「レイ…」
「碇司令…」
シンジとゲンドウの和解後、ゲンドウはシンジを連れてレイの入院する病室を訪れていた。
「……。」
「………。」
「…………。」
「……………。」
「あのー、お二人さん?何かしゃべったらいかがでしょうか?」
無口のレイvsコミュ障ゲンドウの無言の睨み合いに飽きたシンジがうざったそうに沈黙を破った。
「父さんも用があるからここへきたんでしょ?もじもじしてないでちゃっちゃと用をいいなよ!」
「す、すまんシンジ…」
「ぷっ、ふふふははは!」
あまりのゲンドウの変貌ぶりについに我慢できなくなったレイが笑い出した。
「れ、レイ…」
「あーおかしい!碇司令がこんなにしてやられてるのなんてはじめて見た。」
ひとしきり笑い終えたレイがやっとこちらを見た。
「碇司令は、お兄ちゃんから全部聞いたみたいね。」
「お、お兄ちゃんだと…?」
「そうよ、どっちかと言ったら我が子に近いのだろうけど…。」
あまりの驚きにサングラスの奥の目を白黒させるが、ただただ笑われるゲンドウである。
「まあそんな笑わずに…父さんもはっきりと言いたいことを言わないと…。」
「あ、ああ…。」
気を取り直すとレイに正面から向き合う。
「レイ、全部シンジに聞かせてもらった。本当にすまないことばかりだ。私のつまらない我儘のために、勝手なことばかりしてきた。謝って赦されることではないのかもしれない。でも、これだけは言わせて欲しい。本当に申し訳なかった。レイのやりたいこと、求めることは出来る限り叶える。今すぐ許してくれとは言わない。ただ、私は変わる。だから、見ていてくれ。」
ここまで言ったところで、サングラスを取り、深く頭を下げた。
「碇司令…。顔をあげて…。」
レイは静かに話し出した。
「簡単には碇司令を赦せない。碇司令はお兄ちゃんからしたら父親かもしれない。でも、私は今まで受けた仕打ち、やらされそうになったことがあるから赦すことは簡単にはしない。赦すか赦さないかはこれからの碇司令の行動次第。」
「本当にすまない、レイ…。」
「謝るなら今から言うことをやって。まず一つ目。私の住むところ。あの団地はいくら何でも人の住むところじゃない。できるならお兄ちゃんたちと同じマンションに住みたい。二つ目。ダミープラグとして使おうとしている私と同じクローンがいるでしょ?もうこれ以上作らないであげて。そしてもう作られてしまった子たちは、彼女らを1人の人間として扱ってあげて。彼女たちはクローンとはいえ、私の立派な妹たちよ。エヴァのパイロットにせざるを得ないとしても、ちゃんと1パイロットとして扱ってあげて。」
「わかった。今すぐ実行に移すとしよう。」
そう述べるとゲンドウはもう一度深く頭を下げて病室を出ていった。
「これでよかったのよね、お兄ちゃん。」
「きっとね。」
その時ふと、あることを思い出してしまった。
「「あ!この部屋監視カメラあるんだった!!」」
その頃リツコのオフィスでは、案の定監視カメラの映像をミサトとリツコで見ていた。
「司令に何があったっての!?ついさっきまでシンジくんとまさに合わないって感じだったのに!リツコなんか知らない?」
「知らないわよ!昨日会った時はこんなじゃなかった。しかもレイも変よ。感情が豊かになって、しかもシンジくんのことをお兄ちゃんと呼んでいた。絶対に何か知ってる。」
「レイとシンジ君ってどういう関係なのよ!リツコ知ってるのよね!」
リツコは言ってしまってから映像を見せたことを後悔した。説明しようとするとNERVの機密に触れなくてはいけない。
「今は話せないけど、知らないはずの情報を彼らは知りすぎていることだけは言える。だから話せるまで待って。」
「リツコが言うならそう言うことにしておくわ。しかし…。」
ここまで言いかけたところで館内放送で呼び出しがあった。
『戦術作戦部作戦局第一課課長葛城ミサト一尉、並びに技術開発部赤木リツコ博士、至急司令執務室にお越しください。碇司令がお呼びです。』
