選択権無しのマリネット   作:ルスト

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82話 アララギ

「……ハーイ、シャガさんはたくましかった?」

 

 ソウリュウジムを出ると、よりによってアララギが出待ちしてやがった。

 ……このラジコンの顔、身勝手な言動、何回見せつけられなきゃいけないんだよ。

 

「あっ、伝説のレシラムを復活させる方法についての報告に来たんだ。

 ライブキャスターで伝えるのもなんだか申し訳ないしね。

 で、結論をいっちゃうと……まだ解明できていないの。

 きっとポケモンがだれかを認めた時に目覚めるのね……」 

「……あっそ、使えねえな。

 じゃ、もういいよ。あたしからは用はないから、さっさと帰って?」

 

 何の役にも立たないじゃん。

 何しにきたんだよ。要るのかこのイベント?

 使えない上に身勝手、ベルと同類。

 

 

 

「それよりもすごいじゃない!

 イッシュのジムバッジを8個そろえたんでしょ。

 すごくたくましくなったよね!」

「無視か。まあイベントのラジコンに何言っても無駄だよな。

 定型文しか話さないんだし」

 

 最後まであたしの事苛つかせてくれるよ、こいつ。

 

「自分では実感無いかもしれないけどカノコをでた時とは大違い!

 ではポケモンジム巡りを終えたポケモントレーナーが次はどこへ向かうべきか、わたしが案内するわね」

「要らねえよ、こんなイベント」

 

 どこへ向かうべきも何も、あたしが進む権利のある道は1つしかないんだから。

 そんなあたしの意思を無視して、体が勝手にアララギについていく。

 ……そうか、とうとう体の自由も奪われだしたんだな。

 これまでは少なくともあたしの意思でついて行ってた気がする、とか無理矢理連れて行かれた、とかそんな感じだったけど、いよいよ体そのものが勝手にイベントに従い出したか。

 10番道路へのゲートの前まで、勝手に歩かされる。

 

「あのゲートをくぐり、10番道路を抜ければバッジチェックゲート。

 その先にあるチャンピオンロードを越えてようやくポケモンリーグよ。

 カラクサのポケモンセンターを案内したこと思い出しちゃった」

 

 あたしの自由意思も何もかも、もう残ってないんだな。

 後は家畜みたいに処理されるだけ。

 これが……あたしの旅の結末か。

 

 

 

「ねえ、マリネット。ポケモンと一緒に旅立ったこと後悔している?」

「後悔しかねえよ、こんな旅。

 お前みたいなイベントのラジコンに好き勝手動かされて、最後はトウコとかいう寄生虫に体も奪われて。

 ホント最悪な旅だった」

 

 この旅とは名ばかりの何かを後悔しない人間とか居ないだろ。

 

「あっ! いいのいいの!

 そういう事は全部いわなくて」

 

 

 

 アララギのその言葉を聞いた瞬間、あたしの中の何かが弾けた。

 

「この旅を! 後悔しか無いようにしてくれた原因は!

 お前等ラジコンだろうがあッッ!!!」

 

 気づいたらあたしは、アララギの事をぶん殴って後ろの壁に叩きつけていた。

 どうせこいつもラジコンだからどれだけ殴っても問題ないんだろ。

 そう思ってそのまま続けて殴ろうとした時、急に体の動きが止まる。

 

(ちょ、ちょっと!? 人が少し目を離した隙に貴方何やってるんですか!?

 こんな街の真ん中でアララギを殴り飛ばすなんてやめてください!

 英雄にあるまじき暴挙です!)

 

 直後に聞こえる寄生虫の声。

 寄生虫があたしの体を奪っている限り、あたしはこの寄生虫の言いなりだった。

 

「ちっ、寄生虫が帰ってきやがった……!

 一生帰って来なくてよかったのによ!」

「あっ! いいのいいの!

 そういう事は全部いわなくて。

 でもきみたちがポケモンを選んでくれたこと、わたしうれしかったんだ!」

 

 殴り飛ばされたアララギはベルと同じ。

 あたしに殴られた事すら無かったように淡々とイベントの台詞を再生する。

 

「だってまた人とポケモンのステキな出会いがうまれたから!

 マリネット、これプレゼントよ!」

 

 

 

 勝手に押し付けられたのは紫のモンスターボール。

 特殊品なのは理解できる。見たこと無い。

 

「そのマスターボールはどんなポケモンも絶対に捕まえられる最高のボール。

 こんな形でしか応援できないけれど……マリネットはマリネット。

 どんなことがあっても迷わずにポケモンと進んでね!

 じゃーねー!!」

 

 イベントは終わりだとばかりに立ち去るアララギ。

 結局、あたしの見ていた人間は全部ラジコンだったんだろうな。

 だから、あたしの話は聞かないし一方的に行動を強要する。

 ベルもアララギもラジコンだった。

 なら、多分チェレンも……。

 

「皆ラジコンか……ラジコンしか居ない。

 この世界には……」

 

 もう少しで旅は終わる。

 ……ポケモンリーグ、毒電波との最終決戦。

 そして、あたしは生贄になる。

 

 

 

(しかし、私が居ない間にソウリュウジムを攻略してくれるとは。

 なかなか優秀じゃないですか、ほめてあげますよ)

「回復したら……先に進むか」

 

 ソウリュウジムでムーランドはそこそこ消耗させられた。

 どうせチェレン相手ならデンチュラが中心になるだろうけど、念のためにポケモンセンターに行くか……。

 

(もう少しですよ。もう少しで、英雄になれるんです。

 だから、私達の栄光のために動いてください)

 

 

 

 頭の中で寄生虫が喋っているのも、もう気にもならない。

 煩いとも思わなくなってきた。

 全部……もうすぐ終わるから。

 次は10番道路だ。

 あたしの処刑台が……すぐそこに待っている。

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