選択権無しのマリネット   作:ルスト

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80話 もう何言ったって同じだろ?

 ゼクロムとレシラムの話をしてやるから私の家に来い、って事であたしはシャガの家まで来ることになった。

 ……どうせイベントが延々と続くんだから、さっさと終わらせてくれないかな。

 

「……では話そう。君が持っているのはライトストーンだな。

 そのライトストーンから目覚めるだろうレシラム。

 それと、既に目覚めたゼクロム……この2匹は、元々1匹のポケモンだった」

「は? ポケモンって融合とか分離とか出来るのか?」

 

 シャガが語ったのは、レシラムとゼクロムが元は1匹のポケモンだったという事。

 いやいや、レシラムとゼクロムが元々1匹のポケモンだったって……。

 

「……そのいっぴきのドラゴンポケモンはふたごのえいゆうとともにあたらしいくにをつくり、ひととポケモンしあわせなひびをすごしていたんだ!」

「双子の英雄と1匹のドラゴンポケモン、ねえ……」

 

 イッシュ建国の神話だっけ?

 ……それで?

 

 

 

「だが、ある日の事……双子の英雄は真実を求める兄と理想を求める弟に別れ、どちらが正しいか決めるべく争いを始めた……。

 双子と共に歩んできた1匹のドラゴンはその体を2つに分かち、それぞれの味方をした……」

「りそうをもとめ、あらたなるきぼうのせかいにみちびくくろきドラゴン……そのなもゼクロム。

 そしてもういっぴき……しんじつをもとめ、あらたなるぜんのせかいにみちびくしろきドラゴン……そのなもレシラム」

 

 ふーん……。

 飼い主が対立したから2匹に分裂してそれぞれに味方したのかね。

 

「2匹は元々同一の存在故、争いは激しくなるばかり。

 どちらが勝つとも言えず、ただただ疲れ果てていった……。

 双子の英雄も、この争いはどちらかだけが正しいのではない……そう言って争いを収めた……」

 

 ……で、結局終わらない対決に疲れてやめたと。

 

 

 

「なのになのに……えいゆうのむすこたちがまたあらそいをはじめちゃって……。

 ゼクロムとレシラムは、いなずまとほのおでイッシュをいっしゅんでほろぼしすがたをけしちゃったって……。

 だけどね、ひとがポケモンとのつきあいかたをまちがえなければ、せかいをほろぼしたりしないよ。

 だって、ゼクロムもレシラムも。みんなのためにがんばってあたらしいくにをつくったんだもん!

 だから、だから……!」

 

 その後で馬鹿が逆鱗に触れてゼクロムとレシラムにイッシュを滅ぼされたと。

 ……そんなヤバい伝説を持ってる奴を従えてるって考えると、確かに格がつきそうだよな。

 毒電波がゼクロム欲しがったのも分かる気がする。

 あたしは要らないけど。

 

 

 

「……確かにポケモンはものを言わぬ。

 それ故、人がポケモンに勝手な想いを重ね、辛い思いをさせるかもしれぬ。

 だがそれでもだ! 我々人とポケモンはお互いを信じ必要としこれからも生きていく……」

「そーなのッ! だから、だからねっ。

 ポケモンとあたしたちをわかれさせようとするプラズマだんなんか、ぜったいゆるさないんだからッ!」

 

 ……あっそ、好きにしてくれ。

 ……としか思わないな。

 

 

 

「……すまない、最後話がそれてしまったが私達が知っていることは以上だ。

 残念ながら、伝説のドラゴンポケモンを目覚めさせる方法は分からぬ……」

「……ああ、空振りか。まあ、復活しなくてもどうにかなるだろ。

 そういう風に決まってるんだし」

 

 アルセウスのシナリオが全部結末まで決めてるんだろ。

 だから……何をやっても同じ場所に行き着く。

 

 

 

