転生したらPSYREN世界だった件――ヒリューさんの強火ファンになっちゃったので推しの為に踏み台やる   作:lukewarm

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作者は小説版未読です。小説版関わらず設定間違い等あったらごめんなさい。
小説版読みてえんだけどなー電子書籍販売してくんねーかなー。

あと原作で描写されていない設定については全て捏造なのでご了承ください。


転生したらPSYREN世界だった件

 俺は前世の記憶がある。

 とはいえ前世で普通の会社員として生きて、盛り上がりなく死んだ記憶だ。

 あまりに平坦な人生で、多少の喜びと多少の後悔しかないようなちっぽけな記憶。

 あの漫画が面白かったゲームが楽しかった。

 大学の時のあの子と仲良くなりたかった。

 そんなちっぽけな記憶だ。

 

 そんな前世の記憶があるからか、この力に気づいたとき、誰にもばれないようにする選択をとれた。

 俺は超能力が使えたのだ。

 物心ついたころ、俺は物体を空に浮かべ動かすことができた。

 いわゆるサイコキネシスだ。

 それに気づいたとき、両親にバレてはいけないと、前世の大人としての記憶が強く訴えた。

 単純に、異物として扱われ排斥される――という以上に、両親がロクデナシの毒親だったからだ。

 俺の能力がバレれば、よくて研究機関に売り飛ばされ、悪ければその場で殴殺だ。

 そんな訳で俺はこの能力を、親にも学校のクソガキにも関わる大人にも。誰にも言わず内緒にし、それでいて隠れて鍛えていた。

 

 鍛えていたのは前世からのちっぽけなプライドからだった。

 俺は特別な存在。

 親も、俺をいじめる連中も、見て見ぬふりをする教師も、俺が本気を出せば一捻りできる。

 そんな気持ちを抱えながら、俺は学生生活を送っていた。

 

 

 やがて時が経ち、高校に入学した。

 前世と異なり、現世は少し時代が古い。ガラケーは現役だし、近くに公衆電話は山ほど残っている。俺が住んでいる町は都会というには少しばかり辺境だが、人々は優しいということもなく適度にドライ。

 ガキの頃はロクデナシの子ということでぼろ服着ていたこともあり、子供社会から排斥されていたという自覚はあった。高校も選ぶ自由などなく、親が決めたところに進むことになった。学費のあまりかからない学校だ。そこは県内で有名な不良校だった。

 学内は治安が悪く、前世ではやったこともない喧嘩を売られることもしょっちゅう。超能力を使ってボロボロにしてやりたいという思いも過るが、それはまずいと理性が押しとどめ、ボコられ続ける日々。

 顔も体も痣だらけ。財布の中身はいつもすっからかん。そんな時、その人に会った。

 

「生意気なヤローだ。テメー名前は?」

「ドラゴン」

 

 そいつは、前世の漫画にいたキャラだった。

 朝河飛龍。漫画、PSYRENに登場するキャラクター。

 俺は地面に倒れ伏した姿で、その言葉を聞いていた。

 

 彼は俺をボコした不良を拳でノした。

 うずくまる俺に手を出してくれるヒリュー。

「あ、ありがとう」

「ああ。気にすんな。お前が喧嘩を売った訳じゃないのは分かってる」

 ヒリューは人助けをしていた。

 理由を語ることはないが、それは原作で独白していたように、タツオのヒーローとしての姿を体現するものだったのだろう。

 俺はそれに、助けられた。

 

「――ッ!!」

 

 俺はその姿に、惚れちまった。

 断っておくが、愛という意味ではない。

 男が兄貴分に憧れる、そういう惚れるだ。

 

「ヒリューさん!」

「あ?」

「俺を、舎弟にしてください!」

 俺がそういうと、ヒリューさんは頭を掻きながら、

「その席は埋まってんだ」

 そういって去って行ってしまった。

 

 原作漫画を読んでいる俺にはその意味が分かる。

 ヒリューの弟分は、ドラゴンの頭。タツオ一人なのだろう。

 そこに新たな手足が加わる余地はない。

 俺は、振られたのだ。

 

 しかし、俺は気づくことができた。現世はPSYRENの世界だ。

 ならばやがて世界はワイズたちが世界を滅ぼし、新たな秩序を作り上げる。

 そしてそれを阻止する、主人公夜科アゲハたち、サイレンドリフト。

 俺もその流れに乗れれば、ヒリューさんと一緒に戦える。

 そう、信じていた。

 

 だが、俺がいくら探そうとも、都市伝説PSYRENは見つからない。

 ヒリューさんは俺につれない態度で、高校を過ごしていた。

 

 どういうことだ……?

 考えて考えて、俺の大してよくない頭脳は、ようやくその可能性にたどり着いた。

 

「この世界にとうとう裁きが下される。時が来た……!

 『転生の日(リバースデイ)』は目前に迫っている!