「…、まるで示し合わせたかのように来るわね、呼び出し…。」
「急に呼び出してすまない。」
昨日のあのぶっきらぼうさからは打って変わって、憑き物がおちたかのようなさっぱりとした顔のゲンドウに二人はもはや気味の悪さを感じていた。そしてそんなゲンドウの後ろにはさっきまで父親との対話に緊張していたはずのシンジが笑みを浮かべて立っている。
「碇司令に、シンジ君も…。急にどうしたんですか?」
「葛城君と赤木君には別の話がある。」
そういうと今までトレードマークとしていたサングラスを外し、ミサトに正対した。
「葛城君、君に頼みがある。私の息子を預かってくれないだろうか。」
「ご子息を、ですか?」
「ああ、シンジを一人にするのは私も不安でな。かといって私はほとんど家に帰れておらず一緒に住んでやれない。そこで葛城君、君にシンジを任せたい。お願いできるか?」
そういうと、誰もが初めて見るであろうか、ゲンドウは深く頭を下げた。もはやあきれるとかびっくりするとかそういったレベルの感情を通り越した感慨がミサトとリツコを襲う。
「は、はい!了解しました。」
「それとファーストチルドレン、レイと近々来日するセカンドチルドレンも君のマンションに住まわすことになると思う。よろしく頼んだ。」
「ミサトさん、よろしくお願いします。」
「大丈夫よシンちゃん。さ、そうとわかったら引っ越し準備しますかぁ!」
引っ越しの準備をするために早々に執務室を辞したミサトとシンジの背中を見送ってから、今度はリツコに正対するゲンドウ。
「リツコ君、君に頼みたいこと、もうわかっているだろう?」
「!!」
「見ていただろう?レイの病室の監視カメラ。君なら覗くことは造作もないはずだ。」
「え、ええ。見ていましたが…。」
「あの映像の通りだ。ダミープラグの開発は凍結。いまもうあるダミープラグはレイの妹だということにする。SEELEには凍結したことがばれないようデータを改ざんしてくれ。あと、初号機が取り込んだS2機関についても、取り込んでいないことにしてくれ。あの老人たちにばれるとろくなことがない。できるな。」
「え、ええ。でも人類補完計画のためには…。」
「あれはもういいんだ。あんなものでは、人々の幸せは訪れない。」
もはや悪人面ともいえる陰のある顔から二度と聞けないような思いやりのこもった発言にもはや笑うしかない。
「ふふふ、あなたに何があったっていうんですか?まったく昨日まで何ともなかったっていうのに。」
「時が来たらすべて話す。まだ、全員揃っていない。」
「まさか、セカンドチルドレン…?」
「そうだ。さっきも言っただろう、近々来日すると。」
もはや慣れっこのゲンドウの独断にリツコはうつむくしかなかった。
「ほんと、わがままな人…。」
「すまない。善処する。」
「しっかしうまくやったのね。」
あまりのゲンドウの変わりように嘆息するミサト。
無理もないだろう。つい最近まで『ふっ、出撃。』しかまともなこと言っていなかったのだ。まさかあそこまで父親になれるなど誰も思っていなかっただろう。
「あの無愛想な司令があんな風に頭下げるとは思ってなかったわよ。シンちゃん何したのさ。」
「いやあ特に何も。腹を割って話しただけですよ。」
「腹を割ってねえ…。」
どこか釈然としない様子のミサトに苦笑するしかないシンジ。
(これはほぼ確定であの監視カメラの映像見られたな…。)
大正解である。
「本当に私と同居でいいの?」
「はい!誰かと一緒に食べるご飯のほうがおいしいですから。」
これはシンジの心からの言葉だった。今までは、一人のほうが気楽だとか、周りを気にしなくて済むとか、そういった理由で最初は断ろうとしていたが、あのまがい物だとしても、暖かすぎる『家』を知ってしまってからは、前にはもう戻れないのだ。
「そう。ちょーっち散らかってるけど許してちょ。」