「……さて、アデクとの約束だったね。君はソウリュウポケモンジムのジムバッジを手に入れねばならない。

 ではマリネット、ポケモンジムにて君の挑戦を待つ!」

 

 話し終えるとシャガはジムの方に向かって行った。

 シャガが出て行った後であたしも出ていく。

 アイリスと話す事とか、特に無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(いよいよですよ。次のジムを落とせばようやくジムバッジが全て揃います。

 それで、ようやくポケモンリーグへの道が開けます。

 ……あ、東側のゲートはもちろん塞いでありますからね。

 アルセウス様のシナリオは抜け目ありません)

 

 寄生虫は嬉しそうだな。

 そりゃそうか。お望み通りあたしが生贄になってくれるんだから。

 ……最後まで、逃げ道も何もない、か。

 

 

 

「……ふざけた旅だったな。旅とは名ばかりの一本道。

 拒否権も何もない強制イベント。挙句の果てにあたしは体も奪われて生贄コース……」

 

 もう嘆くって気持ちすらも失せてきてしまった。

 あたしのやることはただ1つ。

 自分の手で、自分の処刑台の紐を切り落とす事だ。

 それだけが、あたしに許された最後の尊厳なんだから。

 

 

 

(アルセウス様……もうすぐですよ。チャンピオンになれば、捧げられます……。

 このままシナリオ通りに進ませれば、もう間もなくNと戦う場面まで行きつけるはずです。

 アルセウス様のシナリオが……完成します)

 

 ……寄生虫を駆除する方法は何も思いつかない。

 あたしは、トウコに縛り付けられたままに処刑台への道を一歩ずつ歩いていく。

 シャガは「モンスターボールでは気持ちまでは縛れない」「離れようと思えばポケモンは自分から離れる」みたいなことを言っていたな。

 ……あたしが捕まえてるこいつらも、離れようと思うなら勝手にあたしから離反するのかね?

 寄生虫の言いなりになるくらいなら、逃がしてやるのもせめてもの救いかもしれないけど。

 

 

 

(……ちょっと、何しようとしてるんです?

 こんなタイミングで手持ちのポケモンを逃がそうなんて許しませんからね?

 大体、そのポケモン達は最終的に英雄の相棒だったポケモンとして称えられるんですから……。

 そのポケモン達にとっても大変名誉な事なんですよ。

 同族がどれだけ羨んでも絶対に手に入らない最高の名誉です)

 

 寄生虫は意味不明な理屈を言い出した。

 それのどこが名誉なんだか。

 

 

 

(名誉ですよ。この世界を救い、英雄を支えたポケモンとしてアルセウス様のシナリオのラストに記録されるんですから。

 アルセウス様のシナリオのラストに名前が載る……こんな素晴らしい名誉があるのにどこが不満なんですか)

「その名誉と引き換えに、未来永劫お前らのラジコンなんだろ?

 プラズマ団みたいに解き放ってやった方が幸せかもな……こいつら」

(させませんからね? ボックス内の雑魚ポケモンならともかく、こんな終盤でエースポケモンを投げ捨てるなど……反逆とみなしますよ)

「だったらさっさとあたしの体奪えよ。

 意識も奪ってしまって、ポケモンじゃないけど永遠に体縛り付けてしまえばいいじゃないか。

 お前はいくらでもあたしの体奪えるんだから」

 

 ホント、嫌味な寄生虫だよなこいつ。

 アルセウスとか言う奴も腐った性格してそうだよ。

 こんなの派遣してくるんだから。

 ……いや、こんなシナリオ作って強要してきてる時点で腐った性格してるだろうな、きっと。

 

 

 

(またアルセウス様の事を侮辱して……!

 この異物、私が見逃してあげてるだけだというのを理解できないんですか?