 後戻りはできない。

 今日をもって……W.I.S.Eは神と共に世界の浄化を始めることを宣言する!」

 

 宣戦の儀だ。

 俺の感じていた予感は現実となった。

 ここは、本編の前の世界。本編で語られた、未来の世界線だ。

 

 この世界では未来がまだ存在していない。

 ネメシスQ、グリゴリ7号は未だ研究所の中。過去へ介入する強力なテレキネシス使いは未来にまだ存在しない。

 つまりこの世界で、ヒリューさんはただのちっぽけなヒーローで。

 俺が彼と共に戦う未来は、存在しないのだ。

 

 よろめく。

 いや、だが、今もヒリューさんは生きている。今の俺なら、こんな世界ならヒリューさんの助けになるはず。

 そう思った俺は、その日彼を探した。

 彼はすぐに見つかった。

 崩壊した街の瓦礫の下で。誰かを庇って。

 

 ふ、ふ。

 フハハハハハハハハ!

 なんてことだ!

 俺は、俺が惚れた兄貴分に何も告げることもできず! 相手にされず! この世界に呑まれていくのか!

 そう思った時、俺の中の、前世の良心が弾けた。

 俺はその時、初めて本気でPSIの力を解き放った。

 

 俺のPSIは龍を象っていた。

 原作、ヒリューさんは竜を模したバースト使いだった。西洋竜のだ。

 俺が放ったのは、龍、東洋竜。蛇のような体躯で空を舞う、豊穣をもたらす神の象徴。

 俺のPSIは崩壊した街で暴れていた。

 

「同胞か」

 覆面をした男たちが、俺の前へ現れた。

「ついてくる気はあるか?」

 顔も名前も分からない。だが俺は知っている。天戯弥勒。W.I.S.E(ワイズ)の首魁。

 そしてヒリューさんの仇。普通に考えたら、憎むべき、殺すべき相手。

 そんな彼の言葉に、

「ああ」

 俺は頷いていた。

 

 俺はヒリューさんと一緒に戦えない。でも、俺はヒリューさん、死んじまったあんたを尊敬している。

 でもさ、この世界は前日譚だ。

 あんたたちの輝く世界が待っていることを俺は知っている。

 そこで、原作であんたは見せ場がなかったよな。

 なら俺があんたの見せ場になってやる。

 兄貴分を立たせるのは、弟分の役目だからな。

 敵になって、あんたの踏み台になる。それが俺の目的だ。

 

 ***

 

 俺はワイズの一員になった。

 合流した俺は、当初ミスラから不審な目を向けられた。

 彼女の未来予知の範疇にいなかったのだろう。原作に存在しない俺は、そのまま未来のイレギュラーのようだ。

 俺は彼女の呼び名の流儀に従い、龍威(ドラゴニア)と名乗った。

 

 しばらくして、爆塵者(イクスプロジア)瞬間移動(テレポーター)が合流。

 ミロク以外の面々はコードネームを名乗るようになる。星将の時の名だな。

 そして約束の涙を手に入れ、ミスラは化身と成った。

 

 まずは世界破壊のレクリエーションだ。

 主要都市を襲撃して破壊する。創造主(クリエーター)禁人種(タヴー)を生み出し蹂躙したり、神刃(カミキリ)が建造物を切断したり、爆塵者(イクスプロジア)が爆破したりと多種多様な破壊をもたらしていく。

 それらに対抗すべく軍隊がやってくるときもあるが、たかが軍に負けるわけない。

 やがて人々はサイキッカーたちに恐怖する。

 そんな中予告される、巨大隕石ウロボロスの地球衝突。人々はいずこかへ逃げ惑う。

 そんな合間に甘き毒薬(キャンディ・マン)の反乱があったが俺の被害はなかったので割愛。

 ウロボロスは無事地球にやってきて、地球の地表を覆い、世界征服は成りましたとさ。

 

 俺もワイズ人員として、多くの戦車飛行機歩兵、その他一般市民を叩き潰した。

 つまり人間を殺した。

 現世の俺は壊れていたようで、人を殺すことになんの躊躇も後悔も覚えなかった。

 元からなのか、それとも憧れが恋しすぎて狂ったのかは俺にもわからない。

 

 世界征服すればあとは基盤づくり。

 クリエーターの能力でワイズの城が作られる。

 そしてミスラからもたらされたイルミナを、原作と同じく、ミロク、グラナ、カプリコを除いた面々はつけることとなった。

 実は世界を滅ぼす最中、多数のサイキッカーがワイズに合流していた。彼らの中には適合できたものもいればできなかったものもいる。原作で登場したスカージのような下部組織連中にあたるやつらだろう。

 俺も下手すれば適合できなかったかもしれないが、俺は俺でこのイルミナ技術が真っ黒な思惑の果てにある産物であることは知っている。細工をさせてもらっていたため、他の連中には内緒だが生き残れた。

 

 生き残った面々の中でも初期からいるメンバーには、星将の座が与えられた。

 俺は第6星将を言い渡された。星将の末席、ドルキの下だ。

 貢献度の面でも戦闘力の面でもシャイナ、ドルキには劣っているつもりはないが、これがミロク、ないしミスラからの評価なのだろう。別にそれでいい。俺の目的はいずれ来るヒリューさんを迎え撃ち、盛大に敗れることなのだから。

 

 それから平穏な日々が続いた。

 太陽光を遮り続ける塔の建造、生き残り集落の潰し。そういった業務をこなし、10年が経った。

 

 それはドルキの担当区からの報告だった。

 塔に近づく何者かが存在する。連絡を受けたシャイナは、持ち前のテレポート能力で俺や他の面々を該当の塔に連れていった。

 そこにいたのは、祭さんだった。

 ドルキや他の面々が攻撃したPSIの余波に紛れ彼女は脱出。去っていく。

 