そう言ってもはや慣れ親しんだコンフォート17の最上階までやって来た。
「私も最近ここに引っ越してきたばっかなのよ。さ、上がって。」
「おじゃましま…」
「シンちゃん!ここは今日からあなたの家なのよ!」
シンジはこの一言を待っていた。今日からここは自分の家になるのだと、ミサトの口から聞きたかったのだ。
また、あの日々を過ごせるのだ。
「ただいま!」
「しっかし本当に引っ越してきたばっかりかこれ?ゴミ多すぎるだろ…。」
相変わらずの汚部屋ぶりに驚愕を禁じ得ない。冷蔵庫の中は氷とビール、つまみしかない。本当にまともな人間の生活する場所なのだろうか。どちらかというと山賊とか、海賊のアジトにしか見えない。
前回までは引っ越してきた初日はコンビニ弁当であったが、今回はシンジ自ら志願して食材を買い込み、久しぶりの葛城家の食卓を楽しむべく手料理をふるまうことにした。
ミサトは
『あー、食材なら私が買ってくるわよー。』
なんて言っていたけど、バカ舌すぎて信用できないため、自分で買い出しに出かけた。
「んー!おいしいじゃない!シンジ君まさか料理できるなんてすごいじゃない!」
(その料理の腕はあなたの家に住んで家事をしていたからですけどね…)
やはり過去を知っているというのは不便というか、苦笑いを禁じ得ない。
「あ、そうそう。シンちゃんに渡さなきゃいけないものあったんだ!」
そういうと散らかってるという度合いを超えたミサトの部屋からガサゴソというマンガみたいな音がしてくしゃくしゃになった紙を2枚持ってきた。
「まず一つ目!明日からシンジ君には中学校に通ってもらうわよ!これ必要な書類だから書いといて。住所の欄は家でいいわよ。」
そういって明らかにくしゃくしゃじゃまずそうな書類をこっちによこした。
「そして、二つ目!」
そういってミサトが手に持っていた紙はやけに紙質がよさそうだった。
「えー、辞令!サードチルドレン碇シンジをエヴァンゲリオン初号機パイロットとして、特務一尉に任命する!だって。ま、パイロットとして特例のポジションみたいねー。だからと言って何かできるわけではないんだけど。こういったところがお役所仕事なのよね。」
シンジは開いた口がふさがらなかった。
「あら、びっくりした?」
「え、ええ…。」
「一応うちも軍隊みたいなもんだからね。こういう階級はつくもんよ。」
シンジは戸惑いが隠せない。
前まではこんなことなかった。少なくとも自分にはそんな階級が付くことはなかった。
アスカはついていたような気がするが、あれはユーロ特有の仕組みだと思っていたし、日本ではあまりその階級について触れることもなかった。
「これって綾波さんとか、ほかのパイロットにもついてるんですか?」
「うん、レイもそうだし、今ドイツにいるセカンドチルドレンにもついてるわよ。」
やはりだ。前と話が変わっている。
「さーシンジ君もお風呂入っちゃいなさい!風呂は命の洗濯よ!」
食事もひと段落ついたところでミサトに風呂に入るよう促された。
(そういや前風呂入ったときはペンペンが中にいたんだよな…)
葛城家で暮らす温泉ペンギンに思いをはせる。あの妙に人間じみたペンギンは元気だろうか。
がらがらがら…
やっぱりいた。
「おっさんかよペンペン…」
人間のように湯船でくつろぐペンギン。
「クェ?」
「はは、変わんないや。」
つぶらな瞳でこちらを見つめるペンギン。
「なんか全部君にばれてしまいそうだな…。」
「クェッ!」
ペンペンをひと撫ですると一応ミサトのいるリビングに顔だけ出す。
「ミサトさん!風呂の中になんか変なのが!」
「あー、ペンペンね。温泉ペンギン、鳥の仲間よ。セカンドインパクトまでは結構いたんだけどね…わけあってうちで預かってるの。」
「は、はあ。」
正直知っている情報だったので生返事をするしかない。
片付けも終わり眠ろうとしたとき自室のふすまがそっと開いた。
「シンジ君、起きてる?」
