転生したらPSYREN世界だった件――ヒリューさんの強火ファンになっちゃったので推しの為に踏み台やる   作:lukewarm

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PSYRENアニメ来週開始だぞ。お前らちゃんと見ろよ。


エピローグ:ドラコその後

「ん、こんなところに人がいるなんて珍しいな」

 褐色肌に長身で鍛えた風貌の男が声をかけてくる。左頬には特徴的な大きな傷があった。

「ルートの生き残り……じゃねーよな。見たことねーし。もしかして他のコロニーの生存者?」

 気さくな形(なり)だが、細やかなところは油断していない。ポケットに入れていた手を出し両手を開け、こちらへ歩む足取りは急がず焦らず。視界は俺の姿を捉えながらも周りもきちんと映しているようだ。

 手練れに相応しい所作。流石は天樹院カイルといったところか。

 

「ああ。あ(・)の(・)日(・)から住んでた隠れ家から出てきてね。今まで一人だった。生き残りと話ができるなんて、俺は幸運だ」

 俺の言葉にカイルは「転生の日(リバースデイ)の生き残りにこんなところで会えるなんてな」と人好きのする笑みを浮かべた。

 うまく勘違いしてくれたようだ。

 俺の言うあの日とは、最終決戦の日だ。W.I.S.Eが滅びた日の。

 

 流石カイルと言うべきか、ファーストコンタクトから自己紹介が済めば、にこやかに会話が進む。

 こっちのコロニーはどうだの、フーやヴァンがどうだの面白い話が聞けた。また抜け目ないというべきか、合間にこちらの状況はどうだっただの、PSIはどうだの、探りを入れてくる。

 俺としてはエルモアウッドたちと争うメリットゼロな訳で、当然その辺りはひた隠しだ。

 そもそもここでカイルと――もっと言えば他の誰かと――会ったのも想定外。

 なんせここは北海道。彼らの本拠である伊豆からは遠く離れた地だ。トリックルームの転送先が近くにあるのだろうが、ふらりとエンカウントする場所でもあるまいし。運の悪い。

 

「一人でずっと過ごしていて気が滅入ったりしないのか? なんなら俺のコロニー紹介するぜ」

「気遣いはありがたいが、一人が好きでね。あんたみたいなのがたまに声かけてくれるだけで十分だ」

 

 今の俺は世捨て人。

 ヒリューさんという生きる目標を失い、怠惰に余生を過ごす一般サイキッカーだ。

 食料は文明の残骸から掘り当てるか、ミロクによって新たに生まれた動物を食らって賄っている。

 今世じゃ学生から悪の組織へデビューしたとは言え、前世はただの会社員。他者になんら恥じることなく惰性に身を任せ過ごせるこの生活を俺は気に入っている。人と会話しないで寂しいと思うこともないではないが、10年に及ぶワイズ生活の中でそれも随分薄れた。あいつら社会不適合者の集まりだからってコミュ障すぎんねん。なんやねん挨拶が殺し合いって。殺し愛やないかい。

 それはともかく、ルートの面々に合流する訳にはいかない。ワイズの一員として動いていた都合上、捕らえていた一般人に見られている可能性はある上、そもそもシャオ(と遠目からフー)には直接顔を見られている。悪・即・斬をくらってはたまらない。

 そもそもカイルに会っている今もドキドキなんだから。

 

 なんて感じでにこやかに会話していたが、カイルが背中を軽くはたいてくる。

「んじゃ、俺はそろそろ行くわ。話付き合ってもらって悪かったな」

「いや気にするな、俺も久しぶりに話ができて楽しかったぜ」

 じゃあなと手を振ると、カイルは――ライズ使いとしての力を遺憾なく発揮して俺の背後を取った。

 

「お前、やっぱり俺の動きが追えてるな。ナニモンだ」

 背中に何か細いものを押し当てられる感触。刃状のマテリアルハイだろう。俺のライズじゃなすすべもなく切断されるだろうな。なんたって俺は軟弱なバースト使いだし。

「ナニモンって、あの日の生き残りだよ」

 抵抗する気はないのを示すように、両手をゆっくりあげる。

「……」

「エルモアウッド襲来の生き残り」

 背後の圧力が増す。

 

「さっき名乗った名は取り消すよ。ドラコだ。よろしく」

「……第八星将」

 ギリ、と歯を噛み締める音。ワイズに生き残りがいたというのは、圧政を強いられてきたエルモアウッド含めこの世界の生き残りには許し難いことだろう。

「なんで俺のところにやってきた?」

「……偶然だ。ワイズが消滅したから、各地で生存者を探している。この辺に物資が漁られた跡があったから詳しく調べてたらあんたが見つかった」

 世間話を振ってみれば、そのままの体勢で応じてくれるようだ。

 