 俺はこの出来事を受け、改めて未来への希望が湧いた。

 間違いなくグリゴリ7号による過去干渉が始まっている。

 このままいけば、漫画原作の展開が訪れる。

 俺は一層その日を待ち続けた。

 

 そして――

 

 ***

 

「聞きましたか、ドラコ」

 ある日俺の下にシャイナが現れた。

「何がだ?」

「ドルキのことですよ。ドルキが反乱分子に敗れました」

 それを聞き、思わず顔を上げる。

「ドルキが?」

「ええ。反乱分子の黒いバースト使いに敗れました。彼はその汚名をそそぐため、2度目のイルミナス・フォージを選びました。彼がどれだけ持つか楽しみですね」

 フフと冷笑するシャイナ。それを共有するためだけにわざわざこちらへテレポートしてくるとは、やはりこいつは性格が悪い。

「そうか。なるほどな。次、ドルキがその反乱分子とやりあうことがあれば、俺も呼んでくれ。どうなるか見てみたい」

 分かりましたよとシャイナは頷き、テレポートで部屋を去る。

 

 来た、来た、来た。

 待っていた、10年、待っていたぞ。

 ヒリューさん。俺があんたを、決戦に脱落した初期のライバルから、最終決戦に激戦を繰り広げた戦友にしてやる。待っていろ。

 

 

 シャイナに呼ばれ、俺はドルキとアゲハの決戦の舞台へ。

 シャイナがカブトとアゲハ以外を隔離。俺もそちらへ参戦だ。

 

「やあ。俺の顔、わかるかい?」

 俺はヒリューさんに姿を見せた。

 しかしヒリューさんは首をかしげる。

「誰だ……?」

 ヒリューさんは俺の顔を見ても分からない様子。となるとやはり、

「会ったことはないか」

 なんとなく予想していた。ミスラの、クァトネヴァスの未来予知から逃れる存在外対象。それが俺。俺が存在するのは文字通りこの次元だけなのではないかという予想をしていたのだが、あたっていたようだ。

 まあ過去にも俺がいれば、ここにヒリューさんと一緒にいないとは思えないというのが根拠の最たるものだが。

 

「分からないなら俺たちの間に因縁はなかったということだ。

 シャイナ、最初は俺がやる。

 来なよ、第6星将ドラコが相手をしてやる」

 俺は自身のPSIを解き放った。

龍威(ドラゴニア)

 龍の現身が世界に顕現する。

 龍は雄叫びを上げ、周囲を威嚇する。

 

「ぐっ!? なんだこの威圧感は!?」

「特大のバースト!? 僕が見惚れるほどの存在感を放つなんて……」

「これは……! 朝河君! 朧さん! これはバーストとトランスでできた思念体よ! バーストで自分の体を守って! あいつから目を逸らせなくなるわ!」

 

 俺のドラゴニアは雨宮の言う通り、バーストとトランスで構成されたPSIだ。龍とは猛々しく周りを畏怖するもの。俺の深層心理が故か、俺自身の能力適性ゆえか、このPSIは自然とバーストとトランスの特性を帯びていた。

 まず物理的に周囲を打ち払うバースト成分。龍の全体がそれにあたる。

 次に周囲の目を強制的に集めるトランス成分。ドラゴンの核ともいえるそれは、龍の(まなこ)にあたる。

 そして龍への怯えをもたらす強力なトランス成分。ドラゴンの雄叫びにそれが乗る。

 

「俺のドラゴニアを前に、未熟なサイキッカーは立つことさえままならない」

 屈した朧が龍を前に跪く。

「さあ、受け止めてください」

 龍が突撃。牙が彼らを襲う。

 咄嗟によけようとする雨宮、ヒリューさんの二人だが、跪く朧は動けない。

「うおおおおおおおおおお!!!」

 ヒリューさんが龍の尾を具現化し、牙を受ける。が、

「まだまだ柔いですねえ」

 牙は尾を貫き、ヒリューさんに直撃。ヒリューさんは血反吐を吐いて倒れてしまった。

「朝河君!」

「まだ攻撃は終わっていませんよ」

 貫いた龍はその勢いのまま胴を一閃。鞭のような軌道で尾が3人を叩き潰そうとする。

 倒れる二人を庇い、なけなしのライズで対抗しようとする雨宮。これはやってしまったか、と焦るも、ヒリューさんが手をつき、顔を上げていた。

「おおおおおおお!」

 次は龍の両翼が顕現し、こちらの叩きつけを防いだ。

 

 流石はヒリューさんだ! 誰かを守るときヒーローにならんとするとき、その真価を発揮する。

 その姿に俺は惚れたんだ!