「あ、はい。」
「シンジ君、あなたがしたことは素晴らしいこと、誇ってもいいのよ。」
「そう、ですか?」
「そうよ。」
「でも、けがをした人がいるかもしれない。もしかしたら死ぬ人だって…。」
実際、前まではトウジの妹がけがをしていた。ほかに国連軍や保安部の人だってきっと大勢被害にあっているだろう。
「そうね。それはどうしても否定できないわ。でもねシンジ君、これだけは覚えておいてちょうだい。」
そういうとミサトはシンジを後ろから抱きすくめた。
「あなたが戦ったことで助かった人がいる。死ななくて済んだ人がいる。確かに犠牲は出るかもしれない。でも、私たちが、それ以上に多くの人が救えるように努力しなくちゃいけない。そして、犠牲になった人は私たちが心にずっととどめておかなきゃいけない。忘れるのでも、引きずられるのでもなくて、背負っていくの。そうやって背負うものが多くなることで、人は大きくなっていくのよ。」
忘れるのでも、引きずられるのでもない。背負う。
それが人を成長させていくのだ。
翌日。
「転校生!わしはこうせんと気が済まん!」
そういうとトウジは深く頭を下げた。
「え、あ、ちょっと頭を上げて!どういうことだよ!」
「いや、この前の化け物が出た時わしの妹とはぐれてしもて。そのあとNERVの保安部のあんちゃんたちに見つけてもらったときに、エヴァのパイロットが見つけてくれた言うのを聞いて。ほんまにありがとう!おかげであいつは怪我せんで済んだ。」
「いや、当たり前のことしただけだよ。もし見つけられなかったらと思うとぞっとするけど。」
実際今までの記憶があるから見つけられただけである。エヴァから見た人間なんてコメ粒ほどであるから見つけようと思わなければ見つからない。見つけられたのはもう運でしかない。
「ほんまおおきに、ありがとう!わしは鈴原トウジや!そんでこっちのオタクメガネが…」
「相田ケンスケだ。よろしく。」
「トウジに、ケンスケ…」
あまりの懐かしさに感慨もひとしおである。
今までの世界では、ひたすら2人に迷惑をかけてばかりだった。
トウジが参号機のパイロットに選ばれて、傷つけざるをえなかったこともある。その結果トウジが死んでしまうこともあった。
最後の世界では14年経った大人の2人にどれだけ精神的・身体的に支えられたか。
(今度ばかりは、2人に危険が加わらないように…)
「しかし、ほんまにエヴァに乗っとるなんてすごいやないかセンセ!」
「先生だなんて…そんなもんじゃないよ。守れない命がある。でも少しでも多くの人を助けようともがいてる小さな虫だよ。」
「そうやって考えて動いとるんが凄いんや。ちゃんと考えて日々を生きる言うのはそんな簡単なことやない。」
「トウジ…」
「しかし凄いな碇、どうやったらエヴァのパイロットになれるんだ!?一度でいいから見てみたいなぁ。」
「間違っても使徒が来てるときに見てみようとか思わないでよ。踏みつぶしかねないから。」
実際次に出てくるだろうシャムシエル戦の時、二人がエヴァを一目見ようとシェルターを抜け出して、危うく踏みつぶすところだったのだ。できればそんな苦労をしたくない。
「は、はははそ、そうだよなそうだよな、はははは…」
絶対にやるつもりだったなこれ。
「目標をセンターに入れてスイッチ、目標をセンターに入れてスイッチ、目標を…」
学校が終わり次第シンジはNERVで訓練を受けていた。どうせATフィールドを持つ使徒には効かないのだから、途中から飽きてきて仕方がない。
課題はまだ半ばだったが、リツコが通信で終了を告げた。
『シンジ君お疲れ様。スコアがよかったから早めに切り上げていいわ。その分ちょっと私のオフィス来てちょうだい。』
着替えてリツコのオフィスに向かうとリツコとともに、細身で筋肉質な体格をしたスーツの男が立っていた。
「お疲れ様シンジ君。こちらNERV保安部の坂本さん。」
