先生やってる兄貴の女性関係が終わってんだが?   作:グラビトン

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今回からミレニアム編になります。
しかし今回は兄弟中心なのだ。


それだけの人

弟が、突然キヴォトスにやってきた。

その連絡を受けたのも突然だった……いつもの様に、仕事に追われている時に私のスマホに電話が掛かった。

 

 

『……お、出た、兄貴ー?』

 

「えっ、お前……そっちから電話なんて珍しいな」

 

『かもな、要件だけ伝えとくわ……今から俺キヴォトスに行くから』

 

「…………………は?」

 

『あんたの様子を父さん母さんが気になってな、俺は別にいいんだけどキヴォトスにも興味あるから丁度いいと思って、明日くらいに着くんじゃねぇかな』

 

「は?いやまて、待って!?いきなり過ぎるだろ!?」

 

『一応こうして伝えてるだろ?後泊まるとこはあんたの住んでるとこだからな、明日着いたら言うわ、んじゃ』プツッ

 

「あっちょ、お前!?」

 

耳にスマホを当てながら勢いよく立ち上がる、既に通話は切れている………眉間に手を当てて溜息を着いた、本当に来るのかアイツ……。

 

 

弟は昔から何かと破天荒だった。

性格が悪い訳じゃない、寧ろ人付き合いが出来て当たり障りのない人柄だから慕う人も多い、身体を動かすことと食べる事が好きな弟だけど……昔から兄である私への当たりは強かった、それも兄弟故のコミュニケーションではあるが。

 

そんな家族がこのキヴォトスに……銃社会だと言うことは知ってるだろうに、興味があるからってアイツはもう……。

 

 

「せ、先生っ、聞いてましたけど弟さん来るみたいですね?」

 

「大丈夫ですか先生?かなり心配そうな顔をしてますけど……」

 

「アロナ、プラナ……大丈夫、もう出発してるみたいだし、あいつが素直に私の言う事聞くとも思えないしね」

 

シッテムの箱から聞こえる2人の女の子からの声に答える、私をサポートしてくれるOSのアロナとプラナだ。

 

この2人にはよく助けられてる、私が銃弾飛び交う学園都市で傷が少ないのも彼女達が起こすバリアのお陰だ……アイツは身体能力が異常に高い、キヴォトスの生徒達と遜色ないレベルだが、それでも私と同じ人間だ、銃弾ひとつが身体に当たれば致命傷になる。

 

それが外の世界の人間の脆さだ、その事を家族は危惧しているのだろう…………そう、言えば。

 

 

「(……俺、家族の事忘れてた?)」

 

 

激務に続く激務、キヴォトスが崩壊しかねない事件、それらが続いて家族の顔を思い出す事がめっきり減っていた。

定期的に連絡をくれって言われてたのに、忘れてた、弟がこうして連絡してくれてなきゃまた暫く思い出してなかったのかもしれない。

 

シャーレの責務も自分が望んでやってる事だから、忙しかったとはいえ家族の事を忘れるなんて………深くため息を吐いて天井を見上げた。

 

「せ、先生……大丈夫ですか?」

 

「……うん、大丈夫だよアロナ、弟が着いたらどうしようかなって考えてただけ」

 

とりあえず……キヴォトスのいい所を教えようかな。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「先生……と、見慣れぬ方がお一人、お知り合いですか?」

 

「知り合いっていうか、私の弟だよトキ」

 

「なんと、ご家族の方でしたか……あまり似てませんね」

 

「よう言われますよ……えっと、トキさん?」

 

「……名乗り遅れましたね、失礼しました」

 

シャーレの仕事場に着くと、金髪でロングスカートのメイド服を着こなす美人さんがそこに居た。

クールビューティーって感じの人は1歩後ろへ下がると、スカートの裾を掴み優雅にお辞儀し始める。

 

「私はミレニアムサイエンススクール、C&C所属の飛鳥馬トキと申します、そして先生専属のメイドも兼任させて頂いてます、どうかお見知り置きを」

 

このメイドさんは飛鳥馬さんというらしい、所作が上品というかなんというか……また別ベクトルの美少女が現れよったぞ、しかもメイド……いや待て、先生専属って何ぞや?

 

隣にいる兄貴に目を向けるが、飛鳥馬さんの自己紹介に苦笑いを浮かべていた……なんだ、この人が勝手に言ってるだけ?