 うおおおおさすがヒリューさんだと心の中で喝采を上げる。

 

 竜翼が受け止めた瞬間、雨宮が俺に向かって武器を振るおうとする。しかし龍を前によそ見はできない。

 龍の雄叫びが彼女を竦めさせ、魔眼を煌めかせる。何ものにも怯えぬ戦士の精神が完成していなければ、雄叫びに抗し誘因する瞳を断ち切ることはできない。もう一人の自分を認められない今の雨宮ではなおさら。彼女の視線は強制的に龍へと向き直った。

 彼女は悔し気な表情で、そのまま龍へと接近。頭頂部へと武器の一撃を入れるも。

「硬すぎるっ……!」

 トランス主体の雨宮の武器では、バーストが主成分のドラゴンの鱗を破れない。彼女は俺の前では無力だ。

 

 完全に戦力外の朧、血反吐を吐いて朦朧としているヒリューさん、根本的な破壊力が足りない雨宮。

 星将として強さを示し、またドルキより強いというところは印象付けられただろう。

 

「ふ。満足だ。シャイナ、彼らを素敵な旅へ招待してあげて」

 このまま殺すことはできそうだが、俺もそんなことは望んでいない。

 原作通りになるようシャイナに指示をだす。

「最後まであなたがやればいいではないですか」

 シャイナが嘆息するも。

「まあいいでしょう。私も力の差を見せつけてあげますよ」

 力を誇示したがるプライドが、彼を原作同様の行動へ誘った。

 ヒリューさんを高度4000m紐なしバンジーの旅へ。

 朧をタヴーのゴミ捨て場へ。

 そして雨宮さんを……。

 

 ここで原作ではエルモア・ウッドが登場するはずだが……。

 来ない。

 ここは、本当の意味での1週目だった。

 シャイナが雨宮の頭上に、大量の岩石を落下させる。質量攻撃だ。

 

「これで終わりです」

 雨宮はそうして死んだ。

 

 シャイナと共に、ドルキの下へと戻った。

 そこにはカブト、アゲハ、ドルキ、3人の死体があった。

 カブトは原作同様アゲハを庇っての死。

 アゲハは一矢報いるような描写があったことから、ドルキと刺し違えたのだろう。

 アゲハたち彼らの未来改変はここで終わってしまった。

 

 プツンと意識が途絶える。

 

 ***

 

 俺は、今、朧、ヒリューさん、雨宮の3人を打ち倒していた。

 時間が戻った……?

 困惑するも表に出さずシャイナに後を任せる。

 シャイナが二人を遠方に飛ばし、雨宮に手をかけようとしたところで、シャオとフレデリカが現れた。

 

 そこから先は原作同様だった。

 シャオがシャイナを払い、雨宮が奇襲。避けたところをフレデリカが狙い撃ち。

 そしてシャイナがテレポートで逃げ帰る……あっ、ちょっ、まてーーい!!

 

「さーて、高みの見物をしていたようだけど、お仲間は逃げちゃったみたいよ?」

 フレデリカが不敵にこちらを挑発する。

 俺は肩をすくめて、

「降参だ降参。お前はともかく、あっちは相性が悪い」

 俺はシャオを見ながらそう言った。

 アンチサイキック。原理が分からないものの、自由にさせればバースト系能力は全て消されると考えていいだろう。俺のドラゴニアはバーストトランスの具現化だ。相手に消させる余裕を与えなければ大丈夫かもしれないが、フレデリカという強力な後衛を前に、そんな猶予を奪い去ることは不可能だろう。

「であれば、ワイズの情報を吐いていただきたいのですが」

 シャオがそう言うも、俺の回答は、

「NOだ」

 ドラゴニアを顕現させ、その上に乗る。ドラゴニアはシャオから遠ざかるように空へと舞う。

「逃がすと思ってんの?」

 フレデリカがサラマンドラをこちらへと向ける。

「龍とは慈雨の象徴だ!」

 ドラゴニアが舞うと空に雨が舞う。水のバーストだ。

 数多の雨粒が盾となりて、サラマンドラの炎を減衰する。

 威力の削がれた炎は、龍の鱗に弾かれ消える。

「逃げるのが目的なんでね」

 ある程度距離を稼げれば、向こうからの狙撃で落ちる状態にはならねえ。

 無事撤退することができた。

 

 

 近くの制御塔でシャイナを呼び出し、今度こそ拠点に戻った。

 そこでようやく先ほどの事象を振り返ることができた。

 この世界がちゃんと本編時空でよかった

 確か原作では、アゲハたちがエルモアのばあさんを飛行機事故から助けるため奮闘。改変の直後に呼び出しで未来送りという流れだったはず。

 原作の流れとしてはそうなるが、1週目正史ではその呼び出しから帰還できず行方不明となる。

 その結果があった上で、エルモア・ウッド達子供らが奮起し、アゲハたちを救出する時間軸に世界が上書き改変される。

 俺が時間が戻ったと錯覚したのは、恐らく世界が上書きされた結果だ。過去に俺は存在しないが、過去の変更の結果は受けるということか。難儀な存在だ。

 

 さておき、無事原作のルートに乗って俺の存在も演出できた。上々の結果と言えるだろう。

 あ、そういえばヒリューさん原作より痛めつけられてバンジーするけど大丈夫かな? まあヒリューさんだし大丈夫か。

 俺の憧れの人があんなところで死ぬわけないからな!