「坂本です。君が碇シンジ特務一尉だね。」
「保安部?」
シンジにとって、いやエヴァのパイロットにとって保安部はかかわりが薄い部署の一つだ。日々の護衛のために草葉の陰から見守ってもらっていることを知っているが、顔を合わせることはないからだ。
「保安部の人が僕に用ですか?」
「シンジ君にはこれから対人戦を想定して訓練を受けてもらうわ。今日は実銃を扱うそうよ。」
「実銃!?」
もちろんシンジは触ったことなどない。しいて言えばエヴァ越しにパレットライフルや陽電子砲を触ったくらいである。
「碇司令のたっての希望でね。レイもけがが治り次第参加させるつもりだそうよ。」
そこでやっと真意を理解する。
シンジがゲンドウに語ったこの世界の結末。
最後にはゼーレの差し金の戦略自衛隊によるNERV本部攻防戦により多大な人的被害が起きた。
そこでミサトもシンジを庇い命を落としたのだ。
そんな犠牲を二度と起こしてはいけない。
人間は一度間違いを犯さなくてはわからない愚かな生き物である。
でも、二度も同じ間違いをしてしまうほど愚かでないと信じている。
だから、先を見据えてできる限りのことをしようと決めたのだろう。
「すごいじゃないか碇一尉!本当に初めて実銃を扱うのかい!?」
「もちろん初めてですよ。たださっきまでエヴァ越しにライフル触ってましたけど…。」
手始めに地下の射撃練習場で練習用の拳銃を撃っていた。
手渡されたのはなかなか古めかしいリボルバー拳銃だった。前の世界でケンスケが読んでいたミリタリー雑誌に載っていた気がする。確か名前はコルトSAAだった気がする。
「結構古い拳銃ですよねこれ。なんでこんな古いのを?」
「リボルバー拳銃は初心者でも暴発させにくいんだ。1発だけ弾倉に入れておけばいいし。第一君たちが使うとしても何発も必要な市街戦をするわけじゃない。最初の数秒を耐えれば僕たち保安部が駆けつけるよ。だとしたら少しでも扱いやすいほうがいいだろ?」
と言っていた。
いつものエヴァの射撃訓練のせいか、初めてにしてはまあまあ当たっている方ではないかとシンジ自身思っていたら、その通りのようで、訓練終了後坂本に声をかけられた。
「碇一尉!初心者とは思えない腕前だ!ぜひとも競技射撃をしてみないか?」
「競技射撃?」
競技射撃とはオリンピックなどでも行われるスポーツとしての射撃で的にどれだけ正確に当てられるかを競う。
「僕はNERVの射撃部をやってるんだけどいかんせんみんな忙しくて入部する人が少なくてね。ぜひとも君に入ってほしいと思って。」
「は、はあ。」
今までそんな実業団のようなチームがあることを知らなかったシンジは、半ば無理やりチームに加入することになった。
(まあ、嫌いじゃないからいいか…。)
帰って夕食を準備している間にミサトがしれっと帰ってきていた。
「あらー!今日はカレー?エビチュが進みそうね!」
と言いながらもう既に缶を空け始めている。
「そんなお酒ばっか飲んでるといつか肝臓がやられますよ。」
「いいのよ~日本人の主食はコメとお酒って決まってるんだから!」「それミサトさんだけですよ。」
食卓についたところでミサトが口を開いた。
「あ、そうそう。明日土曜日だけど何か予定入ってるかしら?」
「特にないですけど、どうかしました?シンクロテストとかはなかったと思いますが…。あ、射撃部の練習に行こうかと思ってましたが、別に明日じゃなくてもいいですよ。」
「あら、シンちゃん射撃部入ったのね!私も一応部員よ!」
「聞きました。作戦部に幽霊部員がいるって。」
「失礼ね!忙しすぎてなかなかいけないだけよ!」
いかにも憮然とした顔で言い張っているが、このずぼらな性格では怪しいものである。
「そんなことより、明日は出かけるわよ!」
「出かけるってどこにですか?」
「ちょっち海の上よ!VTOLでビューンとひとっ飛びよ。」
ここでやっとシンジは一つのことに思い当たった。
アスカだ!
