそもどうやるのよ。」

「この部屋の中に僕が無理やり『入り口』を作る。その中に入れば、向こうの世界の僕たちにたどり着く。帰りも、同じようにやれば帰って来れるはず。まあ、その世界に行くのは正確には意識だけなんだけどね。」

「なるほど。」

 

 

 

 

 

「じゃあ、入り口を作るよ。」

そう言うと、カヲルは目を閉じた。

その刹那、部屋の真ん中に大きな黒い円ができた。

 

カヲルは目を開ける。

 

その目は、

 

赤く輝いていた。

 

 

 

 

「まずはマリさんから…」

そう言うと、寝ているマリの手を円の縁に触れさせた。

 

「あっ!!」

その瞬間、マリの体が円の中に吸い込まれた。

あっという間に体が見えなくなっていく。

 

「大丈夫。僕を信じて。次はレイ。」

「わかった。」

 

その手を円に触れさせようとする。

 

その手は、少し震えている。

 

「大丈夫よレイ。すぐに私たちもそっちいくわ。」

「お兄ちゃん…お姉ちゃん…カヲル…、あっちで待ってるから。カヲルも絶対来てよ。」

そう言い切ると、一思いに円の中に踏み込んだ。

 

 

「アスカ、次は君だ。」

「アスカ大丈夫。何とかしてすぐコンタクト取るよ。すぐに会おうね。」

「あったりまえよ!ミサトと加持さんを取り戻すのよ!」

そう言うとジャンプして飛び込んだ。

 

 

「シンジ君。君の番だ。」

「うん、カヲル君。あの…」

「大丈夫。また使徒になったとしても、すぐにゼーレなんか裏切る。君にあんな思いをさせたくないからね。」

「よかった。じゃあ、いくよ。」

晴々とした表情で、円の中に入って行った。

 

 

「さあ、僕か…」

最後に残されたカヲルは円の中を覗き込む。伝わってくるのは漆黒の、かつ温かみのある雰囲気であった。

「みんなちゃんとたどり着いたみたいだね。じゃあ、僕も行くとするか。シンジ君を助けなくては。」

そう言うと、円の中に顔を入れ、意識はその中に吸い込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ただいま、特別非常事態宣言が発令されており、全ての回線が利用不可となっております。』

「ここは…」

シンジは気がつくと電話ボックスの中にいた。

 

「そうか…戻って,来たみたいだな…」

 

 

 

 

 

 

 

一方、ユーロNERVドイツ支部。

(はっ!)

アスカはエントリープラグ内で目を覚ました。

(そうか!私、ユーロでシンクロテスト受けてたっけ。)

『セカンドチルドレン、何か問題でもあるか?』

急に聞こえてくるドイツ語に少し慌てつつ、表面上は冷静に答える。

「いえ、問題ありません。」

 

『セカンド、なんて言った?』

 

 

『…ごめんなさい』

ドイツ語を話すのが久しぶりすぎて、つい日本語で話してしまった。

 

 

 

 

 

 

「戻って来たのね…」

レイは見慣れた天井で目を覚ました。

思い返せば零号機の起動実験中の暴走で怪我をしていたのだった。

「お兄ちゃん、って呼ぶと流石にまずいかなあ…。」

使徒襲来が迫る中そんなことを考えている。呑気である。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやらうまく行ったみたいだね。」

カヲルはゼーレの施設で目が覚めた。サキエル戦時はまだゼーレの施設で軟禁生活をしていた。

(思えば軟禁するような奴らの言うことを聞こうと思うっておかしいよな…)

大して広くない部屋を歩き回ってみる。

「ダブリス、どうかしたか。」

どこからともなく声が聞こえてくる。大方どこかの監視カメラから見ていたのだろう。

「いえ、何でもありません。」

まだ、その時ではないと自分に言い聞かせ唯一の娯楽である音楽を聴く事にした。

 

 

 

 

 

 

 

「どっしぇ〜〜!!ここどこ〜!」

酔って寝ていたマリは、知らない間に飛ばされていたため、訳がわからなかった。ポケットの中には「ごめんマリ。過去に飛ばす事になっちゃった。アスカ」とのメモが入っていた。

「姫〜何じゃこりゃ〜」

 

 




☆次回予告

自らの願いをもう一度叶えるため少年たちは戦いに身を置く。

そこにあるのは天国か地獄か。過酷な運命が待ち受ける!

次回「バック・イン・ザ・第三新東京」

次回もサービスサービスぅ!
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