ライモンシティに到着したあたしは最低限の回復だけしてすぐにリゾートデザートへと向かった。
トウコって寄生虫が居る限り、あたしには行動の自由すらもない。
いっそ今すぐ体を奪ってくれても構わないとさえ思うけど……どういうわけかその気も無いらしい。
質が悪い……こいつわざとやってんのかよ。
あたしがこうして苦しんでるのを見て……裏でゲラゲラ笑ってるんだろうな。
「ストップ、マリネット!」
「……」
またイベントか。
もう余計なことを言いたくもない。
余程の事が無かったら、ずっと黙ってても良いか……。
「そこが古代の城の入り口。それにしてもマリネットはすごいな、ぼくより先に到着するなんて。
リゾートデザートのポケモンに意外と手間取ってしまって……。
ここまで来れたのはぼくのポケモン達のおかげだね。
……アデクさん先に行ったよ、ぼくたちも急ごう」
と言うものの、チェレンは動かない。
やっぱりイベントか……。
あたしが奥に行かないとこのイベントも終わらない……。
「……マリネット、待っていてくれ……もう少しだ。
もう少しの辛抱なんだ。
もう少しで、マリネットを苦しめる邪神の手先も駆除できるから……。
オーベムが……マリネットのことを必ず助けてくれる……」
(……何も言わないんですか?)
「言っても無駄だろ。イベントなんだから。
お前に何か言うのと同じくらい無駄だよ」
(なんですか、全く……。私がわざわざ気を使ってあげているというのに)
少なくともお前と仲良くするのは無理だよ。
今更何を言ったところで変わらない。
「……」
(あ、気を付けてください。走ると流砂が吸い込んできますよ)
「あっそ」
どうでもいい情報だ。
今のあたしには……どうでも……。
「ゲーチス様は言われた。お前の力量がどれほどか今一度確かめよと。
我らプラズマ団を倒せるか見させてもらうぞよ!
……ほれ! 早く流砂から落ちて行け!」
わざわざこんな所でも待ち伏せしてるのかよ。
暇人にも程があるな。
「……馬鹿馬鹿しい、何度やったところで同じだよ。
あたしが負けるわけがない」
「……ほう? その自信が事実か強がりかどうか……見せてもらおう」
「オマエの事は聞いている、ポケモンをこきつかうヤツとな!」
「……邪魔だ」
お前らのポケモンで、あたしのポケモンが倒せるわけがないだろ。
弱いくせに口と態度だけは立派だよな。
……ほら、デンチュラだけで全滅だぞ?
「そして強いヤツとも聞いていたが……その通りだぜ……」
「む……言うだけの事はあるようだな。
だがこの先のプラズマ団も倒せるか?」
全員倒さないと進めないんだろ、どうせ。
馬鹿馬鹿しい。全員まとめて来たって構わないのに。
「オマエ! オレのポケモンを喜ばせるために負けろ!!」
「弱いくせに……」
「な、なんだと!?」
バトルの結果など言うまでもない。
あたしのポケモンに指一本……もとい攻撃1回も当てられないまま終わりだ。
「ほら、やっぱり弱い……。お前らマジで邪魔なんだよ。
イベントのラジコンのくせに……うじゃうじゃうじゃうじゃと……」
「……くっ、お前だってその強さ、ポケモンに頼っているだけだろ!」
「……そうだよ。ポケモンの強さが絶対なんだから。
逆に言うとな……強いポケモンを金でもなんでもいいから手に入れれば誰だって強くなれるんだよ。
イベント専用のラジコンごときに何を言っても無駄だけどな」
今回のイベントの奴らは弱いくせに煩いな……。
シナリオのために用意されたラジコンなんだから定型文だけ喋ってろよ。
(……おかしいですね、こんな反応するなんて……まさかこいつらは異物ですか?
いえ、でもシナリオ通りの配置と手持ちです……何故?)
「世界を変えるには痛みを伴うのよ!」
「邪魔だ! デンチュラ、やってしまえ!
『10まんボルト』!」
「ダストダス……耐えたわね! いいわ! 反撃よ!
『ヘドロばくだん』お見舞いしてやりなさい!」
「……ラジコンの手持ちのくせにしつこいな!
