ゼロバンゲート re:スタートライン   作:茶坊主(ぽんぽん)

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第15話

ドアが静かにノックされた。

 

医師

「失礼します。

 検査結果が出ました」

 

タイニィが息を呑む。

フェアレディはわずかに姿勢を正した。

 

医師はカルテをめくりながら、

落ち着いた声で続けた。

 

医師

「骨折はありません。

 ただし靭帯に軽い損傷があります。

 しばらくは走れません」

 

タイニィ

「……っ」

 

フェアレディは目を閉じ、

小さく息を吐いた。

 

ゼロ

「……走れなくなるわけじゃ、ないんですよね」

 

医師

「ええ。

 適切に治療すれば、必ず戻れます」

 

その言葉に、

タイニィの肩がふっと落ちた。

 

フェアレディは静かに頷き、

ゼロの方を見た。

 

フェアレディ

「……よかった」

 

その声は、

いつもの冷静さとは違う、

どこか震えを含んだ優しい声だった。

 

フェアレディ

「……で、明日は走れるの?」

 

タイニィ

「レディさん!

 無茶ですって!

 ドクターストップがかかってるんですよ!?」

 

フェアレディ

「ゼロに聞いてるの……」

 

その声は静かだったが、

どこか急いているようにも聞こえた。

 

ゼロ

「走ります」

 

俺は即答した。

迷ったら走れなくなる――

そんな気がした。

 

タイニィ

「……!」

 

握っていた彼女の手に、

ぎゅっと力が入る。

 

震えているのが分かった。

怒りでも、反対でもなく、

恐怖しているようだった。

 

フェアレディは唇を噛んだ。

 

その仕草は、

いつもの冷静な彼女とは違って見えた。

 

ゼロ

「俺も一つ聞いていいですか……

 フェアレディさんは、''間違い''を認める人なんですか?」

 

フェアレディの眉が、わずかに動いた。

 

気づいていた?

それとも、誰かから聞かされた?

 

フェアレディ

「……どういう意味」

 

ゼロ

「いいえ。何となくです。

 仕組まれたレース……

 あのセドリックとか言う男がレストランで喋ってたこと。

 明日がその“目玉”のレースなんですよね?」

 

タイニィ

「知ってるなら尚更、走るなんておかしいですよ……!?」

 

声が裏返っていた。

 

フェアレディは一瞬だけ目を伏せた。

その沈黙が、何より雄弁だった。

 

フェアレディ

「間違ってるとか正しいとかって話じゃないの……。

 私が興味があるのは、どっちが損で、どっちが得かってことよ」

 

タイニィ

「レディさん!!」

 

タイニィは震えながら、

フェアレディの前に立ちふさがり、睨みつけた。

 

その目は涙で滲んでいるのに、

必死に強くあろうとしていた。

 

ゼロ

「だったら、俺は自分のために走ります。

 俺はこの街が好きなんです。

 走りたい自分を受け入れてくれたこの街と、

 あのレースが好きです」

 

タイニィ

「ゼロさんまで何を言ってるんですか……!」

 

彼女の声が震える。

 

俺は続けた。

 

今回のような仕込みのレースが当たり前になるのは嫌だ。

俺が立ち上がったところで、

それが止められる保証はないだろう。

 

けれど――

 

ブルーバードが愛した場所を汚されるのは、

どうしても我慢できなかった。

 

俺が……

走りたいと思えた、この街を。

 

フェアレディは僅かに口角を上げた。

 

フェアレディ

「……もうすっかりこの街の人間ね。

 それが聞けて安心したわ。

 タイニィ、もう一度ゼロのそばに付き添ってあげなさい。

 明日のレースまでに少しでも良くなるように、あなたが責任を持つの。

 いい?」

 

タイニィ

「言われなくても……そのつもりです!」

 

その声には、涙の名残と、

それを上回る強い決意が滲んでいた。

 

フェアレディは満足げに頷き、

ゼロの方へ視線を向けた。

 

フェアレディ

「私もこの街が好き。

 そして……あなたの走りも好きよ」

 

その言葉は、

叱責でも命令でもなく、

静かな本音だった。

 

そう言い残し、

彼女は踵を返して病室を出ていった。

 

ドアが閉まる音が、

妙に静かに響いた。

 




ゼロは再び走りきる理由を見つけます。

しかし、足の怪我は確実に彼を追い込みます。

最後まで見届けていただけると幸いですm(_ _)m
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