 そこまで言うなら、貴方のお望み通り……)

(トウコ。無駄な力を使うのは避けてください。

 7番道路を闇に落としたあの異物が何か仕掛けてくるかもしれません)

(も、申し訳ありません、アルセウス様……)

 

 いきなり頭の中に響く機械のような声。

 ……噂をすればアルセウス様ご本人のお出ましかよ。

 

 

 

(全く……残念です。貴方のような異物が英雄の器になるなどと……。

 こんな存在だと知っていれば、もっと早く対処してあげましたよ)

 

 こっちに話しかけてくるアルセウスとか言う奴。

 トウコの親玉らしい。案の定、話なんか通じそうにない。

 こんな奴相手なら何も考えず言いたい事ぶちまけてやったって心も痛まないな。

 

(はっ、偉そうに……。どうせあたしは生贄になるだけなんだ。

 だったらお前らに何言ったって構わねえだろ)

(ええ……私達からすれば家畜の喚き声でしかありませんからね、貴方の声は。

 それで? わざわざトウコを煽って何がしたいんですか?)

(ふん、こんな低能なシナリオしか作れないゴミには人の気持ちなんか理解も出来ないよな。

 あたしはもう希望も夢も失う物も何も無いんだよ、誰かさんたちのお陰でな。

 ……ああ、本当に最低最悪の物語だったよ。どこもかしこも通行止め、強制イベント。

 冒険してる感覚とか、全く感じられなかったな。

 一本道の自由度0。ゴミ以下のストーリーを書いてくださってまことにありがとうございました。

 どれだけ偉いか知らないけど……お前、シナリオ作る才能とか欠片も無いよ?)

 

 お望み通り、言いたい事全部ぶちまけてやるよ。

 家畜の喚き声なんだろ?

 まさかこんなので怒ったりしないよなあ?

 

 

 

(なっ……なっ、なんて事を! アルセウス様のシナリオが! 素晴らしくないわけないでしょうが!

 この愚か者! アルセウス様! もう良いでしょう!

 最後まで待たなくても同じですよ! ここでこの異物の核引っこ抜いたってもう同じです!)

(……はあ、家畜の喚き声というのはいつも本当に耳障りですね。

 そもそも、貴方みたいな異物のなりそこないを対象に作っていないのですよ、私のシナリオは。

 私のシナリオはですね、英雄になるにふさわしい存在のために用意されていたのです。

 それを……貴方のようなたまたま主人公の核を持っていただけの異物が体験しているのですから。

 楽しめるも何も……貴方は最初から私のシナリオのお客様ではないのですよ?

 何お客様面しているのです?)

 

 はあ? 主人公の核? 何言ってんだこいつら?

 毒電波の言葉並みに理解不能だな。

 そんなものあるから、あたしはこんな目に遭ったってのかよ。

 

 

 

(まあ安心しなさい。貴方が頼もうが頼まなかろうが、貴方の役目はもうすぐ終わるんですから。

 せいぜいその時が来るのを怯えると良いでしょう)

(怯えるどころかすっきりするよ、そんな時が来たら。

 このトウコとか言う寄生虫が入ってからもう最悪で最悪でたまらないんだから)

(なっ! 私だって最悪ですよ! 貴方のような異物の管理なんか!

 さっさとアルセウス様の所に帰りたいですよ!)

(ならとっとと帰ればいいじゃねえか)

 

 まあどうせ口だけだ。

 本気で何かするつもりならとっくにあたしは痛い目に遭ってる。

 仮に痛い目に遭ったとしても、それで死ねるなら構わないかな?

 

 

 

(……ここまでの愚か者とは。そのうち神罰が下るでしょうね)

「神罰……ねえ。

 この旅路以上の何かがあるって言うなら落としてみろよ、バーカ」

 

 この地獄のようなシナリオ以上の神罰とか無いだろうな。

 生まれてからここまで地獄ばっかりだし、あたし。

 

(……トウコ、後は任せますよ)

(……はい、アルセウス様)

 

 両方の声が聞こえなくなった。

 ……煩いのが一時的にでもいなくなったか?

 それならいい。

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