 

 よーしこれでヒリューさんとの因縁はばっちりだ。

 あとは最終決戦、雲を晴らすだけのつまんないお仕事から、俺との決戦に持ち込んじゃうぞー。

 この世界線、読者がいれば大歓喜間違いなしだ。

 最初ライバル然として登場し、フェードアウトしてしまったヒリューさんが、あのときは手も足も出なかった龍使いにリベンジ! ド派手なドラゴンバトルは朧にも負けない大活躍間違いなしだ。

 きっと読者はドルキよりもシャイナよりも格上のすんごい敵をヒリューさんが倒してくれるとワクワクしてるに違いない。

 うーんできればグラナクラスであるとアピールしたいんだけど、流石の俺も実験を受けたサイキッカーレベルの出力は出せないからなー、それっぽい演出して誤認させてやりたいぜ。

 最終決戦の演出をあれこれ考え始める俺であった。

 

 ***

 

 時は瞬く間に過ぎてゆく。

 反乱分子の情報収集の為にジュナスが島原に行ったりした。

 あと知ってるはずなのに知らない間に星将が2人増えていた。

 俺の星将のナンバーは8らしい。キャンディマンの現代での死亡によってまた世界が変わったようだ。

 

 そしてジュナス、ヴィーゴがエルモア・ウッドを襲撃することになったようだ。

 スカージのメンバーを集め、準備を進めている。

 折角なので俺は、スカージのオドに会いに行った。要は望月朧だ。

 

「やあオド。調子はどうだい?」

 俺が話しかけると、朧は身振り手振りで問題ない旨を告げる。

 とはいえこちらを訝しんでそうだ。何故わざわざ自分にと。

「ふふ。君のところのリーダー、デルボロやその上のジュナスも結構節穴だからね。頑張っている部下を褒めたりしてないんじゃないかと思って、こちらから激励しに来たのさ」

 なんて嘯くと、分かるほど彼はこちらを警戒しだした。

 うん、原作を知っているから当然正体も分かっているさ。

 

 とはいえここで戦り合うのは本意ではない。

「ああ、本当はこれを見てもらいたかったんだ。君の目から見ると、これはどう映るのかな?」

 俺はそう言って、喉元にある俺のイルミナを強調した。

 俺のイルミナは、俺のPSIによってちょっとした細工がされている。

 それが全身イルミナ移植人間の朧にとってどう感じるのか、それが気になっていたのだ。

 

 彼は俺のイルミナを見て沈黙する。

 未だにオドの役に準じて言葉を発しない朧に、テレパスを繋げて問いかける。

『喋れなくてもテレパスはできるだろう?』

 そう言えば、少し待ってから、

『イルミナの力を食い合っている』

 それだけ告げて、彼は俺の前から辞した。

 やはり彼ほどになると分かるのか。

 ミスラにも気づかれてるかな? まあどちらでもいいか。影響はない。

 

 

 エルモア・ウッドの襲撃は終了。

 ヴィーゴは戻り、ジュナスは負傷。スカージも半壊だ。

 となれば次は未来編最終決戦。

 アストラル・ナーヴァ襲撃が行われる。

 

 原作ではヒリューさんはそこで、僻地の神経制御塔の派遣任務で終わってしまった。

 同タイミングで離脱した朧が決戦で大暴れしたにもかかわらず、ヒリューさんがやったのは雑魚狩りだけ。

 最終決戦にはついていけないからなと、某龍球漫画のように揶揄される始末。

 俺がいるからにはそうはさせない。

 神経制御塔でのあれこれに、俺が星将としてちょっかいをかけ、ドルキやシャイナ、ジュナスなんかよりもやばいところを見せて、それをヒリューさんが打ち倒せば彼の株は上がるだろう。

 

 アストラル・ナーヴァで過ごしていると、爆音が響き渡った。

 フレデリカとウラヌスの激突だ。

 グラナからテレパスで迎撃準備の声。

 俺はそれを聞き、一目散にドラゴニアで飛び立った。

 目指すはヒリューさんらのいる神経制御塔。さすがに原作の場所までは覚えていなかったが、首都圏のもっとも監視の緩い制御塔という特徴を調べれていたから分かっている。

 さあ、最終決戦だ。

 待ってろよ、ヒリューさん!

 

 ***

 

 制御塔についた俺はまずは周囲一帯に大雨を降らせる。

 急な天候変化。塔からはそれに気づいたのか、タツオがこちらを覗いていた。

 

 彼らに聞こえるよう、広域テレパスを発する。

『反乱分子諸君。君たちがそこで悪巧みしているのは分かっている。出てきたまえ』

 ヒリューさんとタツオが塔から出てきた。

「てめぇは!」

「やあ久しぶりだな。あの時の男がこんな大それたことを企むとはな。俺に勝てないから小細工に走るなんて呆れたものだ」

 やれやれと露骨に挑発をする。

 

「試してみるか? 成長した俺のドラゴンテイルをよお」

「戦うつもりがあるなら塔から出てこい。塔ごと壊してもいいが、修理は面倒なんだ。君たちもその方が都合がいいだろう?」

 俺が問いかければ、ヒリューさんとタツオは具現化したドラゴンに乗り、雨の中こちらへやってきた。

「二人、か」

「俺たちは『ミラクルドラゴン』。二人で一匹の竜だ。お前ひとりで、俺たちを倒せるかな?」

 二人がかりとなると……想定していたより出力を上げた方がいいか。俺の脅威度が低ければ、他の面々は1対1で戦っていたのにヒリューさんだけ二人がかりかよと笑われかねない。

「問題ない。第8星将ドラコ、参る。すぐに終わってくれるなよ」

 

