「すまんなレイ、少し遅くなった」
私はレイの家の扉の前に立っていた
「いえ、大丈夫です。」
扉から出て来たレイが少し微笑みながら扉を開ける。いつの間にここまで感情を出すようになったのだろうか。
そんなことは今はいい、何をしているんだ私は。たかが食事会のためにゼーレに頭を下げてまで食事会の予定を空けるなど、3号機の起動実験もそうだ、そこまでするほどの価値がこの食事会にあるのだろうか。
「邪魔するぞ」
「と、父さん!」
そこにはシンジが包丁を持ち、台所に立っていた。
「...何をしている」
「えっと...」
「私がお味噌汁しか作ってなかったから、碇くんが何か他のも作るっていってくれたの。」
「そ、そうなんだ。筑前煮とかどうかなって思って...苦手じゃない...?」
「...ああ」
「碇司令はここに座ってください。」
大きな味噌汁の入った鍋が置かれたちゃぶ台の周りには座布団がしかれ式波大尉、葛城一佐が座っている。
私の座布団の隣は空いている、シンジが座るのだろうか
「.......」
「.......」
「.......」
「.......」
筑前煮が煮立つボコボコという音だけが響く。
「...その〜碇司令、ビールとかってのみ...ます?」
「いや、これが終わった後も仕事があるのでな、遠慮しておく」
「...はい」
静寂が続き自然とシンジの方へ視線が向く。
随分背が高くなったような気がする。
シンジと飯を食うのはいつぶりだろうか。
私は恨まれてないだろうか、いや恨んでいて当然か。
...手作りの料理は何年ぶりだろうか。
いつだったかユイと料理をしたことがあった。
あの時作ったのも筑前煮だったか。
私は野菜を切るのも満足に出来なかった。
ユイは私の不格好な乱切りの人参を見て笑っていた。
そこからは私は野菜を洗ったり、吹きこぼれないようにするだけで料理は殆どユイが作っていた。
何の変哲もない、ただの筑前煮だった
だが、あの料理だけはやけに美味しく感じた。
「出来たよ」
盛り付けられた筑前煮が置かれ、レイが皆の椀に味噌汁をよそう。
「い、いただきます」
「はい、いただきます」
「いただきます。」
「...いただきます」
「頂きます」
皆が豆腐と小松菜の味噌汁の入った椀に口をつける。
「美味しいよ、綾波」
「そう、それは良かった。」
「やるじゃないレイ」
「........そんなに見ないでよ、まあ悪くないわ」
「碇司令は?」
「...美味しいぞ」
続いてシンジの筑前煮に箸を伸ばす。
「あ、あの冷ます時間がなくて熱いかもしれないから、みんな気をつけて」
「やっぱり、碇くんの美味しい。」
「ありがとう綾波」
「やっぱりしんちゃんの料理はいつも美味しいわね」
「ま、いつもどうりって感じね」
「と、父さんは?美味しい?」
「ああ、美味しい」
「ほ、本当?!良かった!」
「......」
────────
「じゃ、あたし達先帰ってるから」
「うん、また後で」
食事会は大成功に終わった。僕は片付けをするために綾波の家に残っていた。
「父さんは、仕事...行かなくていいの?」
「まだ、時間がある」
「そ、そうなんだ...」
綾波はみんなの食器をシンクへ持っていく
「綾波、皿は僕が洗っておくよ」
「ありがとう。」
「.......」
父さんは黙ったまま座っている。
シャー
食器に水をかけ汚れをサッと洗い流す。
「そ、その...父さんも手伝って...ほし...いな」
「.......」
「ご、ごめん。やっぱりなんでも」
「いや...構わん」
父さんが僕が洗った皿を拭き棚へと戻す。
カチャカチャと食器の音がなる。
「シンジ...お前は、私が嫌いか」
「そんなこと、ないよ」
「...そうか」
「父さん、休みの日って...ある?」
「いや...だがこうして時間を作ることはできる」
「今度...川に釣りに行きたいなって...父さんと一緒に」
「...ああ、いいぞ」
「本当に?!やった!」
「...シンジ途中ですまないが時間だ、いつ行くか決まったら連絡しろ」
「うん!」
皿を洗い終わると綾波が話しかけてきた
「...碇くん、なんだか嬉しそう。」
「うん、嬉しいよ」
「そう、碇くんが嬉しいなら私も嬉しい。」
「綾波はどうだった?」
「碇くんに褒められた、他の人にも。だから嬉しい。」
「なら、良かった」
「また、食事会したい。」
「じゃあ今度他の料理も教えるよ」
「ありがとう、碇くん。」
「じゃあ、僕もそろそろ帰るね」
「ええ、また明日。」
「うん、また明日」
今度教える料理は何がいいかな、肉以外がいいかな...卵焼きとか?