「ふーん。指名手配とか出てるわけじゃないならいいか。あ、そうだ。エルモアウッドって、最終決戦の結末、どこまで見届けたんだ?」

 俺の言葉に、背後のカイルが疑問を示す。

「決戦の最後、あそこにいたのはワイズとサイレンドリフターだけだろう?」

 空からウロボロスが降ってきて、生命の根源が周囲から湧く異常事態。間髪入れずウロボロスが生命を吸いながら地球へ落下する。

 この世界の住人からすれば滅びの間際が垣間見えるだけ。世界の終わりだと嘆く間に、謎の光が噴出し、空の隕石を砕き歪んだ空が晴れ渡る。息を吹き返すような劇的な体験だけのはず。

 原作なら落下に巻き込まれそうなアゲハをヒリューさんが捕まえたシーンにハルヒコもいたが、そもそも状況共有の時間もないだろうしなによりこの世界じゃヒリューさんは激闘でダウン中。落下するアゲハと雨宮は07号の強制招集に先んじて回収されていた。

 また最終話で07号がカイルたちと合流していたが、作中垣間見えた塩対応から、最後の戦いを丸ごと伝えているとは到底思えない。

 聞いてみれば、最後アゲハに伝えていた内容――ミロクとグラナが命を賭して押し返したところしか知らなかった。やはりというべきか、あの会話そのものは周囲に聞かせていたようだが、詳細はわざわざ明かしてくれなかったらしい。07号らしい。

 

 とはいえ最後の経緯も知ってるなら釣れそうな話は……

「あ」

 そうだ、いるじゃん1組。隕石から免れたならまず生き残ってるだろうやつらが一組。

「星将の生き残りの情報、欲しくない?」

「!?」

 背後から動揺が伝わる。

 星将に生き残り? 簡単に仲間を売る? 信用していいのか? そんなところか。う~ん若い。トランス使いからしたらそういった動揺は付け入る隙だぜ。

 

 俺は龍の眼を後頭部に作り出す。目が合ったカイルは意識が一瞬そちらへ釣られる。意識の外から突然トランスをぶち込まれたら拒絶できない。

 とはいえ誘因の眼を瞬時に断ち切り、押し当てていたマテリアルハイを押し込むのは流石だ。

 だが俺が欲しかったのはその一瞬だ。

 俺は全身を龍(・)の(・)身(・)へと変貌させた。

 

「これは……!?」

 溢れる蒸気。PSIとの融合。

「訓練した君なら分かるだろう? 第4のPSI、ノヴァだ」

 ヒリューさんとの決戦では結局使えなかったノヴァ。俺はその真の力を発揮していた。

 単純な話だったんだ。俺がノヴァを進められなかったのはヒリューさんの踏み台をやるという決意、心残りが最後の踏ん切りをつけさせなかった。主人公アゲハと雨宮は戦いぬくという決意、お互いを思いやる気持ちで最後の一歩を踏み越えた。だが俺はその決意こそが最後の壁だった。

 未練はなくなった、ノヴァの修練で死んでもいいというその覚悟が、俺に最後の一歩を踏み越えさせた。

 

 これは俺の最終形態。

 これが本当の龍威新星(ドラゴニア・ノヴァ)。

 体を覆うは龍の威容。ハリボテじゃない、精々10mほどの長くしなやかな体。

 

「エルモアウッド、他のやつらならノヴァ(これ)使わなくてもサシなら勝てる自信はあるんだが、お前相手じゃ分が悪い。引いてくれるなら話は早いんだが、どうする?」

「ふんっ、敵を相手に引くほど俺は柔じゃねーぜ」

 

 やはりやるしかないか。

 俺は完全な龍威を顕現させた。

 

 カイルが構える。

 戦闘モードに入ったカイルからは考えが伝わってこない。シャオとずっと訓練してるだろうから、精神を抑えるのはお手の物、か。

 そもそも俺は、カイルの動きが見えているわけではない。ずっとPSI波動として漏れ出る相手の動きを読み取って察していたに過ぎない。

 ドラノヴァを発動しても、俺のベースがバーストトランスのハイブリッドであることは変わりない。動きを読めなければ早々に詰まされる。

 

 

 降り注ぐ恵みの雨。雨は俺のトランスの波紋を広げ動きを察知する。高速移動に対する俺の一手。相手にあたる雨粒から、動きの全体像を浮かび上がらせる。簡易マインドリーディングとこれの二つがなければ、殺し愛(挨拶)で早々にジュナスに切り刻まれていただろう。

 