だったら倒れるまで攻撃してやるよ! デンチュラ! もう一度だ!」
……デンチュラを育てるために前に出してたけど、やっぱり他の手持ちと比べると弱いんだろうか。
まあ仕方ないな、こいつはアヤさんに鍛えてもらってないし……。
「みながポケモンを手放せば勝ち負けを決めなくていいよな!」
「……」
くだらないな。
ラジコンの妄言なんか、聞くだけ無駄だ。
「愚かなトレーナー共が素晴らしいポケモンを使いこなすなんてムリなのよ!」
「その愚かなトレーナーの代表が……シナリオのラジコンのお前らなんだよ!」
苛々する。
こいつらラジコンのくせに。
……こいつらは人間みたいな反応しやがる。
ラジコンのくせに。
「負けたあたしが愚かなトレーナーって事!?」
「そう言ってるんだよ」
「……なによ! こんな所で砂まみれになって頑張ってるあたしのために負けなさいよ!」
(……台詞もほとんど同じです。なのにどうして言葉に反応するんでしょうか?
アルセウス様の力がここには及んでいないから……?)
寄生虫がさっきから煩い。
そんなにここのラジコン共が気になるのかよ?
だったらセッカシティみたいにアルセウス様の力とやらで全員浄化してしまえばいいのに。
どうせこいつらもラジコンなんだから。
「若い王様のために戦う……ただそれだけだ!」
「あたし達と違う考えの持ち主は許さない!」
「ラジコンが……全員潰してやる!」
一方的に叩き潰した。
これで終わりか?
「……そこの流砂の下であんたの仲間がお待ちかねよ」
「やっと打ち止めか……ホント、しつこいラジコンだ」
最後の流砂に落ちる。
これでようやくゴールか?
「……上に居た仲間も聞いているようだが、ラジコンって何の話だ?」
「さあ……?」
「最深部か……」
アデクとゲーチスが対面してる。
どうやらここがこのイベントのゴールだな。
「……やっと追いついた」
チェレンが上から降りてきた。
……いつの間に、って言いたいけど、イベントに何を言っても無駄だな。
「……お前達、こっちに……わしの傍に来るんだ」
アデクがこっちに来るようにと言ってくる。
あたしとチェレンは大人しく従う。
「おそろいのようですね。もう1匹のドラゴン……レシラムを復活させるため、苦労なされていますね。
ですがここにはお探しのライトストーンは無いようです」
対峙するように立つゲーチスがそう告げる。
……無いのかよ。
アデク使えねえな……なんのためにこんな所まで来させたんだよ。
徒労じゃねえか。
「さて……おめでとう! マリネット」
「は?」
いきなりおめでとうって言われても理解出来ないんだが。
「アナタは我らが王に選ばれました。
アナタがこのままポケモンと共存する世界を望むのなら、伝説に記されたもう1匹のドラゴンポケモンを従え、我らの王と戦いなさい」
「……もし、断ったら?
あたしの知ったことじゃねえ、みたいな感じで」
周りはラジコン。
何を言っても無駄だとは思うけど、一応言っておく。
「王との戦いを断ると? その場合、プラズマ団が全てのポケモンを人から奪い、逃がし、解き放ちましょう!
我らの王は……Nさまはそれを望まれているのですから!」
「はあ……ホントあの毒電波ろくでもないな……。
アルセウスのシナリオの力があれば、あんな毒電波でも簡単に伝説のポケモンを手下に出来るのかよ。
自分だけ勝手にやってればいいものを」
それがアルセウスのシナリオの強制力なんだろうな。
ホント大迷惑にも程がある。
おかげであたしはトウコとかいう寄生虫のラジコンにされたし。
「……解き放つ、だと?
トレーナーと共にあるポケモンがそれを望んだのか?
人々からポケモンを奪う事が、お前達プラズマ団のうたうポケモンの解放なのか?」
「おやおや、これはチャンピオンのアデクどの。
長年のパートナーだったポケモンを病で失った数年前より真剣勝負をせず、四天王にポケモンリーグを守るよう命じた後自分はイッシュ地方をふらふらしている……。
そのようなチャンピオンでも、人々とポケモンが共に暮らす今の世界を守りたいと?」
アデクに対してゲーチスが煽り半分のような言葉を返す。
……って、マジかよ。
お前そんなに長い間まともに仕事してないの?