「セカンドチルドレンと顔を合わせておいた方がいいかと思ってね。海の上まで迎えに行くのよ!もちろんレイも一緒よ!」
「ミサトさん、ちょっと連れていきたい人がいるんですけど…。」
「ん?お友達?」
「まあ、そうです。」
「1人2人くらいならいいわよ~」
「すごい!すごいよシンジ!本当に太平洋艦隊のオーバー・ザ・レインボウだ!」
「ほんまにNERVのエヴァのパイロットなんやなセンセ!」
連れて行ったのはエヴァを見たがっていたトウジとケンスケである。
「持つべきものは素晴らしい友人だな!」
キャッキャと喜ぶ二人に顔がほころぶシンジとレイ。その様子をミサトが眺めている。
ミサトは違和感を感じていた。
シンジはいくら報告書と性格が違うとはいえ、内気な少年である。そんな少年が出会って数日とたっていない人間を友人と認め、しかも遠出に誘うことなど少し考えづらい。
そしてレイ。あれだけ他者への関心が薄かったレイがシンジやその友人と馴染んでいるというのはまさに驚くべき変化だ。今日のセカンドチルドレンとの顔合わせにも自ら進んで行くといったのだ。
(私の勘じゃあ絶対裏に何かあるわね…。)
そんな思案も着陸の衝撃でどこかに行ってしまった。
着陸するや否や弐号機があらわになる。
「はえー。このエヴァは赤いんか…。初号機は紫っぽいってセンセが言うとったが…。」
「そうよ!」
頭上を見上げるとそこには…
「ハローミサト!元気してた?」
「まあね、ぼちぼちよ。」
黄色いワンピースを着た懐かしく、美しい少女が立っていた。
シンジはその刹那、彼女を天使だと思った。
(アスカ…。)
「んで、そこのさえない陰気七光りがサードチルドレン碇シンジで、無口ショートヘアがファーストチルドレン綾波レイってわけね!」
「!!なんで知ってるのよ!」
「そりゃあ、これから一緒に戦う仲間でしょう?エリートのアスカ様からしたら当然よ!」
そういうと階段でシンジたちがいる階層へ降りてきた。
「散々に言ってくれるじゃないか、勝気な割にさみしがり屋のセカンドチルドレン惣流・アスカ・ラングレーさん?」
シンジは負けていられない憎まれ口で対抗する。それに腹が立ったアスカはシンジに一気に近寄ると両手でシンジの頬を思い切り引っ張った。
「これがあたしの悪口を言う口か~!」
「はにほ~(何を~)!」
負けじとアスカの頬を引っ張るシンジ。
「はなひなはいほ(離しなさいよ)!」
「ひははね(いやだね)!」
もみ合いをほほえましそうに眺めるレイ。
呆気にとられるミサト。
「「いやーんな感じ!」」
とにやけるケンスケとトウジ。
まさに青春ここにあり、といった風である。
もみ合ったままの二人はしれーっとレイを連れて艦橋の人目がない先端部に来ていた。
「改めて、久しぶりねシンジ、そしてレイ。会いたかった…。」
そういうや否やシンジに抱き着き泣き出すアスカ。
「会いたかったよアスカ。何の連絡もできなくてごめんね。まだこっちに慣れてなくて…。」
「本当は怒りたいけど、許す。やっと会えたから。」
「お兄ちゃんにお姉ちゃんもやっと会えた。よかった…」
「ちょっとお三方、だれかお忘れじゃあありませんか!?」
「「「…。なんか聞こえた気がするけど、気のせいだよね。」」」
「だれが気のせいじゃー!」
そこにはどこぞの真希波マリがいた。
「ワンコ君やってくれたにゃ!?私が酔いつぶれている間にこんな世界にも一度送り込むなんて…。よくも~」
そういうと感動の再会中の三人のほうに突っ込んできた。が、
「ぐふぅっ!」
「私たちの邪魔をするんじゃない!」
アスカの強烈なけりがお見舞いされた。
「そんな…。ひどいじゃないか姫…」
とことん不遇であるとしか言いようがない。
☆次回予告
ようやく始まるLAS。しかしそんな毎日にも使徒はやってくる。
ついに始まる第4使徒シャムシエル戦。あつまったチルドレンはどうやって倒すのか!?
次回「ヒトリノ夜、フタリノ夜」
次回もサービスしちゃうわよ!