 先手はこちら。

 龍が空を舞い、彼らのドラゴンへ突進。ドラゴンは正面から迎撃。

「ドラゴンテイル!」

 尾が龍の頭部へ叩きつけられる。龍は俺に当たらないよう調整だけして頭突き。結果は相打ち。ドラゴンの尾は僅かにひび割れ、龍も頭部の鱗が割れて不服そうに唸りを鳴らす。

 さすがヒリューさんだ。10年鍛えた俺のドラゴニアと、()()()()()()()互角とは。

 そのまま交錯。

 龍はそのままドラゴンの胴体に巻き付こうと付く。

 

「タツオ!」

「はい!」

 タツオが銃で射撃。スナイパーライフルだろうにその距離で通用するのかと思ったが、なんと銃から炸裂するようにバースト波動が発射された。PSIでできた武器だ。見た目通りの動きするわけじゃないということか。

 龍の横腹を穿つように散弾が飛び、鱗を弾けさせる。龍が唸りを上げて、巻き付こうとする動きを止めた。

「なんだ? まるで生きてるみたいに……」

 俺のPSIの欠点だ。ドラゴニアは龍そのものである。恐怖を呼び起こす咆哮も、視線を縛る魔眼も、全ては幻想の中のリアリティーによって齎される。龍は神であり生物でもある。俺の意図する動きをすれども、生物としての反射からは逃れられない。

 

 俺は龍へと再度指示。今度はやつらのいるドラゴン頭部・胴体上部から離れた、尻尾目掛けて突っ込ませた。

 それにはドラゴンが応戦。尾の一撃が龍へと向かうが――

「それは読めている」

 龍が尾を流すように受け止める。尾は鱗を流れるように滑り、巻き付くように龍の胴体が絡みついた。そのまま締め付け。生物であれば痛痒を感じて振り払う形になるだろうが、そこは俺のとは異なる純粋なPSI。そういった生物的な動きは感じない。

「へっ。PSIに締めが効くかよ」

「ああ。俺もそう思うよ」

 締め付けは攻撃の前段階だ。俺のPSIはバーストとトランスの複合系。純粋なバーストの破壊力が五分なら、トランスで攻めるまで。

 

 龍がドラゴンの尻尾に噛みつく。鱗を超えて突き立った牙は、そのエネルギーをドラゴンの尾に注入する。

 龍が締め付けを止めると、ドラゴンの尾がヒリューさん目掛けて振るわれた。

「何!?」

「朝河さん!」

 自前のライズで尾の一撃を受け止めた。しかし自身のバーストによる一撃だ。両腕でガードをしていたが、ダメージはなかなかと見た。

 龍の牙に含まれるは、昏迷のトランス。基本的にバーストの出力で勝ちきれない相手に対するサブプランだ。牙に汚染されたバーストは、トランスを弾くという性質をトランスが馴染むという性質に上書きされる。汚染が進めばPSIを放つ本人の制御から離れ、こちらのトランス能力の受信機となって意のままに動くようになる。人間に直接突き立てることができればそのまま洗脳コースだ。

 字面だけ言えば強力だが、これは牙が通る相手にしか効果がない。高硬度であるカイルのマテリアル・ハイには通らないだろうし、炎の塊であるフレデリカのサラマンドラは牙の注入前に龍自身が接敵を嫌がるだろう。触れれば消し飛ぶアゲハのメルゼズ・ドアは言うまでもない。通る相手の方が少ない。

 だがヒリューさんには通る。

 

 ドラゴンは牙を受けた尾から先だけが暴走したかの如く、彼らを襲う。

「さあ次だ」

 龍は再度ドラゴンに取り付こうとする。狙いは翼だ。

 動きを見て、ドラゴンは龍から距離をとるものの、尾が暴れて思うように距離が取れない。

 タツオがドラゴンの頭の上から銃を構えた。狙いは――ドラゴンの尾だ。

 銃から放たれたPSIは、ドラゴンの尾を根本から弾き飛ばした。

「すいません朝河さんドラゴンを……」

「いや、助かった」

 

 ドラゴンを墜落させるのは失敗したが、相手の戦力ダウンには間違いない。

 ここがチャンス。

「受けてみろ! 慈雨は転じて天災となる」

 降り注ぐ雨が一塊となりて龍の放つ一筋の洪水となる。

「"雨龍招来"」

 

「コイツは……! タツオ!」

「はい! 朝河さん!」

 遠目からでも、二人は呼吸を合わせる姿が見て取れた。二人のPSIがシンクロしていく。

「「ドラゴンブレス!!」」

 ヒリューさんのドラゴンからPSIがタツオに流れ込み、それをタツオの銃がエネルギーとして吐き出す。

 ミラクルドラゴン。タツオが頭でヒリューが胴体。

 奇跡の竜の結晶が、そのドラゴンブレスか。

 

「「うおおおおおおおおおお!!!」」

 炎の吐息が、雨龍を打ち破った。

 炎はそのまま龍へと向かう。龍の首元に大穴が開いた。

「は、ハハ!」

 龍が墜落する。

「流石! 流石ヒリューさんと一の舎弟のコンビだ! 俺の龍が真っ向から敗れるなんて!」

 墜落する龍から俺は思わず高笑いを上げる。あのヒリューさんが、()の俺を超えてくれた! やっぱりヒリューさんは最高だ!