 

「私と先生とは長い付き合いになりまして、修羅場も一夜も共に越えた仲です、先生周りのお世話を私はこなし続けてます、ピース」

 

「トキ?その説明は色々と誤解を産むんだけど?」

 

「誤解などありませんよ?以前も私がバニーでお疲れの先生を温めたじゃないですか」

 

「…………教師のやる事か、それが……?」

 

「違う!トキからやったの!私は何も言ってない!!」

 

「忘れてしまったのですか、あの日見つめあった朝を」

 

「驚いた記憶しかないよ!!」

 

無表情でピースサインをしながら嘘か誠か分からない虚言を口にしてる……なんだこのおもしれー女、黙ってたらクールな美少女って感じなのに……ていうかアレだな、この人も兄貴に気がある人かこれ。

 

「……まぁそれは置いておいて、先生の弟さんがキヴォトスに来たのはなぜですか?」

 

「あーいや、兄貴の様子を見に来たのとキヴォトスに興味があっただけっす」

 

「なるほど、この地での寝泊まりはこのシャーレのビルということですね?」

 

「まぁはい」

 

「では私もここで住みます、お二人の生活のサポートと言うことで」

 

「いやダメだよ?トキは学校あるしまた留年とかダメだからね?」

 

「むぅ」

 

「留年してんすか……?」

 

「………とりあえずお話はここまでにしておいて、掃除と夕飯の準備をした私を褒めて下さい、先生」

 

「そこは譲れないんだね……でもありがとう、トキ」

 

そうすると兄貴は飛鳥馬さんの頭を撫でる、撫でられてる当の本人は無表情だが凄く満足気だ、顔に現れてるのか無いのか少しややこしいけど。

 

「……とりあえず暫く構ってなかった分の7割は満足出来ました、そしてお2人はまだ夕食を済ませてませんよね?先程ビーフシチューを多めに作らせて頂きました、この後は食べられますか?」

 

「何かいい匂いがしてたけどビーフシチューなんだね、美味しそうだ」

 

「おぉ……俺も食っていいんすか?」

 

「当然でしょう、予め多めに作りましたから……では準備をさせて頂きます」

 

「………ていうかお前、柴関ラーメンの大盛りセット食べてたけど大丈夫なの?」

 

「シチューだしな、腹八分目の〆って所だな」

 

「そ、そうか」

 

んな顔すんなよ、俺が大食らいなのは昔からだろーが。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「な、なんとぉ!!?」

 

「えっ、どうしたのコタマ先輩っ?大きな声出して……」

 

「………コタマ貴女、また先生の盗聴をしてるでしょ?やめなさいって何度も言ってるじゃない」

 

「………それで何かあったの、先生に……?」

 

「せ、先生の弟さんがシャーレに来ているそうです」

 

「ええっ!?先生に弟が居たんだ?」

 

「それで驚いていたの貴女……それにしても弟さんね……大方兄である先生の様子を見に来たってところかしら」

 

「なるほど……でも大丈夫なのかな、弟さんに万一があれば先生もヤバいんじゃ」

 

「…………確かに、これは弟さんの服にも盗聴器を」

 

「やめなさいっ!」

 

「いだぁっ!!」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「……あらあらあら、興味深い事になってますね」

 

「どうしたのヒマリ部長?何見てるの」

 

「見てくださいエイミ、トキがシャーレに行くと聞いたので暇つぶしに監視カメラをハッキングしたのですが………先生の隣に居る方がその弟さんらしいのです」

 

「この人が先生の弟?へー……いやヒマリ先輩何盗撮してるの」

 

「まぁまぁ……あ、いい事を思いつきましたっ、早速トキに連絡しましょう」

 

「何企んでるの部長?」

 

「いえ………ちょうど明日、先生はミレニアムに来ますからね」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「……お味は如何ですか、お二人様」

 

「美味しいよトキ、ビーフシチューなんて久々だしね」

 

「飛鳥馬さんおかわりで」

 

「よく食べられますね弟さん……これで三杯目ですよ?」

 

「よう食べるんで、俺」

 

俺と兄貴は飛鳥馬さんが作ってくれたビーフシチューを堪能していた、オマケにサラダと飛鳥馬の手作りパン……どれも美味い、さっきからやたらと自己肯定感の高いセリフを口にしてるけど確かに凄い、マジでパーフェクトメイドなんじゃないのこの人。

 

「………どうぞ、先生もおかわりはいりますか?」

 

「私はこれで2杯目だからね、パンとサラダも食べたしこれで良いかな」

 

「飛鳥馬さん、コイツ後で飯も疎かにするんで無理矢理食わせた方が良いっすよ」

 

「………なるほど、家族だからこそ分かるものなのですね、では先生食べてください、残したら拗ねます」

 

「ちょ、多っ………食べます」

 

