艦船擬人化ですが『艦隊これくしょん』の艦娘とは、全く別物です。
既に存在する艦船1つ1つに宿る命と心が、乙女の姿を取った存在です。
艦魂。それは「フネ」を愛するものたちの語り継ぐ伝説。
彼らは、彼らの愛する「フネ」に、命と心が宿ると信じた。
故に「それ」ではなく「彼女」と呼んだ。
故に彼らは信じる。目に見えないだけ、耳に聞こえないだけ。
1パイの「フネ」には、必ず1人の「彼女」が居る。
若く美しい乙女の姿をした、心優しき精霊。
依代となる「フネ」が水上に誕生するとともに宿り、その依代が「フネ」としての生涯を終えるとその存在が消えるという。
その「彼女」たちを何が生み出してきたか。
もしも其れは「フネ」を愛するものたちの想いが生み出したのなら、もしも「名」という「言霊(ことだま)」を受け継ぐときには、その命と心は受け継がれるのだろうか。
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また、1隻の「フネ」が誕生する時が来た。
粛々と式典は進む。
命名書が読み上げられ、今日の「この」式典のために注文された儀礼用の銀の小斧が振り上げられて、檀上(だんじょう)の紅白の飾り綱に振り下ろされた。
式台の目前の舳先(へさき)に飾られていた薬玉(くすだま)が割れて開き、紙吹雪が舞い散って鳩が飛翔する。
そして、命名された艦名を記した垂れ幕がぶら下がった。
「進水作業始め!」
軍楽隊から高鳴る「軍艦マーチ」に負けまいとするかの様に号令が伝えられて、やがて静々と船体が動き始めた。
ドックの向こうの海へと………。
……。
…誰かには見えていただろうか。
いつしか、甲板上に人影が集まっていた。
何故か帝国海軍の軍服姿の、若く美しい容姿の乙女たち。
それは「彼女」の戦友となる「フネ」を依代とする心と命が集まった姿だった。
そして、祝福する「彼女たち」の中央に光の粒子が集まって、そして新たに生み出された乙女の姿を取った。
その間も「彼女」の依代と成った「フネ」は、海へと進み出ようとしていた………。
……。
…瀬戸内海西部、柱島泊地。
内海の内側で更に幾つかの島々に囲まれた静かな水面。
「戦前」から太平洋戦争中期までの「当時」連合艦隊の集結地と成っていた。
「外海」に比較すれば波の穏やかな瀬戸内海は、出来立ての新造艦の試運転には都合が好い。
同時に「国内」である事は、秘密保持の上からも又、都合が好かった。
そのため、間近(まぢか)の呉海軍工廠以外の造船所で建造された艦艇でも、試運転の時には柱島泊地へと回航されて来る事が、少なく無かった………。
……。
…同時に、それは出会いの場所でもあった。
多くの場合、艦船は同型の姉妹艦が建造される。
例えば、戦前の帝国海軍であれば、戦艦や巡洋艦は同型4艦で戦隊を組むのが原則だった。
一方で「インフラ」等の問題、例えば戦艦や空母程の大型艦ともなれば、同時に建造できるドックや船台が1ヶ所の造船所で1つしか空いていないという事が珍しくも無かった。
そしてそもそも、それだけ大規模な造船所や海軍工廠の数も限られていた為に建造場所が国内各地に散らばってしまうという事情も又、存在していた。
そうした事情の為に、バラバラの造船所で建造される同型艦たちを「フネ」を愛するものたちは、姉妹と呼んだ。
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その時もまた、1隻の新造艦が進水後の艤装工事も終了して、試運転のために柱島泊地へと回航されて来た。
その艦上に立つ1人の乙女。この艦の心と命である艦魂。
彼女を出迎えるのは、これから戦友とも成り、先輩にも当る現役の停泊艦たち。
そして「彼女」の姉たち。
「彼女」は、同型の姉妹艦4艦中の4番艦だった………。
……。
…やがて、艦上に光の粒子と共に、出迎る艦魂たちが出現して彼女を祝福した。
その中央で「彼女」を歓迎する、何処かに面影のある「3人」の乙女。
今、姉妹の出会いの時が来ていた。
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新たな短小編集の投稿を始めました。
以前に他のサイトに投稿した作品の再投稿ですので、連続投稿も可能かと思います。