「だが、俺はまだ生きているぞ!」

 俺の叫びに、

「いいえ、もう終わりです」

 タツオの声が聞こえた。

 ドラゴンが俺と龍から距離をとる。タツオは銃を天に向け――まさか!?

「あなたがやってきたとき、クサカベさんたちにお願いしておきました。ここ一帯の雲を薄くしてくれと。間に合ったようですね」

 俺の直上の雲を吹き払った。

 

「ぐあああああああああああああ」

 太陽光汚染! やはり! やはりやはりやはり!

 やはり!

「やってくれると、信じていたぞ」

 さあ、強大なボスがやることは皆分かるかな?

 そう、第二形態だ。

 

 ***

 

「なんとか勝てたな」

 俺はドラゴンの頭で安堵するタツオとうなずき合った。

 強敵だった。龍を扱う強力なバーストトランス使い。俺一人では勝てなかっただろう。

 太陽を避けて塔へと帰還しようとした時、

「龍の逆鱗を刺激してはいけないと聞かされたことはなかったか?」

 バッと俺たちは振り返った。

 

「馬鹿な!?」

 アイツは首にイルミナを付けていて、紛れもなく太陽光に焼かれていた。その叫びも、動かなくなっていたことも確認し……叫び?

 思い返せば、その叫びはどこか、嘘くさくなかったか?

 本気の苦しみを伴うような叫びではなく、ただ演技としてあげているような……。

 

 ヤツは首元についていたイルミナを手で転がしていた。

 イルミナの除去! それがあればタツオは!

 思わず手が伸びそうになる事実に言葉が出ない。

「どうやって太陽光を……」

 タツオの呟きに、ドラコといった星将が答えた。

「ハハハ! 単純さ! 俺は元々、イルミナを付けていない!!」

 ヤツは驚きの事実を語った。

「イルミナの接合箇所に龍の鱗を挟んでいたのさ。イルミナは龍鱗を侵蝕しようとし、龍鱗はイルミナを飲み込もうとする。一進一退の攻防。それに俺のPSIを注ぎ込んでいた!!」

 なん……だと……!?

「意味が分かったようだな。そう、俺はイルミナの恩恵も受けていなければ、それを抑え込むために力を使っていた」

 つまり。

「ここからが俺のフルパワーだ」

 

 化け物だ。

 俺が他に見たことある星将はシャイナとドルキ。だがその二人と比較しても、先ほどまでのこいつは強さに遜色はなかった。だというのに、こいつはイルミナのためにパワーダウンしていただと。

 ありえない。

「さあ! とくと見よ! これがイルミナに頼っていてはたどり着けない、PSIの第4の力!」

 ヤツの体がPSIの力と一体化する。なんだこれは!?

「ノヴァ」

 ヤツの体から莫大なPSIの力が溢れ出す。

 瞬く間に姿はPSIに覆われ……巨大な龍の威容となった。

龍威新星(ドラゴニア・ノヴァ)

 

 先ほどまでは、俺のドラゴンの全長の2倍くらいの大きさだった。それはあくまで細長い龍だからこそ、俺のドラゴンより大きいのだと、納得できる大きさでしかなかった。

 これは違う。

 先の10倍は越え、見下ろすその姿はまさしく人の手の届かない……神の領域。

 

「さあ! ヒリューさん! この俺を! 打ち破ってくれよお!」

 龍は揚々と制御塔でとぐろを巻き、俺たちを見下ろした。

 

 

 龍は先ほど俺たちが必死で破った雨の奔流を、些末な技のように連打する。

 迎撃は不可能。俺は全力でドラゴンを手繰り、それらから逃れる。

 くっ。

 必死に逃れながら頭を働かせるが、俺には打開する手段が思い浮かばない。

 それでも避けなければ間違いなく死ぬ。必死に敵の攻撃をよけ続ける。

「朝河さん」

 タツオの方に少しだけ目線をやる。

「このままでは間違いなくジリ貧です」

 ああ。

「ですが真っ向からあれを破る手段がありません」

 ああ。

「一か八か、あの龍の口に突入しませんか」

「突入!?」

「あの龍のPSIは、生き物のように動いていました。傷つけば顔を顰め、危険からは自然と距離をとる。生物として模されたPSIであれば、腹の中は脆いやもと」

 なるほど。

「分かった。タツオ。言ってくれ。俺たちはミラクルドラゴン。お前の指示を俺がこなす」

 俺の言葉に一息置いて、

「朝河さん、いえ飛龍さん、ヤツの口腔へ。ドラコ本体を直接叩いてください!」

 その言葉に俺はドラゴンを飛ばした。

 

 龍は制御塔から離れ、雲間から見下ろしていた。

 ヤツの水流はその周囲から飛んでき続けている。近づくということは、避けるまでの時間が短くなるということだ。

 俺は全身の細胞を動員し、僅かなPSIの変化、雨の動きを感じ続ける。

 水流が迸るたびにドラゴンの身が削れていく。だが飛ぶための翼だけは死守して龍へと迫る。

 やがてヤツの正面へとたどり着いた。

 

「狙いは分かっている。その意気やよし。だが、吐息を放つのがドラゴンだけと思わないでいただこう」

 ヤツの口腔には溢れ出すPSIエネルギー。

「これを超えねば、我が腹は狙えぬぞ」

 放たれる龍の息。烈風がこちらを貫かんとする。

「タツオオオオオオ!」

 俺のPSIをありったけ絞り出し、ドラゴンを通じてタツオへ託す。

「「ドラゴンブレス!!!!」」

 渾身の炎が、烈風とぶつかり合う。

 だが二人の最大の一撃をもってしても、烈風に押し負けている。

 やはり超えられないのか!?