 龍(俺)の周囲をマテリアルハイによる障害物を経由しながら飛び回るカイル。

 慈雨の反射でカイルの動きも、設置するマテリアルハイも読み取れている。

 問題は……。

 

 龍の噛みつきが、次のマテリアルハイへ飛ぶ空中のカイルへ向かう。

 カイルも即応。足先に小さなマテリアルハイを生成し軌道を修正。牙に蹴りを入れて着地するも牙は折れない。そのまま宙へジャンプし別のマテリアルハイへ。

 間髪入れず龍尾がカイルを殴打するが、腕でガード。

 ガードの上から一撃ずつの交換となったが、互いに無傷。

 

 二度三度、似たような攻防が続くも傷はない。

 どちらも様子見の手だ。

 カイルはマテリアルハイを攻撃に転用しない。龍は肉弾戦で雨風のバーストを使わない。

 とはいえノヴァを使っていることもあり、ガス欠が早いのは間違いなくこちらだろう。

 

 龍が咆哮を上げる。ドラゴンロアー。

 ノヴァによる出力の底上げがあろうとも、カイルはそんなことでは怯まない。

 やはり攻め手を変える必要がある。このままでは相性負けの押し切りだ。

 

 周囲から襲い来るカイルを捌きながら、降りしきる雨が姿を変える。

 雨粒は細かく、周囲を満たしていく。たちまち霧となって視界を断った。

 

「目に見えないのはちぃと厄介だけど、それで動けなくなると思われてんなら心外だぜ」

 カイルの声が龍の横胴から聞こえると同時、刃状のマテリアルハイが鱗を叩いた。

「ちっ、かってぇの」

 龍鱗断てず。

 少なくともカイルが片手に沿わすように展開する小さなマテリアルハイでは、鱗の上から有効打はないことは判明。となれば注意すべきは大技か。

 龍は宙を舞い、カイルを振り落とす。

 

 さて、カイルはどこまでこちらのことが分かっているか。

 シャオとフレデリカとの交戦で、俺は龍のバーストしか見せていない。そちらから情報が漏れてる線はないだろう。情報があるなら雨宮かヒリューさんてところ。

 この戦闘でトランス系サイキッカーだと明かしたのは最初の眼。そして先ほどの咆哮。

 お前に俺はどんな相手に見えている?

 

 霧雨に混じるは幻惑のトランス。方向感覚を失い、自らの気力を萎えさせる霧だ。

 バースト波動で体を覆えば無力化されるかというと、そうではない。霧雨、つまり物質化して振りまかれている。バースト波動が物理的なものを全てカットするのであれば通りはしないだろうが、人は呼吸をしているし、口を開けば唾液が飛ぶ。物を全て排斥できるはずがない。そもそもそれができるなら遊坂の毒霧はバーストバリアで無効化できるだろう。

 当然、霧雨に含んだ幻惑成分は多くない。じわりじわりと聞いてくる類だ。だからまだまだ時間稼ぎがいる。

 龍は自らの写し身を作る。ヒリューさんに見せたようなハリボテのバースト体だ。

 カイルの一撃で軽く飛ぶだろうが、迷霧をさまようカイルの目を逸らすには十分。

 

 空虚なる龍威がカイルを襲う。カイルは避けるも、横からさらに別の龍威。

 霧雨の中、無数の龍威がカイルを襲う。四方八方、間髪入れず牙の猛襲。カイルも何手か遅れて迎撃。攻撃した対象がハリボテということに気づくも、霧の中には無数の龍威が潜んでいる。どれが本体か分かるまい。

 虚実入り混じる攻撃に、防戦一方……とはいかないのが流石はエルモア・ウッド。

 霧の中に、巨大な檻を作っていた。あれだ、天草の億号相手に決めたような巨大な檻だ。龍威では抜けられない大きさで周囲を囲っていた。だがここにフレデリカはいない。上空は……。

 

 龍威が檻の空へと向かうと、それを見ていたかのようにカイルが飛び出し殴った。

 だが残念。それはハリボテだ。トランス使いと下手な駆け引きは悪手だぞ。

 檻の下方から水流の波動。雨龍招来。

 カイルは3層に及ぶマテリアルハイの防壁で水流を遮断。しかし勢いに押され、そのまま上空……しまった!

 霧雨の圏外へと逃げたんだ!

 

 宙へ吹っ飛んだカイルを追う龍威。

 戦いは一転、雲を超えた空へと舞台を移す。

 

「これでさっきみたいにはいかねーよな?」

 唸り声をあげる龍威。

 高空で空気が薄いと言うのに、余裕しゃくしゃくといった表情は崩さないカイル。見栄も混ざっているだろうが、消耗は少ないとみていいだろう。

 

 あああああああもう!!