どーせこの人は仕事ばかりで飯もろくに食わない時期が多々あるだろうから、その腹に詰めるだけ詰めとかなきゃな。

つーかメイド美少女が作った手作り料理を、それも本来はアンタに向けて作られた奴を食べないとか何事だ、他の野郎共が見たらぶっ潰されるぞ。

 

「それはそれとして……弟さん、貴方は明日何か予定がありますか?」

 

「予定っすか、あー……まぁ適当にキヴォトスを見て回ろうかと思ってるんすけど」

 

「では実質予定は無いという事ですね?」

 

「まぁ、そうなるか………それがどうしたんすか?」

 

「明日、先生はミレニアムに仕事でやってくる予定なのですが……良ければ弟さんもいらしては如何ですか?」

 

「えっ、ミレニアムって………飛鳥馬さんの通ってる学校っすよね?」

 

「はい、キヴォトスを見て周りたいのなら学校の事も見て頂ければなと思いまして、ミレニアムは技術者の集まる場所ですから見るだけでも新鮮だと思いますよ」

 

「………私も良いと思うよ、どうだい?」

 

「あー………」

 

 

確かにキヴォトスの学校も覗いて見たいとは思ってたし、俺の通ってる学校とまるで違う場所なんだろうな………軽くキヴォトスの事は調べてたけど、ミレニアムサイエンススクールは学園都市の中でもかなり大規模らしいし、このキヴォトスで最新鋭と謳われる物は大抵ミレニアムの開発らしい、こうして誘われてるなら……断る理由はねぇな。

 

 

「……分かりました、是非おなしゃす」

 

「良かったです、では明日先生共々お迎えに参りますので………いや、お泊まりするのも手ですね」

 

「ダメ、帰りなさい」

 

「………はい」

 

めちゃくちゃ不服そうだ………こんな可愛い子とひとつ屋根の下とか耐えれる気しねぇぞ俺………ていうか兄貴はこの人と1回添い寝したのか、死ねばいいのに。

 

「それにしてもミレニアムって技術の学び舎なんすよね?メイドなのは何か関係があるんすか?」

 

「はい、このメイド服は言わば変装……私が所属するC&Cはミレニアムのエージェント集団なので最早私達にとっては正装なのです、そしてC&C全員が先生専属メイドです」

 

「後者は全然違うからね?ネル達まで巻き込まないでね?」

 

「しかし満更じゃないと思いますよ?アカネ先輩は特に」

 

「………かもしれないけど」

 

「どの道アンタに惚の字な生徒は山のように居るらしいな………」

 

「いや、惚の字ってお前」

 

「弟さんの予想は当たってますよ、ミレニアムにも先生をお慕いしている生徒達は沢山居ますから」

 

「そっすかー………何がいいんすかコイツの?お人好しなのは良いけど最早それが悪癖にまでなってるっすよ?そのせいで我が身を省みる事なんざ片手の指で数えられるだけ、後キモイし」

 

「ボロカスだな相変わらず……」

 

「事実だろーが」

 

「それとトキ、お慕いじゃなくて純粋に慕ってるでいいと思うよ?その言葉だと別の意味に捉えられでぁっ!!?」

 

「後このクソボケっすよ?」

 

薄々察してたけどやっぱり理解してなかったよコイツ、飛鳥馬さんもジト目になって兄貴を睨んでる。

俺はこの人を昔から見てきたから分かるけど、実態を知ったらとても惚れるような箇所は少ない筈だ、鈍いし、時々度を超えてキモイし、どれだけ優しかろうと結局は自分がそうしたいって言うエゴを抱えているのだから。

 

そういうもんを抱えているから、俺はこの人が誰かと添い遂げられる未来が見えない、こんな狂人の事を丸ごと受け止められる人なんて居るのかね………親は所帯を持って欲しいと考えてるけど。

 

「………それでもシャーレの先生の事を考えるのですよ、私達は」

 

「………」

 

「そういう大人が私達には必要で、彼が居なきゃ私達は今こうして居ませんから………そうでなくても、先生なしのキヴォトスはもう考えられませんから」

 

「……そすか」

 

何をしたのかは分かんねぇけど………まぁ、そういう事なら何も言わないでおこう………女性関係はどうにも歪んでるっぽいけどな!