チェレンがチャンピオンになった方が絶対良いな、間違いなく。
もうお前チャンピオン降りたら?
チェレンにあれこれ言ってたけど、お前も大概じゃねえか。
「我らがプラズマ団の王は、ポケモンを縛り付けるチャンピオンより強い事をイッシュの人間に示します!
そしてイッシュを建国した英雄と同じように伝説のポケモンを従え、号令を発布するのです!
全てのトレーナーに『ポケモンを解き放て』と!
そのため、伝説のゼクロムや王に相応しい城も既に用意しているのですよ」
……準備万端のプラズマ団や毒電波と、数年まともに勝負とかしてないアデクの対決かよ。
やる前から決まってるじゃん。
「……わしは負けぬ! ポケモンを愛するトレーナーのために!
トレーナーを信じるポケモンのためにも!」
アデクはそれでも立ち向かうつもりなのか。
けど、ゲーチスは最初からアデクの事は見ていない気がする。
毒電波の代理人なんだとしたら当たり前なんだろうけど。
「……王はアナタに興味など無い。勝利するのが当然の相手だと判断なさっておるのですよ」
チャンピオンのくせに毒電波からは相手にもされてないのかよ……。
「……それを言うためここに残っていたのか?
わしもバカにされたものだな」
「まさか。親切ですよ親切……。
チャンピオンのアナタが、無駄なケガなどなさらぬようにね。
確かにワタクシは人々が絶望する……その瞬間を見るのが大好きですがね。
ではごきげんよう」
ゲーチスは去っていった。
……確かに良い人じゃないのか?
でも、結局悪いのは毒電波なんだよな……。
毒電波がアルセウスのシナリオとかいうゴミのせいでゼクロム手に入れたからこうなったわけで。
「……アデクさん、これからどうするのですか?」
アデクを見るチェレンの目はかなり鋭い。
5番道路の時みたいだ。
「……ふむう、わしがポケモンリーグに戻り、Nと戦うしかないな。
だがゲーチスの言う通り……というのもシャクだし、何よりライトストーンをどうすればいいものか?」
「……アデクさん、とにかく外に出ませんか」
「……うむ、そうするか。なんだかここは息苦しいわ!」
あたしも外へと付いていく。
「……上手く言えない、だけど絶対に許せない!」
「……Nという男、何を望んでいるのだろう?
2匹のドラゴンの戦いで勝ち残る事で己の正しさを証明したいのか?」
「あの毒電波の考えなんか、考えるだけ無駄だよ。
理解させるつもりが全く無いからな」
全く、さっさとこんな場所離れたいんだけどなあたしは……。
そして、よりによってこんな所でライブキャスター鳴りやがる。
誰だよ?
『マリネット!! マリネット!! マリネット!!
もしもしマリネット!!』
よりによってアララギかよ。
しかも気味悪いテンション。切るか。
「いや、切っちゃ駄目でしょマリネット。
一応博士なんだから……」
「はいはい……」
さっさと切ろうとしたけどチェレンに止められた。
はあ……。
『あっ繋がってる。あのねマリネット!!
今すぐシッポウシティの博物館にいらっしゃい!
今すぐよ! いい? 本当に今すぐよ!』
一方的に言うだけ言って切りやがった。
マジでなんなんだよ……。
「……アララギの娘め、ここまで声が聞こえたぞ。
何やら大変な様子だな、シッポウの博物館で何が待っているやら……。
では先に参るぞ!」
アデクは勝手に『そらをとぶ』で飛んで行ってしまった。
「……ぼくはもう一度この中を探す。
あんなゲーチスの言う事なんか信じたくないんだ……。
きみはシッポウシティの博物館に向かいなよ」
これでここのイベントは終わりか。
やれやれ……次はシッポウシティね。
絶対ろくな目に合わないんだろうけど、やらないと先に進めないしあたしの体も奪われるからな。
行きたくないけど仕方ない。
「……アデクさんはあてにすらならないみたいだね、ゲーチスのあの言い方だと。
恐らく、マリネットがNと戦う流れにするための噛ませ犬にでもなるんだろう。
だけど……その未来は訪れさせない。
ぼくとオーベムが……変えてみせる。もうすぐ……」