 敵が吹っ飛んだんなら逃げればいいのに!!!

 この馬鹿ドラゴン!!!

 

 さて、言っていなかったが、俺の龍威新星、これは完全な龍を具現化するものだ。

 俺の姿を龍へと移す。戦いは全て全自動。龍が龍の知覚能力で以て敵を迎撃するフルオートシステムだ。

 傷を負えば苦しみ、半自動で敵を倒していた通常状態からの順当進化だと言えるだろう。

 ……だから使いたくなかったんだ!

 最大の利点は、俺という欠点が龍に宿り弱点にならなくなること。知覚系も龍としての超常スペックがベースに、俺も使用していた霧雨やマインドリーディングが乗るため、基礎スペックは倍ドンである。

 欠点は見ての通り自我を有しており、その基準で行動すること。俺が止めることも不可能。消耗し、墜落するまで龍の意のままだった。

 

 

 龍は仕切り直しの挨拶とばかりに、烈風の息吹。

 猛烈な風の奔流がカイルを襲うも、新たなマテリアルハイへと退避。

 大技のポン出しで仕留められるはずもないのは龍も承知。雲間を割くように、水の奔流が追撃。

 流石のカイルも全てを回避迎撃とはいかないようで、何発か着弾した。

 龍が不敵な笑みを浮かべれば、カイルも反撃。飛ぶ龍の周囲をマテリアルハイ。鼻面をぶつけ、怒りを露わにする龍。

 

「鱗が断てないなら、こうするしかないよなあ」

 カイルはマテリアルハイを、円錐状にした。狙いは目か口か。

 

 龍は迫る円錐を避け、水流を照射。しかしカイルも要所を守り、傷を顧みずマテリアルハイを通しに来た。

 口腔にマテリアルハイが迫り――烈風がそれを押し返した。

「なん……!?」

 烈風の吐息。大技ではあるが、ノヴァと化したその身なれば、連発も可能だ。

 吹き飛ばされるカイル。

 そして……頭上から巨大なマテリアルハイが龍を押しつぶした。

「フォールダウン」

 

 罠を張っていたんだ。

 傷を顧みない突撃、それを囮にした二重の罠を。

 

 龍が落下する。雲間を落ち、地面へ。

「これで終わりだ」

 そしてカイルは、追ってきてしまった。

 嵐の渦巻く地上へと。

 

 龍とは野分の化身である。

 野分、つまり台風だ。

 雨と風を司り、流れる川は濁流となりて村を襲う。吹き荒れる風は建物を吹き飛ばす。

 人の手の届かない天を見上げ、人はそれを龍と呼んだ。

 

 地上は龍の力が満ち満ちている。

 大荒れの台風。暴れ狂う風がカイルを揺らす。

 

 荒れに荒れた地上。龍のホームグラウンド。

 風は巨大なマテリアルハイを揺らし、龍に身をもたげる自由を作った。

 雨はマテリアルハイを穿つ。何度も何度も、打ち付ける腐食の雨がマテリアルハイを弱くした。

 そして牙が突き立てられた。

 昏迷のトランス。

 PSIの所有権を奪うトランスだ。

 落下していたマテリアルハイは、軌道を180度変え、追ってきたカイルへと飛んで行った。

 下方からの一撃であり、あまり威力はなかったが、カイルの動きが完全に止まった。

 

 龍は見逃さない。

 大嵐戦渦(ストームヴォルテクス)。

 雨風の竜巻。地上を暴れまわっていた台風そのものがカイルを襲った。

 落下するカイル。

 

 そうしてようやく龍は落ち着いた。

 

 ***

 

 ようやく元の姿に戻れた。

 

 カイルはどうなったかなと見に行けば、ギリギリ生きてはいるようだ。

 体を引き裂かれそうな暴風雨に巻き込まれて、高所落下を経ても5体満足というのは、頑丈というか化け物というか。

 まあ俺としては襲われた側だし、どうしようもないので、見つかりやすい場所に連れて行って放置する。

 帰りが遅いことに誰かが気づけば助けにきてくれるだろう。

 ここら一帯は龍が暴れた結果、生えていた緑地が根こそぎ吹っ飛んでいる。盛り上がっていた砂なども全部飛んでいて、埋もれていた旧文明の中で、基盤工事が頑丈だっただろう建物の土台が出ているような様相だ。そこの一番高いところに置いてきたから、まあ目立つだろう。

 

 さて、今度こそさらばだカイル。

 俺に勝てないようじゃまだまだだ。ジュナスとカプリコには出会わないように祈るんだな。

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