 

「飛龍さん」

 タツオは龍とその烈風を睨み続けている。後ろの俺からはタツオの顔が見えない。

「後は任せました」

 タツオの放つドラゴンブレスは、僅かに角度を変え、烈風の下を叩く。烈風は下部の勢いが削がれ、その分上部の勢いが増した。

 タツオは烈風に巻き込まれ、ドラゴンの頭部から投げ出された。

 タツオ、お前分かっていたんだろう。俺たちじゃあいつの一撃を受け止められない。だから、こんな……!

 俺はタツオを振り返らなかった。

 俺は、ミラクルドラゴンの体。頭の指示は絶対にこなす。

 

 ドラゴンを僅かに弱まった烈風下部から飛ばし、口腔に滑り込ませる。

 ぼろぼろのドラゴンでそのまま喉元へ。強烈な体当たり。内部は予想通り遥かに脆く、大きな穴が開いた。

 そしてそこにヤツがいた。

「ドラコオオオオオ!」

 第8星将ドラコ。喉奥に埋まる形でいたそいつはこちらを見やり、満面の笑顔で拳を握った。

「ヒリューさあああああん!!」

 俺はドラゴンから跳び、ライズで底上げした渾身の力を込めてヤツの顔面をぶん殴った。

 ヤツの拳は俺の拳と交差するように伸びていた。

 クロスカウンター。

 ヤツは意識を失ったのか、ガクッと倒れこみ、そして龍が崩れ始めた。

 

 俺も、とっくにドラゴンは消えている。

 投げ出された俺たちがいたのは空中。

 また、地上数千メートルからの落下だ。

 だが、生き残る力は少しも残ってねえ。

 死ぬ。

 だが悔いはねえ。

 タツオと共にここで死ぬ。

 

 俺は自由落下に身を任せた。

 

 

 ***

 

 はーいということでネタバレタイムだよ。

 

 ノヴァを使ってドラゴンを作った~?

 それ、ウ ソ。

 僕ノヴァの訓練したけどノヴァ使えませんでしたー!

 いやー存在自体知っていたから10年かけて頑張ってたんだけどねー、ノヴァの解放率70%くらいが限界で、それ以上制御できませんでした。

 それ使ってドラゴニック・ノヴァとかいうの使ったんじゃないのかって?

 演出だよ! え ん しゅ つ。

 ノヴァで途中まで体を変化させた後、あとはハリボテのドラゴニアを出しただけ。ノヴァは見えなくなったら即解除。実は攻撃されたらすぐ崩れる柔らかドラゴンなのさ。そう見えないよう、非常に強い威圧のトランスをまき散らしていたけど。

 

 ノヴァが嘘なら、イルミナのくだりも嘘なんだろってぇ~?

 そっちは本当でーーす!!

 鱗で侵蝕を全て止めて、俺のフルパワーから30%OFF。以降70%の出力で、星将として名乗れるくらい暴れ散らかしてやりましたよ。

 いやーイルミナが付いたことでパワーアップしたっぽく見せないといけないのが大変でした。実態はパワーダウンしてるのにね。

 そんな苦行も太陽光を浴びてイルミナが汚染されてなくなったのでハッピーおさらばだ。

 

 あれあれ? 何か苦情が聞こえるなあ?

 え? 死人は黙ってろだって?

 いやいや死んでないよ、俺。

 いや気絶して高空落下したんじゃ、って。

 はっはっは! それも演技さ!

 流石にあのボロボロのヒリューさんのパンチ一つで落ちるほどやわな鍛え方はしてないよ。してたらとっくにジュナスやウラヌスに殺されてるよハハハ。

 うまく龍の残骸に隠れて、ミニ龍を作って退避さ。

 俺は万全。

 

 え? じゃあタツオとヒリューさんはどうなったかって?

 いやー俺もこっそり助けようと思ってたんだけどそれも不要でした。

 いつの間にやら電磁'n(ショッカー)の夢路晴彦が東雲嵐に連絡していたみたいで、落下した彼らをトリック・ルームで回収していた。うまく包めば落下速度とかゼロにできるのだろうか。できないと回収できないか。

 

 と、いう訳で俺の目的は無事完了。

 ヒリューさんを最終決戦で活躍したメンバーの一人にする作戦達成だ。

 その上で原作同様死者も出てないし、完璧な推移だったと言える。

 あとはアストラル・ナーヴァにこっそり行って、ミロクとグラナの最後を見届けてエンドだな!

 いやー楽しかった楽しかった。

 もう二度とヒリューさんとは会えないだろうが元気でやってくれよ。俺もこっちの世界で優雅な隠居するからな。

 

 それにしても。

 この世界の読者がいればどんな感想を込めただろうか。

 見ることができないのが非常に残念だ。

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