 

「いででで……何、話してたの2人?」

 

「さてね、後アンタ早く喰えよ冷めるぞ」

 

「はい、拗ねますよ先生」

 

「ま、待って、脇腹殴られたから待って……」

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

ご飯を食べてトキも帰り、私は残した仕事を片付けようとデスクに座る。

残ってる今日の分の仕事はそれほど多くない、早めに片付けて明日のミレニアムの出張に備えよう。

 

「………あんたなぁ、社畜根性染み込みすぎだろ」

 

「いやいや、量はそれほど残ってないから今の内にさ」

 

「ったく、飛鳥馬さんに聞いた通りクソ激務なのかよシャーレってのは」

 

「……まぁね」

 

近くには寝間着を着ている弟がソファーに寝転んでそこにいた、もう既に自分の家みたいに寛いでいた。

初日だと言うのにリラックスしてるなぁ……ていうか久々に会ったけど変わんないなコイツも。

 

「……どう、まだ初日だけどキヴォトスは?」

 

「思ってた以上に無茶苦茶だと思ったよ、そこいらに銃があるとか流石にビビるわ、よくこんな所で教師とかやれんな」

 

「…………こういう所に教師が居ないからだよ、あの子達は俺達普通の人間よりもずっと強いけど……その中身はお前の歳の頃と変わらない若者達で女の子だ、誰かが大人として導かなきゃいけない」

 

「それがアンタ?」

 

「……うん」

 

「御大層な事仰ってんなぁ………飛鳥馬さんの反応を見る限り、やべー修羅場くぐって来たんだろ?」

 

「まぁね、正直何度も死にかけたよ、ははは……」

 

「それ、俺だからいいが親に話すなよ……ましてや笑うな、心配してんだぞあの人達は」

 

「………ごめん」

 

俺の言葉にアイツはムカついた表情で睨んでいた、流石に失言だったな………そういうことがここでは日常茶飯事だったから、麻痺してた。

 

「………何時辞めようか、とか考えてねぇのか」

 

「……無いね、今のところ俺の代わりって呼べる存在がいないからさ」

 

「本当にアンタじゃなきゃいけないのかよ」

 

「うん、こればかりは仕方ないんだ」

 

「…………ここにいる住人は俺達と変わらない若者ってアンタは言ってたが、中身も違うだろ………少なくとも、根っこの精神性は俺とは違う」

 

「…………」

 

「……ま、だとしても話してる分には普通の女の子達だったけどな」

 

「………彼女たちをどう見る、お前は」

 

「さてね、今日会ったばかりの人を格付け出来るほど偉くねぇよ」

 

「………これだけは、知って欲しいんだけどさ」

 

「言わなくていい、俺は少なくとも……化け物とか思っちゃいねぇよ」

 

「………」

 

「あんたを慕ってる生徒は、そういう人達だろ?」

 

「…うん、みんないい子だよ」

 

良くも悪くも純粋な子達だからこそ、俺は………私は彼女達の助けになりたい、その気持ちでここまで来た。

何度も死に目に合いそうになった、私個人の力でやれることなんてたかが知れてるのは理解してる……それでも手を伸ばしたい、大人として子供達の助けになりたい。

 

「………でも忘れんなよ、家族の事もな」

 

「……あぁ、もちろんだよ」

 

「…………後な」

 

「うん?」

 

「あんたがここじゃ何者かなんてどうでもいい、俺にとっちゃアンタはクソ兄貴だ」

 

「…………」

 

「これも覚えとけ」

 

「………あぁ」

 

そう言って彼はこの部屋から出た。

………口の悪さは変わらないなぁ、俺には昔からこうだ。

 

 

………久々に聞いて懐かしくなってしまった、そういえば何気に一緒にご飯食べたのも久しぶりだったな。

 

 

 

「あのー先生」

 

「うん、どうしたのアロナ?」

 

「………弟さん、良い人ですね!」

 

「……そうかなぁ?」

 

ま、悪い奴じゃないのは確かだけどね。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「せ、せ、先生の弟さんがキヴォトスに!?しかも明日一緒にミレニアムに来るですって!?」

 

「はい、ヒマリ部長が招待したらどうですかと提案したので、ピース」

 

「ピースじゃないっ!いきなり過ぎるって、どうしましょうノア!?何かおもてなしとか必要よね!?」

 

「落ち着いてユウカちゃん、先生の家族ならそういうのは特別望んでないと思うし、ミレニアムがどういう所か見たいのなら自然体で良い思いますよ?」

 

「そ、そうかしら……とりあえずC&Cの皆さんには護衛として一緒に着いて貰いましょう!万一があったらセミナーの沽券に関わるわ!そうですよねリオ会長!?」

 

「……そ、そうね、用心はしておきましょう(ヒマリ、何を考えて……いえ、特に何も考えてないのでしょうね)」




先生/弟
救世主だろうと、少し人間離れしてようとも、ただの家族で兄弟。
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